
(スイッチバックのJR篠ノ井線姨捨駅、by T.M)
1/5 中京テレビ
愛知県一宮市は、育児休業取得者の業務をカバーした職員に手当を支給する「育休カバー手当」を創設すると発表しました。県内の自治体では初の取り組みとなります。
対象となるのは、代わりの職員が配置されず1か月以上業務をカバーした場合で、あらかじめ所属長がカバーする職員を最高4人まで指定する仕組みです。
支給額は、育児休業職員の給料月額の4%にカバーした期間を掛けた額で、複数人でカバーした場合は人数で等分。給料30万円の職員が育児休業を取得し、4人の職員で5か月間カバーした場合、1人あたり1万5000円が支給されるということです。
病気休暇などの場合や、保育園や消防署など人員配置基準がある職場は対象外としています。
女性職員は長期取得が多く代わりの職員が配置されますが、男性職員に多い短期取得では代替配置が難しく、残された職員の負担が大きいことが課題でした。同市の男性職員の育休取得率は、2022年度66.7%、2023年度69.3%、2024年度80.8%と年々上昇しているものの、取得期間は1か月以内が72.9%と7割以上を占め、1年を超える取得はわずか1.7%にとどまっている状況です。
過去に育児休業を取得した職員からは「周りに迷惑がかかるという意識から、長期では取りづらい」という声が上がった一方で、業務をカバーする側からは「手当がつくと意欲向上につながる」という意見もあったということです。
市は「気兼ねなく長期の育休を取得でき、カバーする側も意欲を持って業務に当たれる環境を整えたい」としており、4月1日からの実施に向けて、3月の市議会で条例改正案を提出する予定です。
私はこのような取組はとてもいいことだと思います。しかし、問題点もあります。
この件について、労働基準法サイドの論点について記述します。(ここでは、地方公務員についても、労働基準法がすべて適用されると仮定します)
5人で行っていた業務を、1人育休で4人で行ったとして、それが達成してしまうということは、労働生産性が上がったのか、それとも長時間労働を行ったのかどちらかでしょう。労働生産性が上がったとしたら、それはそれでいいことなのですが、「業務内容の見直し」「業務内容の機械化(AIの活用)」がなければ不可能なので、ここでは生産性の上昇より、「長時間労働」について論じます。
労働者全員の生産性が同じで、仕事の成果が労働時間、に比例すると考えるなら、5人でしていた業務を4人で行うとすると、労働時間は1人あたり25%増加することになります。それがすべて残業で補われるとしたら、残業代は(深夜、長時間をのぞき)125%が原則ですから、賃金の31.25%増しとなります。要するに、賃金30万円で1日8時間分労働で5人部署の方が、賃金約40万円(397350万円)、1日10時間労働で4人部署となることです。
なんか、これだけ見ると1人育休でも仕方ないかと思えてしまいます。ただし、これは、元の部署が残業ゼロだった場合であって、以前より残業が行われていれば、やはり無理ゲームとなるでしょう。
さて、「一人当たり4%の手当て支給」についてですが、これでは低すぎるというのが私の実感です。もちろん、この手当の性格が「残業代の算定基礎となる賃金」となるか「一時的な手当なのか」で評価は変える必要があるのですが、過重労働を前提にした場合は考える必要があります。もう少し、高くしてもいいのではないでしょうか。
とはいっても、総合的にはすべての職場がこの一宮市の取り組みを参考にすべきだと思います。育休を取りたくても、職場の同僚に気兼ねして取りづらかった人も、これで少しは取りやすくなると思います。また、理屈では分かっても、業務多忙で感情的になる人の気持ちも少しは安らぐと思います。何より、育休の普及に一地方自治体がこれだけ真剣に取り組んでいることは素晴らしいことだと思います。この取組が他の自治体や民間企業に広がるといいなと思います。