公務員の海外出張

(ポルシェの創業者フェリー・ポルシェの格言・「私の夢を実現してくれる車は、どこを探しても見つからなかった。 だから自分でつくることにした。」)

6/15 北國新聞

富山県政記者クラブに14日、県土木部の山下章子次長が出張先のオーストリア・ウィーン市でコンサート鑑賞に興じていることをSNS(交流サイト)で投稿しているとの投書があった。金谷英明土木部長は取材に対し、山下次長が現在ウィーンに出張していることを認めた上で「プライベートの時間に行ったのだと思うが、誤解を招かないようにするべきだ」と苦言を呈した。

 投書は匿名で「現状を憂う公務員より」と書かれていた。SNSは「山下章子」のアカウント名で12日に投稿され、「仕事の後に行ってみた」とした上で、ウィーンフィルハーモニーメンバーのカルテットを聴いたとしている。プロフィルには県土木部次長であることを明記している。投稿はすでに削除された。

 金谷部長によると、山下次長を含めた県土木部職員3人が「国際防災学会インタープリベント」に出席するため、8~16日の日程でウィーンを訪れている。投書は「最近、公務員の不祥事が続いているが、こうした事案も県民の公務員に対する信頼の失墜につながっていると言わざるを得ない」と指摘している。

私の所属していた神奈川労働局安全課では、年に1、2回ドイツ出張をする職員たちがいます。

神奈川県内にLという、大きなドイツのクレーン会社があります。そこはドイツから大型移動式クレーンを輸入するのですが、日本国内で大型移動式クレーンを輸入する場合は、労働安全衛生法クレーン等安全規則第55条に基づく「使用検査」を受けなければなりません。この検査は、Lが工場を置く場所を管轄する神奈川労働局安全課が実施します。

(注)大型移動式クレーンを日本国内のメーカーが製造する場合は、「製造検査」という似たような検査を受けなければなりません。管内にIという国産移動式クレーンの大手メーカーをはじめとして、様々なクレーン・ボイラー・エレバーター・ゴンドラ等の製造検査を必要とする機械メーカーが所在する神奈川労働局の安全課は、日本有数のクレーン検査体制が充実している労働局です。

大型移動式クレーンを1台輸入すると、10億円を軽くオーバーする費用となることがあります。そのため、ドイツメーカーのLは、せっかく輸入したクレーンが日本国内の「使用検査」で不合格となることを危惧し、輸出前のドイツ国内の工場で同検査を受けることを希望します(法律で可能とされています)。そこで、神奈川労働局に、何百万円分の印紙を添付した申請書を提出し、検査担当官にドイツまで来てもらい、使用検査を実施するのです。

このブログに写真を提供してくれているT.M氏も、そんな優秀な検査官の一人です。

(注)今年4月にT.M氏は神奈川労働局を早期退職しました。民間の大手機械メーカーに7月から勤務します⦅就職おめでとうございます⦆。安全コンサルタント他たくさんの国家資格を持っている優秀な彼ですから再就職は当然ですが、検査スキルを認められたことも大きかったようです。

T.M氏にドイツ出張が羨ましいと言ったところ、「ふざけるな」と怒られたことがあります。まず、荷物が大変だそうです。検査器具を持参することは当然として、普段使用している、作業靴(重い安全靴)・ヘルメット・作業服(ヘルメットと作業服には「厚生労働省」とのネーム入り)を個人の荷物として持っていかなくてはならず、航空機では一緒にドイツに行くLの社員はビジネスクラスなのに、検査員はエコノミーで移動だそうです。

また、ついてからも大変だそうで、Lもドイツまで費用負担で来てもらっているので、普段の1.5倍くらい検査台数を申請してくるそうです。余裕ある日程は、神奈川労働局の方からダメ出しされるそうです(出張限界は約1週間。それ以上は、今度は神奈川労働局の仕事が回らないそうです)。そんな訳で、ドイツでの検査は、残業を決してしないドイツの労働者を横目に現場で残業し、ホテルに帰ってもパソコンに必要事項を入力するまで休めない日々を過ごすそうです。

そんなドイツ出張で唯一の楽しみが、検査合間の休日だとか。T.M氏はこの休日に、趣味の博物館詣でを欠かしませんでした。今後当分の間、T.M氏は新しい職場に慣れることに忙しく、休日に気楽に遠出し、趣味の写真撮影をすることも難しくなると思います。その時に、T.M氏が貯めていたドイツ出張時の写真を当ブログで使用するかもしれません。その時は「公務員が税金で外国に行って観光旅行した」などと勘違いしないようにお願いします。