カスハラ

(三段式スイッチバックが見られるJR木次線の出雲坂根〜三井野原間の風景、by T.M)

11/11 東海テレビ

愛知県美浜町の職員にカスタマーハラスメントをしたとされる住民に対し、損害賠償を求め提訴を辞さない構えです。

美浜町によりますと、住民の男性(60代)は2019年ごろから、役場のほぼ全ての部署に対して、窓口や電話で「お前たちは嘘つきだ」と暴言を吐くなどカスハラ行為を続けていたということです。

今年4月以降には、およそ800件の暴言が確認されました。

職員から「何とかしてほしい」と要望を受け、町は11日に臨時の議会を開き、対応した職員の給与相当額にあたる400万円の損害賠償を求めるなどの議案を提出し、全会一致で可決されました。

以前にも書いた話なんですが、私がF労働基準監督署に勤務していた時のことです。労働基準法違反を申告してきた女性が、現在で言うカスハラをする方でした。朝9時にその方から電話があったのですが、ちょうど私が外出しようとしている時でした。そこで、しばらく前に雇用した非常勤職員(60歳以上男性)に要件を聞いておくように指示して出張に行きました。午後3時半にかえってきても、その非常勤職員が電話を続けているようなので事情を尋ねると、朝から電話が続いているとのことでした。あわてて、電話を替わって、終わらせましたけど、その非常勤職員はメンタルをやられクタクタになっていました。あの時の非常勤職員には本当に申し訳ないことをしたと思います。

今の時代なら、「非常勤職員1日分の賃金」を請求をすることができるのかな、なんて思います。

また、こんなこともありました。こんどはT労働基準監督署でしたが、やたら告訴状をもってくる人もいました。労働基準監督署というところは、告訴状を持ってこられたら、供述調書(告訴調書)を作成しなければならないのですが、それが「休憩が15分短かった」とか「残業代が10分ついていない」等の微罪ばかりで、時間ばかりとられていました。

ある時から、その人は姿を消しました。いなくなる直前に、深夜に監督署の留守電に4時間ばかり、監督署の悪口が吹き込んでありました。あとから事情が分かったんですが、飲み屋で知り合っただけという「ヤクザ」の名前を使って事業主を脅したところ、後からそのヤクザから本人に電話があり、あわてて夜逃げしたということでした。

労働基準監督署には、「ヤクザ」や「暴力団」みたいな方がやって来てたいへんだろう、という人もいますが、お金目当ての人はあまり監督署に迷惑はかけません。監督署の業務は、いわゆる「利権」がからむことがないので、金にならないことが分かると、この手の人はさっさと手をひきます。(労災保険関係の不法行為をする人は別です)。

業務妨害をするのは、「孤独な人」や「さみしい人」です。あたるところがなくて、行政機関にからむのです。それがわかっていても、何もできないのが役所です。

来週はブログ休みます。寒くなって来たこの時季に、甲府の山の中の事業所まで出張に行ってきます。ブログ再開は11/30です。

通勤手当

(石州瓦の民家・島根県木次市、by T.M)

朝日新聞 9/20

東京都八王子市は19日、市職員97人が通勤手当を不正に受給していたとして、計1671万円分が返納されたと明らかにした。実際の不正受給額が確定し、調査が終わり次第、関わった職員を処分する方針。

 市によると、都内の自治体で昨年、同様の問題が相次いだことを受け、調査を実施。市の正規職員約2700人のうち、昨年9月時点で公共交通機関を利用すると届け出た1111人を対象に、聞き取りなどで実態を調べた。その結果、166人の職員が、バスや電車の定期券を購入せずに徒歩で通勤していたり、届け出た通勤経路とは違うルートだったりしたことが判明。このうち、届け出と実態が大きく異なる97人の職員に対して返還を求め、昨年末までにバスや電車の定期代計1671万円が市に返納されたという。最長5年半、計135万円を受給していた職員もいたという。

 多数の職員が関わり、一部区間の不正も含まれているため、調査に時間がかかっているとし、市職員課の担当者は「急いで調査を進め、職員の処分については厳正な対応をしたい」と話している。

これけっこう難しい問題なんですよね。「実際は近くに住んでいるのに、遠方の親の家から通っていることにして、通勤手当をごまかしもらっていた」こんな分かりやすい事例だといいんだけど、実際は「普段は健康のため歩いていました。雨が降ったらバスに乗ってました」みたいなことが多いと思います。「バスに乗った分だけ請求すればよい」なんて簡単に思う人は、総務・経理系の仕事をやったことなない人。業務簡素化に逆行することは明らかです。

このように通勤方法が何通りかある人にとって一番問題なのは、「通勤途上の災害(通災)」が発生した場合です。通常の通勤経路で被災すれば通災となりますが、それ以外はダメです。通勤手当の不正受給がなされていた場合、通常の経路(不正経路、徒歩)で事故がおきても、「バスを使っていないからダメだ」と言われかねないです。これ、けっこう大きなことですよ。

通勤災害と労働災害の労災保険の補償の内容は同じです。そして、労災保険とは他の社会保険と比較し手厚い補償となるケースがあり、若くして働き手をなくした一家への遺族年金保障等で大きな違いがでることがあります。ケチ臭い通勤手当の不正受給をして、このような補償が受けれなくなることは馬鹿馬鹿しいものです。

(注)労災と通災の違いは、労働基準法第19条に規定される「解雇制限」が適用されるかどうかです。

ストレスチェック

朝日新聞 10/28

連合の芳野友子会長は25日、鹿児島市での連合鹿児島の定期大会に来賓として出席し、高市早苗首相が指示した労働時間規制の緩和の検討について、「長時間労働によって尊い命が失われた事例を忘れてはならない。長時間労働を積み重ねれば生産性が上がるかのような言説に惑わされることなく、すべての働く者の幸せを追求していただきたい」と牽制した。

 芳野会長は報道陣に対し、「働き方改革関連法の目的は過労死ゼロとワーク・ライフ・バランス。過労死、過労自死が減っているわけではない実情を見て取り組んでいただきたい。今の状況は看過できない」と説明した。

過労死には2種類あります。「脳・心臓疾患」系のものと「精神障害」系の2種類です。このうち、「脳・心臓疾患」系は生活習慣病が、そして「精神障害」系はストレスが大きく影響します。「脳・心臓疾患」系は脳梗塞や心疾患を引き起こし、ストレスは適応障害等を引き起こし自殺等の原因となります。上の図で分かるように、過労による労災認定で増加しているのはストレスに起因するものです。

生活習慣病に由来する脳・心臓疾患については毎年の定期健康診断の結果からセルフチェックを行うことが最大の予防策だと言われています。それに比較しストレス性の疾病については、実は何の対策もたてられないのが現状です。ストレスチェックでストレスの重篤度が可視化されても、対策が実施されないのが現状です。

ストレスチェックには3つの目的があります。

第一 職場における当該労働者の心理的な負担の原因
第二 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状
第三 職場における他の労働者による当該労働者への支援

第一は仕事の内容や仕事量がマッチしているかどうかのチェックであり、第二は「病気」等の不安を本人がもっているかどうかについてであり、第三は職場の人間関係によるストレスがどのくらいなのかのチェックです。

この中でどうしようもないのが、第三番目の「職場の人間関係」です。「パワハラ」「セクハラ」は見えやすいんですが、「なんとなく悪い」という人間関係はどうにもなりません。

さて、冒頭の芳野会長の言葉なんですが、労働時間を減らして確実に効果があるのは「脳・心臓疾患」系の過労死についてであり、「精神疾患系」の過労死についてはほとんど効果がないのが実態です。

好きな仕事を良い人間関係と満足な労働条件でやっていれば、何時間残業しても「ストレス性の過労死」にはなりません(「脳・心臓疾患」系の過労死は別)。逆に嫌な仕事を嫌な奴と不満足な労働条件で仕事をすれば、すぐにメンタルはやられます。

労働時間を短縮し、労働者が豊かな時間を持つことには賛成です。でも、現代で「過労死」が増えているのは、単純な長時間労働だけが原因ではないような気がします。難しい問題です。

コラム

(神社のようなJR木次線出雲横田駅、by T.M)

何か忙しいです。前に書いた来年1月からの雑誌(3万部くらい)の1年間連載の第1回目の原稿と、1年間の連載の計画を11月1日までに持って来いと言われています。

ブログ書く暇なくて、来週休むかもしれません。

今週も書くことないんですが、考えてみたら雑誌出している災防団体のHPに何回かコラム書いているんで、それを紹介しすることにしました。

https://www.jisha.or.jp/info/campaign/chemicals/column.html

ここのコラムは何回か書いているんで、この手を今後も使うかもしれません。

そんな訳で、来週ブログは休みます。再開は11月2日です。

高市さん

(八岐の大蛇を退治する須佐之男命のシーンを表した石像・島根県木次市、by T.M)

讀賣新聞 10/4

自民党の高市新総裁は4日、選出後の党所属国会議員へのあいさつで、「ワーク・ライフ・バランス(WLB)という言葉を捨てる。働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく」と抱負を語った。党所属議員には「馬車馬のように働いてもらう」とも呼びかけた。

 重責を担う意気込みを示したものだが、続いてあいさつした石破首相は驚きを隠せず、「はっきりWLBをやめたと言われると、大丈夫かという気がしないではないが、決意の表れだと思っている」と語った。

私は高市さんの総理就任に期待しています。でも、これやっぱ失言じゃないかなと私は思います。「働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく」のところはいいんです。私は高市総理のそういうところを尊敬しています。これは、総理にほぼ100%就任する高市さんの決意であり、けっして「部下に長時間労働をさせる」なんてことは考えてはいなかったと思います。

でも、「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てる。」という言葉は失言であると思います。

シチュエーションを変えて考えてみます。民間企業で新社長が就任したとします。その社長が就任挨拶で、「私はワーク・ライフ・バランス(WLB)という言葉を捨てる。」と言ったら、これから育児休暇をとろう「男性」職員はどう思うでしょうか。そんなことを気にしない人ならいいのですが、私のように気が弱いものは、「同調圧力」にすぐ屈してしまうと思います。

そんなことを思いここまでブログを書いていたら、こんな記事が飛び込んできました。

沖縄タイムス 10/9

息子が出演する音楽ライブへの参加で東京に滞在していたため、奥間綾乃那覇市議(47)は8日、市議会最終本会議を欠席した。一身上の都合で欠席届を出していたが、この日は議案の採決などがあり、複数の市議から疑問の声が上がった。

 市議会会議規則によると、議員は疾病や育児などのやむを得ない事由で出席できない場合は、理由を付け事前に届け出る。

 ライブは本会議前夜の7日に開催された。奥間氏は「めでたい祝いの席であいさつ回りなどがある。どうだこうだと騒ぎ立てる人たちがいるから、欠席届を出して堂々と休んでいる」と話した。

 坂井浩二議長は市民や複数の市議から指摘を受け、7日に奥間氏に電話で沖縄に戻るよう伝えていた。「病欠や育児、介護ならやむを得ないと理解できるが、公職の身なので説明責任が求められる。出席しなかったのは残念」と述べた。

やっぱり、私はこの人より高市さんの方が好きです。