監督署が悪いの?

(入浴中のカピバラ・智光山公園こども動物園、by T.M)

4/9 仙台放送

大崎市の大崎市民病院はおととし2月、医師や看護師などの残業代について「適正に支払われていない」として、古川労働基準監督署から是正勧告を受けました。給与規則に伴う残業代の算出方法に誤りがあったことが原因で、追加の支払いは過去3年分で、医師など1572人分、約10億5千万円にのぼります。これまでに一部の支払いを終えていて、病院では、来年度末までに全員分について支払いを進める方針です。

(略)

大崎市民病院のN事業管理者は「誤りを把握できず、正せなかったのは我々」としつつ、労働基準監督署の対応には違和感もあると話します。

大崎市民病院 並木健二病院事業管理者

「ちょっと信じられない額になって、これを1度に払うとか、これを全部払わなきゃいけないっていうのは、ちょっといくらなんでも、うちの病院がつぶれてしまうなと」

今、医師の地域偏在とか問題がありますけれども、半世紀前の人たちがそれを是正をするために作った制度(就業規則)だと思うんです。制度は悪くはないとは思うんですが、それを半世紀にわたって放置してきた。それは許されることなんだろうかと。僕は労基も反省してもらいたいと思いますよ。今まで自分たちが放置してきたその責任は何なんだろうと」

この問題について、市民病院側のいい分は次のとおりです。

「国の給与規定に準じて、当病院は給与を決定した。しかし、国の機関は労働基準法が適用されずに、当病院は適用される。そのため、当病院の過失により労働基準法違反が発生してしまった。」

実はこのようなケースは他にあるんです。それは、私立の学校についてです。公立学校の教師は、現在社会的な問題になっているように、残業をしても残業代が支払われません。調整手当(給与の4%)が支払われます。この制度をそのまま導入してしまう私立学校がけっこう多いんです(私が監督官をやっていた20年くらい前の話です)。

私が監督官をしていた時にも、記事にでてくるような問題がおきました。

「国がやっているからいいと思っていたのに、それを監督署はひどい」

ということでした。でも、この言い分っておかしくないですか。

「まともに遡及是正したらつぶれてしまいます」「もう、しないから勘弁して下さい」

この言葉は監督官に言わないで、迷惑をかけた労働者に言って下さい。病院の医院長が、労働者に頭を下げ、「申し訳ございませんでした」と謝ったら、もしかしたら労働者は理解してくれるかもしれません。

監督署は是正勧告をした以上は従わなければ、書類送検をしなければなりません。しかし、その手続き中に、被害労働者から、「捜査に協力できません」と言われれば、捜査中止とせざるえません。

要するに、使用者と労働者の間に信頼関係があれば、監督署の是正勧告は無意味になるケースがあるということです。上記の記事について、労働者の話も聞いてみたいものです。逆に言うなら、監督署の是正勧告に労働者側が何も言ってこないということは、病院と労働者の関係もそれだけのことだということです。