
朝日新聞 10/28
連合の芳野友子会長は25日、鹿児島市での連合鹿児島の定期大会に来賓として出席し、高市早苗首相が指示した労働時間規制の緩和の検討について、「長時間労働によって尊い命が失われた事例を忘れてはならない。長時間労働を積み重ねれば生産性が上がるかのような言説に惑わされることなく、すべての働く者の幸せを追求していただきたい」と牽制した。
芳野会長は報道陣に対し、「働き方改革関連法の目的は過労死ゼロとワーク・ライフ・バランス。過労死、過労自死が減っているわけではない実情を見て取り組んでいただきたい。今の状況は看過できない」と説明した。
過労死には2種類あります。「脳・心臓疾患」系のものと「精神障害」系の2種類です。このうち、「脳・心臓疾患」系は生活習慣病が、そして「精神障害」系はストレスが大きく影響します。「脳・心臓疾患」系は脳梗塞や心疾患を引き起こし、ストレスは適応障害等を引き起こし自殺等の原因となります。上の図で分かるように、過労による労災認定で増加しているのはストレスに起因するものです。
生活習慣病に由来する脳・心臓疾患については毎年の定期健康診断の結果からセルフチェックを行うことが最大の予防策だと言われています。それに比較しストレス性の疾病については、実は何の対策もたてられないのが現状です。ストレスチェックでストレスの重篤度が可視化されても、対策が実施されないのが現状です。
ストレスチェックには3つの目的があります。
第一 職場における当該労働者の心理的な負担の原因
第二 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状
第三 職場における他の労働者による当該労働者への支援
第一は仕事の内容や仕事量がマッチしているかどうかのチェックであり、第二は「病気」等の不安を本人がもっているかどうかについてであり、第三は職場の人間関係によるストレスがどのくらいなのかのチェックです。
この中でどうしようもないのが、第三番目の「職場の人間関係」です。「パワハラ」「セクハラ」は見えやすいんですが、「なんとなく悪い」という人間関係はどうにもなりません。
さて、冒頭の芳野会長の言葉なんですが、労働時間を減らして確実に効果があるのは「脳・心臓疾患」系の過労死についてであり、「精神疾患系」の過労死についてはほとんど効果がないのが実態です。
好きな仕事を良い人間関係と満足な労働条件でやっていれば、何時間残業しても「ストレス性の過労死」にはなりません(「脳・心臓疾患」系の過労死は別)。逆に嫌な仕事を嫌な奴と不満足な労働条件で仕事をすれば、すぐにメンタルはやられます。
労働時間を短縮し、労働者が豊かな時間を持つことには賛成です。でも、現代で「過労死」が増えているのは、単純な長時間労働だけが原因ではないような気がします。難しい問題です。