(秩父の山並み、by T.M)
居酒屋「ワタミ」の長時間労働の問題については、過去に何回かこのブログでも取り上げてきました。週刊文春でまた記事がでたようなので、それについて書きます。
「週刊文春」11月25日号
大手外食チェーン「ワタミ」の執行役員が、社員に対し、労働基準法で定められた残業時間の上限を超える労働を求めたと受け取れる発言をしていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。社内ネットで配信された動画を入手した。(略)
その宅食事業のトップである宅食事業本部長に10月1日付で起用されたのが、執行役員の肱岡彰彦氏だ。
10月の最終週、全国で数百名いる「ワタミの宅食」営業所の所長に向け、社内ネットで1本の動画が配信された。「週刊文春」が入手した動画によれば、肱岡氏は以下のように語っている(音声のみ公開)。
肱岡「11月の残業が増えるということは……増えるということは問題がありませんし、逆に言うと、増やして下さい。で、必ずいま述べたような施策を、必ずやるというふうに考えて下さい」
労働基準法で定められた残業時間の上限は原則的に月45時間だが、次のように続けた。
肱岡「残業に関してはですね、会社の考え方として、残業は必要に応じてして下さい、というスタンスですけれども。ただし皆さんの健康を考えて45時間というのを目安にしてます。ですから45時間というのを一つの目安として、上長とご相談をしてみて下さい。ただ11月はですね、強化月間ということで、45時間を超えるということがあってもいいというふうに考えてます。どうしても労働基準法に触れるので80時間というのはできませんけれども、45時間超えるということも、会社としては構いませんので」
そして、動画の最後はこう締めくくったのだった。
肱岡「一番の優先順位を営業活動にすると。残業守る、ということじゃなく、営業活動するということを最重要に考えて頂いて、11月、頑張って下さい」
「週刊文春」は、この部長の発言を受けて、「ワタミは過去に従業員を過労死させ、それ以後も長時間労働を従業員に行わせ監督署からの是正勧告を受けているのに、さらに今回法違反を従業員に行わせようとしている。ひどい会社だ。」という印象を読者に与えようとしているのだと思います。
でも、あえて言います。この部長の発言は法違反ではありません。
なぜなら、「特別条項付き36協定」を労使間で締結すれば、ひと月45時間以上の残業は可能だからです。
「11月はですね、強化月間ということで、45時間を超えるということがあってもいいというふうに考えてます。どうしても労働基準法に触れるので80時間というのはできませんけれども、45時間超えるということも、会社としては構いませんので」
この本部長の発言は、かえって本部長が正確に労働基準法を理解していることを示しているように思えます。引用はしませんでしたが、上記の「週刊文春」の後半の記事ではワタミ本社もそのように回答しています。
(注)でも、11月は厚生労働省が提唱する「ゆとり創造月間」なのに、ワタミでは「強化月間」。完全に、厚生労働省にケンカ売ってます。
問題は、「売り上げを伸ばすためには、社員が長時間労働をすれば良い」このよう考えをこの会社がしているこです。
10数年前に起きた、横須賀労働基準監督署管内の「ワタミ」の過労死事件について、被災者は午前3時まで働き、「早朝研修」に午前7時から研修に出勤させられることもあったそうです。バカバカしいです。そんな研修して何の意味があるでしょうか?会社の目的とするところは、「利益の確保」であって、長時間労働ではないはずです。
最近、私はこんな会社に出会いました。産業廃棄物の集配業ですが、徹底したペーパーレスを実施したところ、伝票がなくなり業務が効率化し、利益が数倍となりました。また、私の専門の労働安全衛生でも多大な成果を挙げています。私は、この会社の事例を安全衛生発表会で積極的に宣伝していくつもりです。
ワタミ株式会社(本社:東京都大田区)も、自らのプレスリリーフでは、経済産業省と東京証券取引所が実施する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020」の「DX注目企業2020」に選定されたそうです。しかし、「利益の確保」の手段が、「長時間労働」しかないのであるなら、それは完全にDXに逆行する発想であり、「ワタミ」の将来が心配になります。