最低賃金の季節

(イタリア山公園の庭園・横浜市中区、by T.M)

7/5 朝日新聞

「担々麺一つ、ギョーザ一つですね」

 6月下旬、千葉県我孫子市のラーメン店「豆でっぽう」では、アルバイトの竹原久美子さんが店の前に並ぶ客から注文を取って回っていた。

 茨城県取手市の自宅から週4回、約30分かけて電車で通う。

 5年ほど前までは自宅近くのコンビニで働いていたが、当時100円以上高かった時給が魅力で移った。アルバイト9人中3人が茨城から通う。「茨城組」が集まるLINEグループもある。

 「通勤に多少時間がかかっても、時給100円の差は大きい」。竹原さんの時給は1150円。月に7万円以上稼ぐ。茨城より時給が高いのは、ベースとなる最低賃金の差と連動しているためだ。

毎年秋に改定となる最低賃金が話題となる季節になりました。(そのうち、「最低賃金」が俳句の季語になるんじゃないかな)。毎年恒例の最低賃金に関する、私の提案の話です。毎回同じこと書いているけど、

   派遣業労働者への全国一律の産業別最低賃金

を設定しましょうよ。もちろん、この金額は東京都の地域最低賃金を上回る額でなければなりません。産業別(特定)最低賃金とは、昔はけっこうあった制度で業種別に最低賃金を決めていくことです。聞きなれない言葉でしょうが、現在でもあります。例えば、茨城県の鉄鋼業で働く人は、茨城県の地域最低賃金の1005円でなく、鉄鋼業最低賃金1098円が適用されます。ある意味雇用が不安定な派遣社員の賃金は高く設定されるべきです。もちろん、短期雇用のスポットバイト等の賃金についても上げるべきですが、まずは突破口として派遣業労働者の賃金に手をつけるべきでしょう。

派遣業の最低賃金の話をしたついでに、何年か前にも書いたけど、派遣業の問題点についてまた書きます。

   派遣業では、構造的に違法残業が発生しています

「構造的な違法残業」の説明をする前に、「正常な残業」とは何かを説明します。1日8時間の法定労働時間(例外有)以上の残業をするためには、労働基準法第36条に規定された労使協定(36協定)を締結し、「残業をすること」について、労働者代表の承諾を得なければなりません。労働者代表の承諾がない残業は、すべて違法残業となります。

一般的な民間企業では、この労働者代表を選出するための、なんらかの民主的な方法がとられています(そのはずですが・・・)。そして、労働者代表は使用者に意見を言える立場です。

さて、派遣業についてなんですが、派遣業の36協定は派遣元で締結されます。例えば、X社という派遣会社が、A工場に10人派遣、B工場に10人派遣、C工場に10人派遣、本社で10人労働者いたとします。X社では、全ての派遣先労働者と本社労働者の合計40人の労働者から労働者代表を選任しなければなりませんが、A工場に派遣されている労働者はB工場やC工場、本社でどのような人がいるのかを知りません。また、自分が労働者代表に立候補したくても、他の職場に伝える方法はありません。だから、選ばれるのは必ず本社の事務担当者ということになります。このようにして選ばれた「労働者代表」が36協定の締結者となっているのです。適切な労働者代表が選出されないという理由で、構造的に派遣業では違法残業が発生しているのが現状です。

さて、最低賃金の話をはじめたら、なんか派遣業の話になりました。派遣業と最低賃金についての詳細な話は、また後でします。

損害賠償

(オナガ・智光山公園こども動物園、by T.M)

7/28 東海テレビ

愛知県江南市の教育委員会によりますと、市立古知野中学校で7月18日夕方、プールの水を足そうとした教師が水道の栓を閉め忘れて帰宅し、3連休明けの22日朝まで水が出たままになっていました。

 プールおよそ2杯分1031立方メートルの水が流出し、余計な水道代およそ52万円には公費を充てる方針です。

 文科省は2024年、プールの管理をめぐり教師の業務の負担を減らすとともに特定の教師に賠償責任を負わせないよう求める通知をしていました。

 学校では閉め忘れを防ぐため栓を開ける前に「水を止める」と書いたメモをデスクに残す決まりでしたが、今回の教師はメモを書いていなかったということです。

この記事は「余計な水道代およそ52万円には公費を充てる方針です」という文言を強調し、公務員のミスのために税金を無駄にしたと印象づけたいだろうけど、仕方がない処置でしょう。職員のミスで事業場に損害がでた時に、一方的にその職員に弁済を負わせようとするなら、元労働基準監督官としてはひと言いいたくなります。相手が民間企業であっても、役所であってもあたり前のことです。

以前発生した同じような事件では、学校の職員が弁済したことが新聞記事に載っていました。バカげたことです。その先生は支払いを拒否をすればよかったのにと思います。裁判やったら、多分職員の方が勝つと思います。

それにしても、お粗末な事故ですよね。再発防止対策は簡単だと思います。一番確実なのはハード的措置を行うこと。「プールへの流量が一定以上なら水道をストップさせる」「プールからの排出量が一定以上なら、水の流入を辞める」等です。また、遠隔で監視というのもまたいいかもしれません。

また、古い設備なのでアナログでいきたいというなら、それこそ労働安全衛生の点検基準を参考にすればよいのです

    1 責任者及び担当者を決める

    2 チェックリストを作成する

    3 担当者がチェックし、チェックリスト記入後、

          責任者がチェックリストをチェック

一番いけないことは、一人の人間にまかせること。人は必ずミスをすることを前提に、ミスをカバーできる体制を作ることです。公的機関ではこのへんの管理体制がまったくできていないところも多く、多分上記記事の学校現場もそのようなものではなかったかと思います。それで事件が発生すると、責任はすべて現場では、現場の職員はやってられません。

某公的機関に、「安全経費は予算の優先順位の最上位として下さい」と言ったら怪訝な顔をされました。「なぜ」と聞かれたので、「安全第一だからです」と答えたら、ようやく納得されました。要するに、そんなこと考えたことなかったんですね。

エルピーダ

(秩父のゆるキャラ「ポテ丸」、by T.M)

7/17  UX新潟テレビ21

小千谷市に工場があるパワー半導体製造の『JSファンダリ』の破産申し立てを受けて、ハローワークが説明会を開きました。元従業員からは、解雇への憤りと不安の声が上がっています。

『JSファンダリ』が7月14日東京地裁に破産を申し立てたことを受けて、ハローワーク長岡は元従業員を対象に再就職の支援方法などを説明。小千谷市の工場では、約500人が働いていました。

解雇された元従業員は-

■元従業員(47)

「(解雇が)急だったので、ふざけるなという感じ。6月分の給料が出ていなくて、いつまでたっても具体的な支給日が連絡されない。」

■元従業員(47)

「会社の存続はできないのではないかという気はしていたが、まさか即日解雇だとは思わなかった。この先のことも不安だし、とりあえず心の準備をきめて今後のことも考えなければ。」

また、大光銀行は17日から再就職相談電話窓口を開設すると発表しました。

1900年代の終わりのことです。ある新工場が猛毒のフッ化水素を使用するという情報がはいったので、その事業場へ行ってきました。その工場は、従業員50人程度で、新工場といっても何か古い設備でしたが、は半導体の洗浄用のフッ化水素は、表彰したくなるくらい見事に安全衛生管理が徹底されていました。聞いてみると、そこはNECと日立製作所と三菱電機の半導体部門が合併してできた半導体を製造する新会社で、私が訪問した工場は研究所として使用されていて、来年には別工場に吸収されるので廃止されるということでした。

私は、それを聞いてビックリしました。世界に名だたる「メイド・イン・ジャパン」の中心企業が3つも集まってできる半導体製造工場だから、これで日本の製造業も安泰だなんて思いました。同じ頃、私の生まれ故郷の近くの横須賀リサーチパーク(YRP)は最盛期を向かえていました。関東地方のシリコンバレーになるべく、参加企業が目白押しでした。そんなエルピーダもYRPも今は昔の話です。

今回倒産した『JSファンダリ』は、今はなき三洋電機関係の半導体工場だということですが、よくもった方だと思います。電気自動車部品というニッチな半導体ですから、特殊技術があったと思いますが、電気自動車不況が足を引っ張ってしまったのでしょう。

倒産のやり方ですが、従業員の「即時解雇」とは驚きです。これは本当でしょうか?

ひどい解雇のやり方で、腹が立つ人多いと思いますが、ものは考えようです。引継ぎも清掃もすべて不要ですので、従業員は会社においてある自分の荷物をとりに行けばよいので、冷静に考えると「比較的楽」かもしれません。つまり、通常はひと月間の解雇予告があるはずが、それがないのですから、「賃金1ケ月分の解雇予告手当」が支払われます。解雇日までの1ケ月間働くより、同じだけ給料をもらえるのだから、働かなくて良いと割り切ってしまった方が精神的に楽です。

給与不払いを心配している人がいますが、それは100%支払われます(もしかして、少し遅れることはあるかもしれません)。今回は「夜逃げ」ではなく、「法律的倒産」なので、賃金は他の債権と比較して「先取特権」があるので大丈夫です。もし、会社財産が未払い賃金に充当されなくても、最後は「賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)」に基づき監督署がなんとかしてくれます。ひとつ懸念があるとしたら、立替払いの上限額が370万円なので、それ以上の退職金については不明だということです。

再就職を希望するすべての従業員が、よりよい職場に転職されることを祈ります。

休みます

今、急な仕事で新潟にいます。

投票は一昨日にすませました。

本日は、間に合わなくてブログ更新しません。

せっかく来て頂いた方には申し訳ございません。

来週、お待ちしています。

元請け

(シバザクラと武甲山・埼玉県秩父市の羊山公園、by T.M)

MBS NEWS  7/3

大阪・関西万博で相次ぐ、海外パビリオンの工事費未払い問題。新たにアメリカ館の工事に携わった下請け業者間でも未払いが起きていることがわかりました。

連日、長蛇の列ができる人気パビリオン「アメリカ館」。千葉県の内装業者は3次下請けで建物の壁などの組み立てを請け負い、去年11月からことし3月まで、工事を行いました。

しかし、この内装業者によると2次下請けからの入金が2月末で途絶え、約2800万円が支払われていないということです。

業者は取材に対し、「未払いですね。まさかですよね。こんなことがあっていいのって思っている」と話します。

未払いの工事費について一部だけでも早く支払ってほしいと発注元の2次下請けと交渉していましたが、その最中の5月に突然、その業者が破産。工事費の回収のめどが立たなくなっているということです。

博覧会協会は相次ぐ工事費の未払いについて「私たちができるのは行政の相談窓口などの紹介」だとしています。

これ、けっこう根が深い問題ですよ。取り敢えずは国交省何やっているんでしょうかね。工事の施工代金のトラブルは国交省が管轄するはずなんですけど・・・

私が労働基準監督官をやっていた時代には、このようなトラブルはありませんでした。第3次下請けだろうが、第4次下請けだろうが、賃金未払が発生した時に、元請けに連絡すると、元請けは出面(でずら)と賃金額を確認して、立替え払いをしてくれました。理不尽と思えることでも実によく言うことを聞いてくれました。

元請けがこんなに監督署に協力的なのは、自社が施工した現場では法違反をださないという元請けの法遵守の意志がある訳ですが、実は他にも理由があって、実利の一面もあります。

下請けの賃金不払いを、監督署の要請にもかかわらず、元請けがスルーした場合は、監督署は国交省に通報するシステムがあり、その場合は、元請けは数か月から数年間にかけて、公共工事の受注ができなくなるのです。請負高何千億もの公共工事の受注に影響するくらいなら、下請けの未払賃金くらい自分たちで払ってしまえということです。

因みに、この公共事業の入札禁止という奥の手は、影響が非常に大きいものです。労災事故が多発した場合も入札禁止になるのですが、事故が起きても元請けには連絡しないという下請けの労災隠しの原因にもなるという負の側面もありました。

ですから、建設会社で発生する賃金未払は、「公共工事の入札」に直接的にも間接的にもまったく関係のない、零細企業でのみ発生しました。

さて、今回の万博での賃金未払が、大きな問題となった背景には

   海外の企業が元請け

となったことが大きな原因です。彼らには、「今後、日本での公共工事の受注」など、なんら関係がないのです。従って、彼らが直接契約した一次下請けとの民事的なやり取りがすべてで、二次以下の会社の経営状況などしったことではないのです。

今後は、このような海外の建設会社の工事が日本国内で増えていくと思います。そうすると古き良き時代の元請け・下請けの関係は崩れるものと思います。またひとつ、世知辛い世の中になりそうです。