(丹沢のミツマタ、by T.M)
前回に続いて、働き方改革法案の話をします。
今回の法改正について、もっとマスコミの話題となって欲しいのは「時間外労働の上限規制」です。この規制は、ひと月の残業時間を最大で45時間以内、年間で360時間以内とすることを定めたもので、罰則規定付きです。現場の労働基準監督官の中には、次のように考える人もいるようです。
「月45時間、年360時間は現在の行政指導ベースでもそうなっている。特別条項なしの36協定は、それ以上の残業時間を記載してあっても、監督署の窓口では受理しない。36協定以上の残業をすれば、現在でも労働基準法第32条違反(罰則有)だから送検可能だ。だから、今回の法改正はあまり関係ないだろう」
私は今回の法改正は世の中にとても大きな影響を与えるものだと思います。「原則月45時間残業」を守らないなら犯罪行為だという意識が定着すれば、確かに世の中の姿が変わるような気がします。
気になるのは、今回の法改正で「通常予見できない業務量の増加等の場合は特例として、月100時間、年間720時間まで」残業できるという箇所があることです。これは今までの「特別条項」とどこが違うのでしょうか。法令にこの条文がある限り、今回の改正は単に「無制限だった特別条項の残業時間を月100時間・年間720時間とした」というように理解されても仕方ないような気がします。「月100時間の残業」は現在の、「過労死の認定基準」に該当する長時間労働です。
実は、私は国会で野党に突っ込んで欲しかったのは、この部分なのです。某野党は、この部分を除く法の対案を示したようですが、十分な問題提起はされていないように思えます。審議拒否と「高プロ問題」で多くの審議がなされないまま法律が成立してしまいそうで残念です。