ブラック企業とモンスター相談者(1-5)

CA3I0699
CA3I0699

(M氏寄贈)

実名入りの情報提供でありましたが、会社には誰が情報を提供したか分からない様にして欲しいとのことだったので、どのような手法で臨検監督をするかを打合せすることとして、彼女に連絡しました。

情報提供者を匿名とするだけでなく、情報があったことさえ隠す訳ですから、このようなケースでは、定監を装い監督を実施します。例えば、「パトロールで来ました」とか「店舗開設なので、説明に来ました。労務関係の書類を見せて下さい」と監督の時に説明します。

申告者と申告内容の確認の件で電話で話しをしていて、私が感じたことは、「何と、責任感の強い方なんだ。」ということです。自分の労働条件の不満については、何も話さず、雇入通知書が交付されない部下の心配ばかりをしていました。
私は、彼女と打合せをし、次の手順で臨検監督を実施することとしました。

①Y駅に駅ビルに新規出店した店舗の監督と言うことで、まず店舗を訪問する。その時、申告者と私の顔合わせをする。
②その店舗には、人事労務関係の書類は何も置いていないので、申告者(店長)は本店に連絡し、店舗に監督官が訪問したことを伝える。私は、本店担当者と話しをし、臨検監督の主旨を伝え、後日、本店から担当者が関係書類を持参し、監督署まで来てもらう。

そのような手順を決め、訪問日まで決めてあったところ、直前に申告者から電話がありました。彼女は泣きそうな声でこう述べました。
「私、解雇されました。」

事情を尋ねると、その日大阪の本店から人事の担当の方が来て、パートの人全員と申告者に対し
「来週いっぱいで店を閉めるから、その後は来なくてよい」と言われたそうです。
担当官である私は、突然の話に驚きながら、もはや「雇入通知書」の段階ではないと判断し、次のことを確認するように彼女に指示をしました。

第1 誰か代表で会社に事情を尋ねること。ただし、「誰か」といっても結局は店長であるあなたがリーダーとして、パート全員を引っ張っていくしかないだろうから、その覚悟をすること。

第2 どうしても閉鎖ということ決定であるなら、「解雇予告手当」及び「失業手当」の事務手続はどうなっているのか、会社に尋ねること。