(重要文化財指定の岳南電車本吉原駅、by T.M)
共同通信 5/24
アマゾンジャパンの商品配送を個人事業主(フリーランス)として請け負うドライバーら16人が24日、契約する同社の下請け運送会社などに計約1億1680万円の残業代を支払うよう求め、横浜地裁に提訴した。個人事業主には労働基準法が適用されず、本来は残業代を請求できないが、ドライバーらは会社の指揮命令を受けており、実態は雇用された労働者だと主張。労基法に基づく割増賃金を受け取れるとしている。
被告は横浜市の「Gopal」など5社。原告の代理人弁護士によると、16人は5社のいずれかと契約し、アマゾンのアプリで指示を受けて配送に従事していた。
数年前にこのブログで書いたけど、Mという運送会社の株価がその頃高騰していました。いわゆる「テンバーガー」というやつで、5年で100円前後の株価が2000円を超えました。今は、持ち株会社になって上場していますが、相変わらず株価は1000円を超えています。
このMという会社が急成長した原因は、「アマゾンの下請け会社として、個人事業主を使用している」からです。どうも、宅配便を行う運送会社が個人事業主を下請けとして使用するといった業務形態は、運送会社は大分もうけるようです。
宅配便の下請け個人事業主をモデルとした映画では、ケン・ローチ監督の「家族を想う時」(2019年、イギリス映画)という名作があります。この映画を私は、横浜黄金町の映画館ジャック&ベッティで観たけど、終わった後に宅配便業務の過酷さへの怒りと、主人公の家族愛の強さに打たれ、しばし席から立ちあがれなかったものです。
(もっとも、「アマゾン」の業務については、季節労働者の業務が賃金が高く、福利厚生が良いと評価している、「ノマドランド」⦅2020年アメリカ、ヴェネツィア国際映画祭、金獅子賞⦆もあります)
そんな訳で、宅配便事業の個人事業主の業務はかなり厳しいと思うので、このような記事がでると個人事業主の方を応援したくなります。
労働者と個人事業主の違いは、原則として「労働時間を管理されているか、事業主の指揮命令下にあるか」等ですが、上記の記事のケースでしたら、私が判断するなら「業務の代替性」を重視します。つまり、仕事を運送会社から発注された時に、それをさらに「下請けに出す」ということは認められているのでしょうか?要するに、仕事に対し「属人性」を求められるということであれば、私は労働者性が強いと判断します。
(注)ある人が働いていることについて、「100%労働者である」とか「100%事業主である」というケースは稀です。ほとんどが「この部分を取り上げると労働者だが、別の側面から考えると事業主である」、といったケースです。それを最終的には裁判官が判断します。
記事にある個人事業主の業務対応について、ひとつ疑念なのは「自家用車持ち込み」の業務ではないかということです。もしそうであったら、自動車の減価償却等について、所得税の控除としているのではないでしょうか。自動車は通常、労働者の所得税控除の対象とはなりません。もし、控除等を行っているのなら、「税金を払う時は事業主」「報酬を得る時は労働者」となってしまうので、労働者性認定の場合は不利になってしまいます。
追記
ここまで書いていたら、ふと「日本型ライドシェア」のことが気になりました。以前、このブログでも書きましたが、あれは、「タクシー会社と契約する自家用車持ち込の労働契約」です。この辺の税金問題はどうなっているのかを、国税庁(タックスアンサー)に電話で尋ねたら、電話に出た人は「本庁から、何の連絡もない」とのことでした。何かライドシェアって、政治指導で性急に始まったけど、何か細かい所で各省庁間の連携がとれてないようです。ライドシェアに携わる労働者の方に不利益が生じなければ良いのですが。