副業

(東北本線白河駅舎、by T.M)

4/22 ORICON NEWS

7人組グループ・Travis Japanの松田元太が主演を務めるフジテレビ系連続ドラマ『人事の人見』(毎週火曜 後9:00)第3話(22日放送)に、俳優・山口まゆが出演する。今作は“人事部”に焦点を当てた、痛快オフィスエンターテイメント。古い熱血体質の残る大企業を舞台に、おバカでピュアすぎる主人公・人見廉(松田)と、会社を変えたいと願いながら日々奮闘する真野直己(前田敦子)をはじめとする個性豊かな人事部の面々が、会社の中で巻き起こる社員のさまざまな問題と向き合いながら、「現代人の悩み」に立ち向かっていく。

 山口まゆが演じるのは、人見廉が勤める「日の出鉛筆」の研究開発部で働く土橋由依(どばし・ゆい)。「日の出鉛筆」の就業規則では、副業が禁止されているのだが、社員の間で副業にまつわる報告がいくつか上がっていた。これに対して人事部がなにも対処していないと総務部から指摘され、人事部は「副業禁止」のポスターを社内に貼って周知をすることに。

yahooでブログネタを探していたら、面白そうなネタを見つけました。さすがyahooです。「副業」をテーマにするドラマとは、なかなかいいところに着眼したと思います。

因みに公務員は法により副業禁止とされています。職務専念義務と守秘義務が理由だそうです。でも民間企業でこれを理由に副業禁止が可能でしょうか。答えは「No」です。

(そういえば、仕事の傍ら、プロボクシングのレフュリーをしていた労働基準監督官の噂を聞いたことがあるけど、何かバレて処分されたそうだが、どうなったんだろうか)

よく就業規則に記載すれば、一律に副業禁止にできると考えている経営者がいますが、それは違います。労働時間以外は、労働者は何をしても自由です・・・、というより、労働契約の本質が、使用者が労働者を拘束している時間に対し、対価(賃金)を支払うということだから、賃金の対象外の時間は労働者が拘束される理由がないということです。

もっとも、先に述べた「職務専念義務」と「守秘義務」に違反するような行為をするのは問題です。副業が本業と似たような職業であると問題が発生するようです。

(例) 「本業の経験を利用して、別会社を在職中に設立する」けっこう、この手のトラブルは多かった気がします。

そもそも「副業」とは何でしょう

「親の商売を手伝っている」

「ユーチューブで広告収入がある」

「貸しビルを所有しているので、家賃収入がある」etc

範囲が広すぎて、ひと言で「副業とは何か」なんて説明できません。

ただ、労働基準法上での問題点は、次の一点だと思います。

「労働時間の管理はどうするの?」

審議会等では労働基準法第38条の解釈が議題とされているそうです。

(注)労働基準法第38条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

「掛け持ち仕事をする場合は、1日の後の方の仕事をする事業場が残業代を支払うべきだ」という、ほとんど守られていない条文をどうするのかの議論です。

さらに「労働時間」というと、「過重労働による健康障害(過労死案件!)」も見落とせません。2つの事業場に所属し、労働者として働くなら、「過労死認定」は受けやすいでしょ。しかし、副業が「個人事業主」の場合は「過労死認定」がとても難しいのも事実です。

昭和の時代には考えられない労務形態が現在はでてきました。昔はひとつの職業で努力し経験を積むというのが普通でしたが、複数の職業にに専門性を取得される方がいるのが令和なのでしょうが、なかなか難しいと思います。私としては、副業は趣味の延長として楽しみながら行えるようになることが理想だと思います。

最低賃金

(里山の旧家・山梨県甲州市「もしもしの家」、by T.M)

共同通信 3/17

石破茂首相は17日の参院予算委員会で、介護などを担うエッセンシャルワーカーや成長産業分野での人材確保に向け、特定の産業に適用される「特定最低賃金」の導入を検討する考えを示した。「賃金が上がっていかないと、この国の経済は持たないとの強い認識を持っている。政治主導できちんと判断したい」と述べた。

これ、けっこう影響は大きいですよ。ようやく決断してくたかという気分です。いい判断だと思います。現在でも、産業別最低賃金(特定最低賃金)の制度はありますが、導入には地域の労使の合意が必要等のハードルが高いものです。その制度を簡易化するというなら大歓迎です。

介護と物流関係者の最低賃金を上昇させることで、社会が一番必要としているところへ人材が回るようになると思います。

私は、この件については、ひとつアイディアを持っています。なにかというと、「最低手当」を創設するという考えです。

「雇用期間が1年未満の者及び派遣社員には、最低手当を支払うこと」というようにしたらどうでしょうか。

例えば、1年未満の契約を繰り返している非正規労働者については、時間当たりの支払わなければならない賃金を

     最低賃金 + 最低手当

というように定めるのです。例えば、最低賃金1000円を定めた地域で最低手当が300円だとするなら、非正規雇用者に支払われるべき時給は最低で1300円となるようにするのです。非正規雇用者にこそ、高い水準の賃金が支払われるべきです。

もし、この「最低手当」を支払っていない場合は、「期間の定めなき雇用」ということになりますので、解雇・雇い止めのハードルが上がります。そして、「最低手当を支払っていないのに、非正規労働者扱いで解雇された労働者」については、当然遡及是正が求められます。

私がこんな考えに至ったのは、「派遣労働者」のことを思ったからです。労働基準監督官を昭和の終わりから平成の終わりまでしていましたが、その間に社会が大きく変わったなあと思ったのが、平成10年代の「製造業への派遣解禁」です。当時は、「派遣労働者」は「派遣業(派遣元)」の最賃が適用されていましたが、いつのまにか「派遣先」が適用される最賃が適用されるようになりました。昔は、「派遣先」の適用される最賃の方が「派遣業(派遣元)」が適用される最賃より高いので、このような制度に変更されたのです。

今回、石破首相が述べた、特定最低賃金が適用される業種に、「派遣業」が含まれると良いのですが、それには現行の制度を変えなければならず、かつ多くの非正規労働者には恩恵がないような気がしましたの、「最低手当」の設立も必要なのだと思いました。

何か、この考えを発表するところはないのかな(オンライン署名でも集めるかな!)

朝礼

(ローテンブルクの街並み、by T.M)

テレ朝ニュース 3/1(yahooニュースより)

岐阜県岐南町は、朝礼のために勤務時間の5分前に出勤していた職員ら146人に、合わせておよそ1100万円の時間外勤務手当などを支給するための補正予算案を先月28日、議会に提出しました。

セクハラ問題を受けて去年辞職した小島英雄前町長は2021年3月から3年間、職員に対し朝礼のために本来の勤務時間より5分早く出勤するよう命じていました。

しかし、この時間の時間外勤務手当が支払われておらず、職員が支給するよう要求していました。

「え、今時何考えているの、この元町長って」思ったら、どうも本当に問題のある人だったようです。さっさと支払いを決めてしまって、町としては正解でしたよね。これ、完全な労働基準法第24条違反(賃金不払い)ですから。(37条違反・残業代不払いであるかは、微妙。)

そもそも、「朝礼」って何でしょう。要するに、一方通行のミーティングではないでしょうか。朝礼主催者から、朝礼出席者への情報伝達が主な目的なはずです。だとしたのなら、その情報伝達が、業務上どうしても必要と主催者が判断したのなら、堂々と予算を取り、残業代を払って実施すればよいだけです。

ところが、実際は朝礼主催者の自己満足に過ぎない朝礼が多く、残業代を払ってまで行う価値もないことを主催者側も分かっているから、今回のような事件が発生してしまうのだと思います。今の世の中、メールや電子掲示板の情報伝達よりも、業務上必要な朝礼など多分ありません。朝礼など、ほとんどが昭和の遺物です。

とは言っても、必要な朝礼もあると思います。それは建設現場等で行われる「安全朝礼」です。大きな建設現場では、ほぼ毎日朝礼が開かれます。建設現場は、重機、とび、鉄筋、型枠といった様々な職業・企業の集合体です。毎日、顔ぶれが違います。そして、日々現場が変わっていきます。そこで、毎日朝礼をして、当日の現場情報を作業員全員で確認するのですが、これが安全確保には非常に有効なわけです。

因みに、建設現場の朝礼で「残業代未払い」等の苦情がでたケースを私は知りません。みな、その朝礼の重要性をよく理解していますし、他の企業が朝礼の分の賃金を支払っているのに、自分の所だけ未払いという訳にはいきませんからね。

もし、「朝礼時間の賃金が払われていない」という会社があったら、すぐに監督署に相談してみたら良いと思います。労働時間の把握が容易いケースですから監督署も動きやすいと思います。

唯一の例外は、「朝礼」が「自由参加」の名目で行われ、実態は「強制」であったケースです。これは摘発が難しいです。それに、本来は健康増進のために行われるはずの「ラジオ体操」が加わると、追及はさらに厳しくなります。

トランスジェンダーとトイレ

(甲斐善光寺、by T.M)

時事通信 11/12

経済産業省は12日、出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーの職員に対し職場の女性用トイレの使用を制限していた問題で、省内にあるすべての女性用トイレの使用を認めたと明らかにした。

最高裁が2023年7月、制限を認めた人事院の対応は違法とする判決を出していた。

この問題で、経産省はこの職員に対し勤務フロアから2階以上離れた女性用トイレしか使用を認めていなかった。人事院が24年10月、省内の女性用トイレを自由に使えるべきだとする再判定を出したことを考慮し、同省は今月、職員に使用制限の撤廃を伝えた。 

労働安全衛生法に関する指導をしてき者としては、このような時代になって、企業に労働安全衛生法をどのように説明したら良いのか分からなくなります。例えば、次のような法条文があります。

事務所衛生基準規則第17条  事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。

  一  男性用と女性用に区別すること。

ちなみに、この法律の違反行為に対する罰則は、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります。

トランジェンダーに関し、悲しいほど無知な私としては、単純な考えしか持ちませんので、「それでは、男性用トイレと女性用トイレともうひとつトランスジェンダー用のトイレを作ればいい」なんて思ってしまいます。もちろん、このようなことは、差別行為に該当します。

(経産省はトランスジェンダーに、「指定したイレレ」を使用させていたことが、差別だと認定されました)

「わが社は、トランスジェンダー差別はしない。しかし、女性従業員及び女性の来客の方が嫌がるから、トランシジェンダーの方は特に決められたトイレを使ってもらう」

これが差別なのです。

さて、それでは最高裁判決を守るためにはどうしたら良いのでしょうか。これが、経産省でなく厚労省で起きた事案だったとしたらどうなっていたでしょうか? 職員が使用する男女別のトイレをトランスジェンダーの方が生物的な男女の垣根を飛び越えることが違法であるかどうかを、行政官庁である厚労省はどう判断するのでしょうか?

役所が困くらいですから、民間企業の人事の方は、現在非常に困っていらっしゃると思います。できる限り、関わりたくと思うかもしれません。しかし、無視・無関心も差別であると言われますので、真摯に対応しなければなりません・・・・

私が企業から対応を相談されたら、やっぱり次のように逃げてしまうと思います。「70近い年寄りでは、頭が混乱してうまく考えられません。もっと若い方で決めて下さい」。

ボケていることは、たまに役に立ちます。

高齢者の労働災害

(旧信越本線横川〜軽井沢間の眼鏡橋、by T.M)

朝日新聞 11/7

働く高齢者の増加で労働災害も増えているとして、厚生労働省は高齢者に配慮した作業環境の整備を企業の努力義務とする。6日の労働政策審議会の分科会で、労使が大筋で合意した。厚労省は2025年の通常国会に労働安全衛生法の改正案を提出する方針。

 努力義務とする対策としては、段差の解消や手すりの設置のほか、高齢者の体力や特性に配慮した作業内容の見直しなどを想定している。定期的な健康診断や体力チェックの継続的な実施も求める。同法に基づく指針も定める方針だ。

 人手不足などを背景に、高齢の労働者は増えている。65歳以上の労働者は、23年は約914万人で過去最多を更新した。厚労省によると、労働者全体に占める割合は、23年は50歳以上が41.4%、60歳以上が18.7%まで増えた。

私が一時期安全衛生の顧問をしていた会社の話です。そこは全国に30工場を展開していて、私は関東・東北の10工場を年3回パトロールをしていました。一昨年に、その会社の労働災害の分析を依頼され、全国の工場で発生した労働災害を確認したところ、現代を象徴するような労働災害が、7月のある日に2件発生しました。

1件目は東北工場で発生した災害です。工場には夜勤があり、夜勤明けの午前5時にその災害は発生しました。夜勤明けの職員が、帰宅しようとしてクルマ(軽自動車)に乗り、会社の駐車場から出ようとしたところ、自転車で出勤してきた22歳の男性職員と駐車場内で衝突し、22歳の職員は自転車と一緒に転倒したという事故でした。この事故により、22歳の職員は、打撲となりましたが休業は0日でした。

2件目の災害は、1件目の災害からちょうど12時間後の午後5時に、湘南工場で発生しました。その工場ではベルトコンベヤーの調子が悪くてメンテナンス担当の職員が屈みこみながら修理していたのですが、就業時間終了のチャイムを聞いて、あせっていました。そこへ、1日の作業を終え、やれやれといった具合の62歳のパートタイマーの女性が更衣室に向かい歩いてきました。急いで作業をしていたメンテナンスの職員がいきなり立ち上がった拍子に、後ろを歩いていたパートタイマーの女性と衝突してしまいました。女性は尻餅をつくと同時に手を床についたのですが、手首を骨折し休業2ケ月の災害となってしまいました。

さて、ある会社で一昨年の7月に発生した2件の災害ですが、これは何か現在の職場環境を象徴していませんか?22歳の若者は自転車に乗っていて、軽自動車と衝突し、捻挫で休業0日、かたや62歳の女性は急に立ち上がった男性と衝突し、手首骨折休業2ケ月。きっと、こんなことが日本中のあらゆる職場で発生しているのでしょう。高齢者の災害は些細なことが、重篤な結果となるのです。