10年目の休暇

(クリスタルラインのジムニーと富士山・山梨県山梨市、by T.M)

3/16 南日本新聞

鹿児島県は13日の県議会総務警察委員会で、職員の働き方改革の一環として、2027年10月からフレックスタイム制を導入する方針を明らかにした。学校教員や会計年度任用職員以外の全職員が対象で、4週間単位の総勤務時間155時間を維持しつつ、始業・終業時間を柔軟に決められるようになる。

県人事課によると、必ず働く時間帯「コアタイム」として午前10時~午後3時を設定。その上で午前7時~午後10時を始業・終業時間に設定できる。週1日に限り勤務時間を割り振らない日を設けられ「週休3日」も可能となる。

 制度の利用は職員が選択する。従来通り、午前8時半~午後5時15分の勤務や時差出勤、在宅勤務なども選ぶことができる。県議会3月定例会で関連条例を改正し、26年度からシステム改修を進める計画。同課は「公務運営に支障がないことが前提。生活の質の向上や健康確保、能力発揮に生かしてほしい」とする。

 その他に県は4月から、現在正午からの1時間を基本とする休憩時間に、午前11時半と午後0時半開始の区分を新設する。27年10月からは、子の送迎など時間的な制約がある育児や介護を担う職員に配慮し、休憩時間を45分間まで短縮することも可能とする。

これはすごいいい記事だと思います。なにより、子育て・介護を行っている人には朗報だと思います。でも、気になることがいくつかあります。ランダムに書きます。

まず、第一点に「土曜日・日曜日」の扱いはどうなるのでしょうか。役所ですから週休2日制です。例えば、子育て共働き夫婦で、普段の日は1日6時間労働として、土曜日・日曜日に休日出勤10時間をして、週40時間制を確保するといったことは可能でしょうか? 休日労働は、残業代の割増等で通常の残業とは違う考えをとります。フレック制度の清算時間に休日労働を含めるかどうか(ただし、「法定休日」として週1日は必ず休むとします。ここで問題にしているのは「所定休日」のほうです)。これは、労働者にとって、メリットとデメリットがあります。休日出勤を清算時間に含めた場合は「休日出勤の割増賃金が支払われない」ことが懸念されますが、労働時間の柔軟性は増します。その逆の場合もあるということです。

気になる点の第二番目は、どうしてもこのような変化を受け入れられない者が組織の中に一定数いるということです。彼らは次のように主張します。「自由な出退勤を認めたら、他の者に負担がかかる」 これ、有給休暇取得でも、育児休暇取得でも、一定数必ずこういう人っているんですよね。まあ、主張したくなる気は分かるけど、「負担がかかる」かどうかの客観的な指標は結局「労働時間が増えたかどうか」しかないのだから、一人当たりの労働時間が増えたなら、その部署の残業代が多くなり、管理職とその企業の対処が問題となるだけなんですよ。「負担がふえる」ということを言うべきなのは管理職なのであって、そしてそれを言う相手は組織の上ということになるので、職場の同僚が言うべきではないと思います(もちろん感情的な部分は別)

さて、このブログも10年間続けてきて、ついに11年目に突入します。この10年、色々なことがありました。10年前に神奈川労働局を退職した時は、労働安全衛生コンサルタントとして喰っていけるのかと心配でしたが、なんとかなりました。このへんで休みを取りたくなりましたので、ひと月ほど休みます。再開は5月の予定です。

役所の非常勤職員

(山梨県立美術館のカフェ、by T.M)

毎日新聞 3/10

非正規で働く公務員の「会計年度任用職員」の雇用問題に取り組んでいる労組が、非正規公務員から寄せられた労働相談の内容をまとめた。相談内容はハラスメントが最多だったが、仕事の雇い止めやサービス残業などが重複して起こっているケースが多く、担当者は「(非正規雇用の)制度や職場慣行に起因する構造的な問題だ」と指摘している。

 相談内容をまとめたのは労働組合の全国組織の全労連。昨年12月に、非正規公務員を対象にした全国一斉の電話相談を実施した。380件の電話があり、うち172人の相談に応じた。そのうち分類可能な相談100件(複数回答有り)を分析したところ、相談が最も多かったのがハラスメント(パワハラ、モラハラなど)で58%。次いで、雇い止め・更新拒否(46%)▽賃金不払い・サービス残業(39%)▽長時間労働・業務過多(34%)▽正規・非正規の格差(31%)――などだった。ハラスメントの相談の多くは、雇い止めや賃金不払いなどと重複してあった。

 ホットラインに相談した沖縄県の公立図書館で非正規の司書として働く女性(45)は、8年間続けた仕事を3月末で雇い止めになると通告された。役所は図書館職員を公募するとし、女性らが応募したが、不合格とされ雇い止めにされた。女性の他にも10年以上の経験があり、図書館運営の中心で働いていた非正規の司書も不合格で雇い止めとされた。専門職だが、募集要項に資格要件はなかった。女性は「自分の勤務評定も含め、なぜ不合格なのかは一切明らかにされない。専門職を低賃金で雇用不安の中で働かせるのは許せない」と話した。

 ほかにも、「月20時間も残業しているのに残業代が支払われない」(学校栄養職)や「正規の先生に『あの人は先生ではないから』と生徒の前で言われた」(非常勤学校講師)など多数の相談があった。

 同労組の黒沢幸一事務局長は「非正規公務員が置かれている1年雇用などの不安定な立場が、ハラスメントや違法な労働慣行を生む温床になっている。制度の改善が必要だ」と話している。

労働基準監督署で臨時職員の採用の面接官をしたことがあります。その時に困ったのは、「職を探している子持ちの訳あり女性」とか「50歳で失業して職を探している人」等について採用を控えなければならなかったことです。どれだけ優秀な方でも、意欲溢れている方でも採用しませんでした。なぜって、「責任がもてない」からです。これは、組織の暗黙の了解でもありました。

面接官としては困っている人を採用したいんですよね。でも、契約期間が最初から決められています。もし採用して、どうしても契約を更新たいと思っても、予算の申請を毎年行わなくてはならず、それが通るかどうかは分かりません。そんな不安定な職に、安定した職を切望している方を採用できないのです。

だから、採用するのは「以前は企業で働いていた専業主婦で子育てが終わり小遣い稼ぎで働きたい人」とか、「年金もらっているが、時間つぶしに働きたい高齢者」が多くなってしまうんです。

一番、採用したかったのは65歳以上の行政OBです。退職直後の60歳前後のOBで、非常勤職員に応募というのは、何か本人に問題があるケースがあることが多いのですが、65歳になって第二の就職先も定年となった優秀なOBは、仕事が分かっている人が多いので大歓迎でした。採用担当者としては、複雑な気持ちでした。

さて、上記の新聞記事についてですが、「労働条件の運用」については働く人の希望を受け入れ正規職員より柔軟に、そして場合によっては正規職員より良い労働条件を示すべきであると思います。しかし、「安定した継続雇用」となると、なかなか難しいというのが雇用する側の本音であるような気がします。

高齢者の労働災害防止

(笛吹川フルーツ公園・山梨市、by T.M)

つくづく厚生労働省の安全衛生部局はアピールすることが下手だなと思います。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/newpage_00010.html

高齢労働者の労働災害防止のために、企業が高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善等を行うことが、今年の4月1日から義務化されます。このための労働安全衛生法の改正について、1年前に公表されましたが、企業が行うべき具体的な措置内容については、労働安全衛生法第六十二条の二の第2項で、 「厚生労働大臣は、前項の事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする」と規定され、後日に発表される「指針」に委ねられることになりました。

その指針が上記のリンク先ですが、4月1日から法の施行が始まるのに、指針の発表が2月10日です。企業はこの法改正について、この短期間にどのように対応しろというのでしょうか。

さらに言うとこの「指針」って、これからの高齢化社会について、けっこう重要なものだと思うのですが、どのマスコミも取り上げていません。なぜかと思ったら、厚生労働省のHPの「報道発表資料」には、この「指針」についての掲載はありませんでした。

官報とHPに掲載したとしても、改めて「報道発表」しなければ、マスコミは取り上げてくれないでしょう。本当にアピールが下手だと思います。

実はこのようなことが昨年もありました。熱中症対策の義務化が昨年の6月1日から始まったんですが、詳細のリーフレットを待っていたら公表されたのは4月の終わりでした。

厚生労働省の安全衛生部局が多忙なのは分かりますが、その政策は労働環境を根本から変えていくものですから、情報の伝達は、もっと積極的に行って欲しいと思います。国民は期待しているのですから。

裁量労働制への提言

(シマリス・智光山公園こども動物園、by T.M)

毎日新聞 2/20

高市早苗首相は20日の施政方針演説で、あらかじめ決めた時間を働いたとみなす「裁量労働制」の見直しに言及した。高市首相は昨年10月の就任時、上野賢一郎厚生労働相に「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和検討」を指示しており、具体策を示した形だ。裁量労働制を拡大する方向で検討を進めるとみられる。

 裁量労働制には、システムエンジニアや記者、証券アナリストなど20職種が対象の専門業務型と、所属企業の事業運営の企画・立案などが対象となる企画業務型がある。仕事の手段や時間配分などは労働者に委ねられる。実労働時間に関わらず、あらかじめ決めた時間を働いたとみなすことから、長時間労働を助長しかねないとの指摘がある。

 高市首相は20日の衆参の施政方針演説で、「働く方々のお声を踏まえ、裁量労働制の見直し、副業・兼業に当たっての健康確保措置の導入、テレワークなどの柔軟な働き方の拡大に向けた検討を進めます」と述べた。

 裁量労働制の拡大の是非は、昨年から労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で議論されてきた。経団連は過半数労働組合がある企業での拡大を求めているが、連合は「(長時間労働を防ぐ)働き方改革の趣旨に逆行する」として強く反対しており、議論は難航しそうだ。連合の芳野友子会長は19日の記者会見で、「実際には業務量や労働時間の配分が自分で決められない」といった現場の声を紹介し「制度の拡充ではなく適正運用の徹底を」と訴えた。

 政府は今後、首相直轄の日本成長戦略会議や労政審で検討を進める方針だ。

この記事を読んでふと思いました。

「高度プロフェッショナル制度」と「裁量労働制」の違いって何だろう?

高度プロフェッショナル制度とは、特定の高度な専門知識を持つ高収入の労働者を対象に、労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金に関する労働基準法の規定を適用しない制度である。裁量労働制とは、労働時間を労働者の裁量に委ねる雇用形態であり、労働基準法の規定は適用となるので残業代は支払われる。

こんなことを問題としているんではありません。両者とも労働者に長時間労働をさせるのに、(事実上)残業代を支払わないずるい制度であることには変わりないじゃないかと言いたいのです。

私は、「裁量労働制の拡大」には反対です。悪用する連中が必ず出てくるからです。「フレックス制度の拡大」で十分だと思うからです。

でも、世の中には「時間を気にせずにもっと自由に働きたい」という奇特な方もいらっしゃる事は事実です。そして、その奇特な方が世の中を変えていく可能性を多く持つという事も事実です。

そこで提案です。「裁量労働制」を適用される労働者に「最低年俸制」あるいは「最低月給制」を導入することはどうでしょうか。「高度プロフェッショナル」で既に導入されている最低年俸は1075万円です。裁量労働制が適用される労働者には、最低月給100万円とするなら、きりがいいと思います。いえ、いっそのこと労働基準法第41条で規定する「管理監督者」についても、それくらい払うように法律で規定してみたらいかがでしょうか。残業代ゼロなら、それくらい当然です。