熱中症と役所の対応

(ポルシェとウルムの街並み、T.M氏のドイツ出張中の写真です)

毎日暑い日が続きます。今日は熱中症のことについて書きます。

世の中には、猛暑の中でも、熱から逃れられない仕事があります。例えば、私が見聞した作業の中では、ビル建築現場の屋上の防水工事がそれに当たります。真夏に、ビルの屋上に熱したアスファルトを敷いていました。火傷防止のため作業員は、長袖の作業服の袖をとめ、軍手をしています。当然、ヘルメットを被っています。そんな過酷な建設現場で、熱中症の死亡災害が発生しましたが、それは懸念されていた屋上の防水工事ではなく、日が差さない地下の電気工事の作業員でした。被災者は60歳代で、直近の定期健康診断で高血圧症と診断されていました。

熱中症はやっかいな疾病です。

その理由の第一は、どこで起きるか分からないということです。鉄工所の溶鉱炉の傍の業務とか、空気の流通のなお造船所の船底の業務では意外と発症しません。それはみんな注意しているからです。そして、思いもかけない所で発症してしまうのです。墜落災害は墜落危険個所で作業している者にしか発生しませんし、機械への巻き込まれ災害は機械近くで作業している者にしか発生しません。しかし、熱中症はエアコンが有効に機能していない場所ならば、どこでも発症します。しかも同じ環境で、同じ時間仕事をしていても、熱中症となる者、ならない者がいます。高齢者、基礎疾患のある者、その日たまたま体調の悪い者等がリスクが高くなります。

やっかいだという理由の第二は、重篤災害となる可能性が高いということです。労災の統計によると、他の労災と比較して発生率はさほど高くはありませんが、一端発症すると、死亡率は他の災害の6倍に上ります。ウチの会社は今まで大丈夫だったからと安心していると、いきなり重症となる熱中症が発生する可能性があるということです。

理由の第三は効果的な保護具がないということです。高所作業なら「安全帯」、化学物質関係なら「保護マスク」等の保護具があります。しかし、熱中症にはそのような保護具はありません。各企業は現在こぞって、熱中症対策の保護具を開発中のようですが、その中には、JISで規格化されるような決定的なものはありません。私も、いくつかは試してみましたが、クールベストが一番良いようでした。しかし、それは効果時間が限られています。結局は熱中症対策とは、「休憩」「給水」くらいしか思い浮かびません。

そういえば、「給水対策」といえば、こんなことがありました。私が、市営の大きな公園の安全診断をした時のことです。非常に大きな公園で、雑草抜きや刈払機を取扱う現場の人が数人いたので、そこの管理事務所に「現場で働く人のための熱中症対策としてスポーツドリンクを用意して下さい。建設工事現場や工場ではそのような対策をしています」と依頼したところ、「それはできません」と断られました。「税金で職員にスポーツドリンクは用意できない」ということでした。エアコンの利いた事務所で予算を管理する役所の人の感覚ってこんなものかと思いました。私が役人だった時から変わっていません。

さて、来週は夏休みでブログの更新はしません。次は8月18日に更新します。

暑さが続きますが、皆様、体調管理にお気をつけ下さい。