お休みです

(シラコバト・大宮公園小動物園、by T.M)

人事異動の季節となりました。

私は非常勤嘱託なんですが、異動となりました。新しい仕事は、前部署と責任の程度は同じで、専門知識は生かせますが肉体的には楽な仕事となります。

66歳となる私にとってはありがたいことです。

また、組織の仕事以外に、私が個人で請けている仕事についてもやり易くなると思います。

異動に備え、業務が立て込んでいます。

そんな訳で4月7日までブログは休載します。ご訪問頂いた方には申し訳ないのですが、ご容赦お願いします。

クレーマー

(ポニー・智光山公園こども動物園、by T.M)

読売新聞 3/9

各地の自治体で職員が身につける名札の表記をフルネームから名字のみに変更する動きがある。SNSの普及で、嫌がらせ目的で名前をネットに書き込まれるなどの懸念からだ。実際に職員名をかたる偽アカウントで物議を醸す投稿をされ、役所に苦情が寄せられるケースも出ている。

 芸能人のスキャンダルを「バカすぎて滑稽」と評したり、政治家の不祥事に「在日を選ぶからこんな事になる」とコメントしたり。香川県観音寺市の実在する職員の名前を使ったX(旧ツイッター)のアカウントが、こんな投稿を続けている。

 市が一連の投稿を把握したのは昨年10月頃。芸能界の性加害問題を巡り、第三者を傷つける内容が書き込まれ、投稿を見た人から「公務員がこんな書き込みをしていいのか」と市に苦情のメールが5件届いた。

 市の調査に対し、本人はXでの発信を否定。同じ時期にこの職員の対応に苦情のメールがあったことや、同様のアカウントが複数つくられていたことから、市は第三者が嫌がらせのため、なりすまして投稿したと判断した。

市は昨年11月、ホームページで職員と無関係のアカウントであることを周知。さらに他の職員でもトラブルが起こる可能性があるとして、3月から約1100人の職員の名札表記をフルネームから名字のみに変更した。

これは観音寺市としては当然な措置でしょうね。おかしな人が世の中にはいます。

今から20年前にT労働基準監督署に勤務していた時に、酷い相談者にあったことがあります。何を理由に監督署に恨みを持ったかは分かりませんが、初老の男性Aがクレーマーとなりました。その人は完全に狂人でした。「東京大学医学部卒」と記載された名刺を持ち歩き(もちろんデタラメ)、季節の変わり目ごとに騒動を起こしました。例えば、監督署のそばに「監督署の××に天誅を加える」という張り紙をしたり、Yスタジアムの前で「T監督署ではセクハラが行われている」とのビラを撒かれたりしました。これら事件の犯人は不明ですが、監督署近くの張り紙事件の時は、その時間帯にAが目撃されていますし、Yスタジアム事件のビラも張り紙も文字は手書きで、よく似たものでした。

また、春先にはよく監督署に苦情の電話がかかってきました。

「今電話で、お宅の職員の〇〇という者から電話がかかってきて、調査ということで色々なことを聞いてきたがとても失礼な奴だった。そいつを出せ」

その電話をくれた方に、「監督署はそんな調査をしていないし、〇〇という職員もいない。それは監督署の名を騙ったイタズラ電話である」という説明をするのに大変でした。これもまた、確証はありませんが、「初老の男」ということでAである可能性が高いものでした。

極めつけは「トイレ事件」です。T労働基準監督署の事務室は2階にあり、1階は会議室で、業務がある時以外は1階は使用していません。ある時に、1階にAがうろついていたという目撃があったので、1階に行ったところAは既に去った後でした。そして、男女共用の身障者用トイレの床と壁に「ウンコ」が擦り付けてありました。相当の丁寧に擦ったらしく、タイルの溝にまで塗りこめられていました。

さて、冒頭の新聞記事についてですが、Aのような者だったら、確かにこんな事件を起こすなと思いました。Xの配信者については、ぜひ刑事事件まで持っていって欲しいと思います。

2つの送検

(土肥桜とメジロ・静岡県伊豆市土肥の松原公園、by T.M)

ニュースをみると、3月1日は日本全国の労働基準監督署で多くの司法事件の書類送検が行われたようです。3月1日というのは、多分年間をとおし、一番書類送検の多い日です。これには理由があります。

検察庁は緊急を要する事件以外については、毎月20日から月末までの送検は認めません。これは、「当月に受理した事件については、当月に着手しなければならない」という内部規則が検察庁にあるらしく、通常送致はこの期間は受理しないという申し渡しが各警察機関にされているのです。また、4月になると人事異動が各労働基準監督署であるので、その準備に3月は忙しく、年度内に各監督官の手持ちの事件を送検してしまえということで、3月の最初の日が慌ただしい送検日となる訳です。

さて、そんな3月1日の送検について、私が良くやったと思う送検と、これはイマイチだろうと思うものを上げます。まず、良くやったと思うものからです。

下野新聞 3/1

労働基準監督署に未払い賃金の申告をしたことを理由に職員を不当に解雇したなどとして、真岡労働基準監督署は1日、労働基準法違反の疑いで、真岡市東郷、社会福祉法人「萌丘厚生会」と同会理事長で真岡市議(84)=5期=を書類送検した。労基法は労働者が法律違反の事実を行政官庁に申告したことを理由に、使用者が解雇や不利益な取り扱いをしてはならないと定めている。労基署によると、こうした違反での書類送検は県内で初めてという。

 書類送検容疑は、2023年3月1日~6月30日までの間、時間外・休日労働に関する協定(三六協定)を締結せずに、従業員11人に1日8時間を超える時間外労働をさせたほか、2人に1週間に40時間超の時間外労働をさせた疑い。また労基署に未払い賃金について申告したことを理由に、女性職員を解雇し不利益な取り扱いをした疑い。

よっしゃ!よくやった。これぞ、監督署がやるべき書類送検。監督署OBとして誇らしい。真岡監督署は守るべきものを知っている。

次にイマイチ送検です。

時事通信社 3/1

社員に違法な時間外労働をさせたとして、厚生労働省東京労働局は1日、労働基準法違反の疑いで中古車販売大手ビッグモーター(東京)と同社工場長の30代男性を書類送検した。

認否は明らかにしていない。

送検容疑は昨年2月、都内にある同社店舗に勤務する整備士6人に対し、労使協定で定めた延長時間を超える時間外労働をさせた疑い。

同労働局によると、6人の時間外労働はいずれも過労死ラインと言われる月80時間を上回り、最長で月116時間39分に上るケースもあった。同社は過去に繰り返し是正勧告を受けていたが、改善されなかったため東京労働局過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)が捜査に乗り出していた。

何かなー!っていう感じです。ビッグモーターを叩くという時流に乗って、話題づくりに送検したんじゃないかと思われます。確かに約117時間の時間外労働は、過労死の認定基準を超えているけど、世の中にはもっと悪質なところがあえるじゃないのかなと思います。

昨年、青森の製麺工場はひと月224時間の残業をしていて送検されたし、船橋労基署は残業165時間の運送業者を送検している。西宮労働基準監督署が送検した医療法人の事例は113時間の残業で今回の立件より残業時間は少ないが、これはそもそも医師が自殺し労災認定された事例で、ビッグモーターとは同一にはできない。

それに、何で上局である東京労働局の「カトク」がでしゃばってくるんだ。こんなもの、所轄の労働基準監督署にやらせりゃいいだろと思う。

送検されたのが、どこの店舗かも分からないし、「複数回、是正勧告を受けた」というけど、これは「今回送検された店舗について、過去に是正勧告を受けていた」と判断して良いのだろうか?

つまり、東京労働局としては、何でもいいからビッグモーターという企業を叩きたいから、東京労働局内の17の営業所(HPで調べました)の中から適当に選んで送検し、「他の店舗はどうなっているのですか」という新聞記者からの質問を封じるために店舗の名前を公表していないという疑いもでてくる。

まあ、詳細がこれから分かってきたら、私の誤解ということになるのかも知れないけど、あまり政治的な送検はして欲しくないと、今の段階では私はそう思います。

外国人労働者(3)

(旧信越本線横川〜軽井沢間のレンガ覆工のずい道、by T.M)

(先週の続き)

やがて会社担当者4人が監督署に到着しました。みなサラリーマンといった格好で、ヤクザのような者は誰もいません。そして、わたしの事情聴取に応じて、労働契約書(外国語のもの)、タイムカード、賃金台帳等を提出しました。私は、それを全て、会社と外国人労働者の承諾を得てから、外国人労働者に付き添ってきた若者に見せました。若者は最初は警戒していましたが、段々と外国人労働者の話に疑いを持っていたようでした。

しばらくして、決定的な話が出てきました。2、3日前の午後9時過ぎに、その外国人労働者は一人で会社事務室を訪問し、労働条件の不満をそこにいた事務員に述べたそうです。私は、もう一回事実関係を確認しました。

「午後9時過ぎに、数人の事務員が残業している会社事務室に文句を言いにきたのですか」

会社担当者は、その事実に間違いないと述べました。私は思わず笑い出してしまいました。会社担当者は、私の態度を訝しく思って尋ねました。「どうしたんですか」

私は答えました。「彼は、あなた方をヤクザだと言っていたんですよ。すぐに暴力を振るうという話でした。さっきも、あなた方がここへ、これから来ると言ったら、こわいから会いたくないと逃げようとしたんです。そんなあなた方のところへ、よく夜中に一人で行けたなと思い、おかしくなったんですよ。」

会社担当者は、驚いて外国人を見ました。私は、「何か説明しろ」と外国人に言いました。すると外国人は、「いえ、・・・」と何か話そうとします。

その驚き方に不自然さを感じたの、私は担当者に尋ねました。「もしかして、彼は日本語が分かるんですか?」担当者は答えました。「もう、日本に10年以上いますから、日本語は話せます」 無茶苦茶な展開になってきました。

結局次の点が判明しました。

1 外国人労働者は、普段は真面目に勤務していた。

2 ボーナスの支払いの件で不満をもち、会社に苦情を述べた。そして出社しなくなった。この事実について、会社側は「無断欠勤」と述べ、労働者は「解雇」と述べている。

私は、両者に対し次のような若い案を提示しました。

「解雇か無断欠勤かは、判断できない。でも、彼は長く勤務しているし、有給休暇もたくさん残っているので、彼が出社しなくなった日からの賃金については、有給休暇として支払い、また彼も有給休暇が残っている限りは出社しなくても良いので、頭を冷やして、また働くかどうかを考え直したらどうか。会社も彼が働く意思を示したら受け入れたらどうか」

両者ともこの案を受け入れてくれました。

その後、若者と外国人労働者は一緒に帰って行きましたが、来た時は正義感に溢れていた若者は何か気が抜けたような顔をしていました。

2、3日して、どうなったかということを若者に問い合わせてみました(外国人労働者とは連絡がとれません)。すると、外国人労働者とは、彼もあれから連絡を取っていないということでした。まあ、そうなるだろうなと思いました。

外国人労働者(2)

(ツキノワグマ・大宮公園小動物園、by T.M)

私が北関東の労働基準監督署で第一課長(監督課長)をしていた時のことです。

ある日、労働基準監督署に行政書士を名乗る若い日本人男性と、40代くらいの南米出身の外国人労働者がやってきました。その若い日本人はボランティアで外国人労働者の支援をしているということでした。外国人労働者は日本語ができないらしく、その若い日本人が通訳をしました。

その若者は、外国人労働者が管内の大企業である金属製品製造業者Sの工場の構内下請けの労働者であると紹介しました。そして、その企業を昨日に即時解雇されが、賃金もろくに支払ってもらっていないと訴えました。なんでも、その企業では外国人労働者への殴る蹴るの暴力行為が日常的に行われているそうです。

私は、正義感に溢れ、外国人労働者を支えようとするその若者の姿に、何か危ういものを感じました。だって、その若者の隣で、当の外国人がニヤニヤしているからです。

外国人労働者が悪い経営者から酷い目に合わせられるということが、よくありますが、南米出身の労働者にはあまり、理不尽なケースはありません。南米系(日経)外国人労働者は、外国人労働者の中でも恵まれているのです。不法就労ではありませんし、技能実習生でもありません。極めて合法的な立場で働いていますし、自分たちのコミュニティーも持っていて、悪辣な経営者が、簡単に不法に雇用できる人たちではありません。だから、労使間のトラブルは通常の日本人どうし労使関係のトラブルと似たようなものとなります。

また、その外国人労働者が働いているSという企業はよく知っているのですが、優良な企業でそんな暴力団のような下請けをのさばらしてはないと思ったからです。当時は、製造業への労働者派遣が解禁となった頃で、大手派遣会社のデータ装備費事件等が発生していましたが、Sは派遣労働者は受け入れず、従来どおりに協力会社を構内下請けとしていました。

そこで、私は2人の目の前で、すぐにその会社に電話をし、お宅の外国人労働者がここにいて、労働基準法違反を訴えているのだが、関係書類をもってすぐに監督署に来るように指示しました。会社担当者は、いきなりの監督署への呼出しに慌てた様子で、直ぐに来ることを了解しました。私は若者と外国人に、両方からの事情を聴くから、ここに残っているようにと伝えました。

若者は、迷いもなく了解しました。自分が通訳として、外国人労働者を迫害する悪質な会社担当者と対面することに興奮しているようでした。しかし、外国人は会社担当者が来るということに戸惑っている様子でした。そして、若者に何か言いました。若者は通訳しました。「彼は会社の担当者と会うことを怖がっています。このまま帰りたいそうです。」

そこで、私は若者に言いました。「私が守ってやるから、安心しろと通訳して下さい」外国人は諦めたように、そこに残ることになりました。

(続く)