9年前!

(柳沢峠からの富士山、by T.M)

私が神奈川労働局を退職したのは、今から9年前。

そんな訳で、退職と同時に開始した当ブログも、いよいよ10年目に突入します。

しかし、ブログを始めた頃は、まだ個人ブログを見かけましたが、最近はユーチューブ等に個人の情報発信が移行してしまい、こんな細々と続くけているものは少なくなりました。

因みに、私は明日が誕生日でして、いよいよ67歳となります。いつまで続けられるか分かりませんが、せめてあと1年は続け、10年以上の継続ブログとする所存です。

ぜひ、今後もご来訪をお願いします。

お願いしといてなんですが、今回はお休みします。

来週お会いできることを楽しみにしています。

最低賃金

(里山の旧家・山梨県甲州市「もしもしの家」、by T.M)

共同通信 3/17

石破茂首相は17日の参院予算委員会で、介護などを担うエッセンシャルワーカーや成長産業分野での人材確保に向け、特定の産業に適用される「特定最低賃金」の導入を検討する考えを示した。「賃金が上がっていかないと、この国の経済は持たないとの強い認識を持っている。政治主導できちんと判断したい」と述べた。

これ、けっこう影響は大きいですよ。ようやく決断してくたかという気分です。いい判断だと思います。現在でも、産業別最低賃金(特定最低賃金)の制度はありますが、導入には地域の労使の合意が必要等のハードルが高いものです。その制度を簡易化するというなら大歓迎です。

介護と物流関係者の最低賃金を上昇させることで、社会が一番必要としているところへ人材が回るようになると思います。

私は、この件については、ひとつアイディアを持っています。なにかというと、「最低手当」を創設するという考えです。

「雇用期間が1年未満の者及び派遣社員には、最低手当を支払うこと」というようにしたらどうでしょうか。

例えば、1年未満の契約を繰り返している非正規労働者については、時間当たりの支払わなければならない賃金を

     最低賃金 + 最低手当

というように定めるのです。例えば、最低賃金1000円を定めた地域で最低手当が300円だとするなら、非正規雇用者に支払われるべき時給は最低で1300円となるようにするのです。非正規雇用者にこそ、高い水準の賃金が支払われるべきです。

もし、この「最低手当」を支払っていない場合は、「期間の定めなき雇用」ということになりますので、解雇・雇い止めのハードルが上がります。そして、「最低手当を支払っていないのに、非正規労働者扱いで解雇された労働者」については、当然遡及是正が求められます。

私がこんな考えに至ったのは、「派遣労働者」のことを思ったからです。労働基準監督官を昭和の終わりから平成の終わりまでしていましたが、その間に社会が大きく変わったなあと思ったのが、平成10年代の「製造業への派遣解禁」です。当時は、「派遣労働者」は「派遣業(派遣元)」の最賃が適用されていましたが、いつのまにか「派遣先」が適用される最賃が適用されるようになりました。昔は、「派遣先」の適用される最賃の方が「派遣業(派遣元)」が適用される最賃より高いので、このような制度に変更されたのです。

今回、石破首相が述べた、特定最低賃金が適用される業種に、「派遣業」が含まれると良いのですが、それには現行の制度を変えなければならず、かつ多くの非正規労働者には恩恵がないような気がしましたの、「最低手当」の設立も必要なのだと思いました。

何か、この考えを発表するところはないのかな(オンライン署名でも集めるかな!)

ああー、郵便局

(里山の旧家・山梨県甲州市「もしもしの家」、by T.M)

3/11朝日新聞

日本郵便近畿支社管内の複数の郵便局で、郵便物などの配送車の運転手に対する法定の点呼が適切に行われていなかったことが分かった。点呼記録の虚偽記載も発覚。関係者によると、不適切な点呼の疑いがある局は支社内の8割と内部で説明されたといい、同社は今月、全国の郵便局を対象に緊急調査を始めた。

 点呼は安全運行のために貨物自動車運送事業法などで定められており、大手運送事業者で不適切な点呼の横行が発覚するのは極めて異例。報告を受けた国土交通省は同法違反などの恐れがあるとみて、日本郵便の調査を踏まえて行政処分を検討する方針。処分内容は車両使用停止などで、同社の運送事業に影響が出る可能性がある。

 同法は省令で、運送業務などをしている事業者に対し、重大な事故を起こさないよう、乗務前に運転手の健康状態や飲酒の有無を確認するなどの点呼を義務づけ、安全な運転ができない恐れのある運転手の乗務を禁止する。乗務後にも点呼で飲酒の有無などを確認する。違反すると営業車両の使用停止などの罰則がある。

本題に入る前に、次の写真を見て下さい。(これから書くことは20年近く前のことで、現在では状況が違うと思います)

1000円の商品券が1400円で売られています。(送料をいれると2000円)です。

その理由は、この商品券が「郵便切手で購入可能」だからです。このような、商取引がヤフオク等でさかんに行われていたのは、今から10年以上前のことです。(今でも、時々あるようです)。

当時、郵便局の非正規職員の「自爆営業」ということが、よく言われていました。彼らは、一人当たり100~3000枚の年賀状の売り上げノルマがあったのです。このノルマに対し、報奨金等は支払われません。そこでノルマ達成のため、非正規職員は自分たちで年賀状を購入していたという話です。その購入された年賀状が使い切れないので、自分の勤務する以外の郵便局に行って切手と交換し、ヤフオク等のサイトで商品券と換えるのです。足元を見られて、切手を買いたたかれていました。

当時の郵便局の非正規職員がそのような理不尽な命令に従ったのは、人事評価が下がることを恐れたからです。当時は、たいへん狭い門だったのですが100人に一人くらいは、人事評価の成績がよければ正規職員になることが可能でした。ですから、非正規職員に対するパワハラ等が蔓延している職場もあったと聞いています。

私は当時から、「郵便局はもう終わりだな」と思っていました。郵便局の職員もみなそのことは分かっていたようで、郵便局が、簡保・郵貯・郵便業務の3つに分割されたときに、配転希望が簡保と郵貯に集中して、郵便事業の希望者はいなかったそうです。

郵便局がクロネコ等に負けるのは、業務形態があまりに非効率だからです。郵便局がクロネコ等に対抗するためには、郵便局の統廃合が必要でしょうが、それは地域状況等を考慮すると非常に難しいものなのでしょう。「信書の取扱い」と「年賀状バブル」だけでは、経営が厳しいのです。赤字路線を抱えた旧国鉄や,旧JALと同じ構図です。

さて、冒頭のニュースについてですが、色々と経営が難しい郵便局ですが、労働者の安全確保だけは徹底させて欲しいものです。

労働組合と懲罰

(笛吹川フルーツ公園の夜景・山梨市、by T.M)

このブログを書いていたら悲しいニュースが飛び込んできました。

FNNプライムオンライン 3/7

秋田県 男鹿市の下水道工事の現場で、作業員3人が倒れているのが見つかり、全員の死亡が確認されました。

午前9時半ごろ、男鹿市 脇本樽沢の下水道工事現場で「マンホールで工事をしていた男性作業員3人が酸欠で脱出できない」と通報がありました。

消防が3人を助け出し、意識不明の重体で病院に運ばれましたが、その後、全員の死亡が確認されました。

亡くなられた方のご冥福を祈ります。

私も硫化水素発生を伴う酸欠死亡災害の災害調査を何回か行ったことがありますが、突発的に発生する災害で複数の方がなくなる、本当に悲惨な事故が多かったです。

秋田労働基準監督署の方々、寒い中ですが、再発防止のため災害調査頑張って下さい。

3/4 スポニチ オンカジ問題 選手会が出場停止処分回避求め近日中にNPBと事務折衝 コミッショナー「啓発の継続を」

日本野球機構(NPB)とプロ野球12球団による実行委員会が3日に都内で開かれ、8球団15人の利用が判明したオンラインカジノ問題について、榊原定征コミッショナーが「問題解決に向かう道筋を球界全体として取り組むように」「選手、関係者への啓発の継続と、シーズンを通じて啓発を行っていただきたい」などと発令した。中村勝彦事務局長によると、新たな自主申告者はいないという。

問題は2月17日にNPBにオリックス所属選手がオンラインカジノを利用していると情報が寄せられたことが発端。翌18日に球団が山岡と面談し、海外サイト運営のポーカーゲームトーナメント大会に参加していたことが判明した。NPBは全球団に対し、オンラインカジノ利用は違法行為に当たると各球団内で周知徹底するよう求め、過去に利用したことがあれば自主的に名乗り出るよう要請していた。

榊原コミッショナーの強い姿勢を受け、近日中にも12球団代表者会議を開催する。さらにオンラインカジノ利用者に出場停止などの処分を科さないよう要請した日本プロ野球選手会との事務折衝にも臨む方針という。

監督署で窓口業務をしていた時のことです。ある運送会社の労働組合という方が2名ほどいらっしゃいました。その時に彼らの要件は次のようなものでした。

「酔っ払い運転に対する会社の措置が厳しすぎる。朝検査をして、少しでも呼気にアルコールが残っていると、その日はクルマに載せないで、欠勤扱いする。会社は横暴だ。」

私は就業規則の制裁規定等を説明しながら、次のように述べました。

「ご希望に沿うアドバイスはできません。監督署では、労働災害防止のため飲酒運転を撲滅するように各会社にお願いしています。その取り組みとして、酒気帯び運転の絶対禁止も当然です。飲酒運転で事故を起こした労働者について、例え人身事故でなくても、労働基準監督署に解雇予告除外認定申請がでれば認定することもあります。その場合は労働者は懲戒解雇されます。」

労働組合の人たちは不満そうに帰っていきました。

さて、上記の新聞記事についてです。労働組合が、会社の下す懲罰から労働者を守ろうとすることは当然です。気に入らない労働者を処罰しようと、悪質な経営者は色々と知恵を絞ってくるものです。それに対抗するためには、労働組合の存在が不可欠です。

でも、筋が通っていない庇いだては、組合の品格を落とすことを忘れないで下さい。新聞記事の事案については、法違反であることですから、処分は必至です。「事務折衝」ということですけど、組合サイドはともかく会社側に頭を下げてお願いすることしかないでしょう。「本人も反省していますから重い処分はしないで下さい」と言うことが、せいぜいできることだと思います。

前期の「飲酒運転」についてもそうですが、法違反等については会社側と組合が協力して再発防止対策を行わなければならない事案です。間違っても、組合側は会社側を挑発しないで下さい。世間が敵に回ります。

前述の「飲酒運転に係る労働組合からの陳情」の後で、某大手労働組合ナショナルセンターの役員と話し合いの場で、そのことを話題に出したところ(当然、陳情した組合の名前はだしていない)、ナショネルセンターの役員は「それは組合のやるべきことではない。いや、やってはいけない」と驚いていました。組合の上の人は話がとおる人が多いので、今回のNPBの件も穏便に終わると思います。

さあ、もうすぐNPB開幕。わがベイスターズは今年はどこまでやってくれるのでしょうか。

朝礼

(ローテンブルクの街並み、by T.M)

テレ朝ニュース 3/1(yahooニュースより)

岐阜県岐南町は、朝礼のために勤務時間の5分前に出勤していた職員ら146人に、合わせておよそ1100万円の時間外勤務手当などを支給するための補正予算案を先月28日、議会に提出しました。

セクハラ問題を受けて去年辞職した小島英雄前町長は2021年3月から3年間、職員に対し朝礼のために本来の勤務時間より5分早く出勤するよう命じていました。

しかし、この時間の時間外勤務手当が支払われておらず、職員が支給するよう要求していました。

「え、今時何考えているの、この元町長って」思ったら、どうも本当に問題のある人だったようです。さっさと支払いを決めてしまって、町としては正解でしたよね。これ、完全な労働基準法第24条違反(賃金不払い)ですから。(37条違反・残業代不払いであるかは、微妙。)

そもそも、「朝礼」って何でしょう。要するに、一方通行のミーティングではないでしょうか。朝礼主催者から、朝礼出席者への情報伝達が主な目的なはずです。だとしたのなら、その情報伝達が、業務上どうしても必要と主催者が判断したのなら、堂々と予算を取り、残業代を払って実施すればよいだけです。

ところが、実際は朝礼主催者の自己満足に過ぎない朝礼が多く、残業代を払ってまで行う価値もないことを主催者側も分かっているから、今回のような事件が発生してしまうのだと思います。今の世の中、メールや電子掲示板の情報伝達よりも、業務上必要な朝礼など多分ありません。朝礼など、ほとんどが昭和の遺物です。

とは言っても、必要な朝礼もあると思います。それは建設現場等で行われる「安全朝礼」です。大きな建設現場では、ほぼ毎日朝礼が開かれます。建設現場は、重機、とび、鉄筋、型枠といった様々な職業・企業の集合体です。毎日、顔ぶれが違います。そして、日々現場が変わっていきます。そこで、毎日朝礼をして、当日の現場情報を作業員全員で確認するのですが、これが安全確保には非常に有効なわけです。

因みに、建設現場の朝礼で「残業代未払い」等の苦情がでたケースを私は知りません。みな、その朝礼の重要性をよく理解していますし、他の企業が朝礼の分の賃金を支払っているのに、自分の所だけ未払いという訳にはいきませんからね。

もし、「朝礼時間の賃金が払われていない」という会社があったら、すぐに監督署に相談してみたら良いと思います。労働時間の把握が容易いケースですから監督署も動きやすいと思います。

唯一の例外は、「朝礼」が「自由参加」の名目で行われ、実態は「強制」であったケースです。これは摘発が難しいです。それに、本来は健康増進のために行われるはずの「ラジオ体操」が加わると、追及はさらに厳しくなります。