(M氏から)
私は、少し脅かしました。
「ハローワークは3ヶ月契約ということを知らないで、御社を紹介した訳ですか。ハローワークは公的機関ですから、今後の御社の求人に差し障りがあるかもしれませんね。全国組織ですからね、神奈川も大阪も一緒ですよ。」
担当者は無言でした。明らかに、動揺しているようでした。
私はここで、切り札を切ることにしました。
「実は、御社の店長は依然から、当労働基準監督署に相談に来ていたんですよ。」
「えっ」と担当者は驚いたような顔をした。
私は続けた。
「部下のパートさんが、雇入通知書をもらえないということで、こんな手紙をくれました。その手紙ですが、当署の受理印を見て下さい。あなたが、閉店の件をパートさんらの従業員に確認したという日の前に、その手紙は当署に届いています。おかしいと思いませんか。もし、御社の言っていることが本当なら、この手紙の相談内容のどこかに、そのことが触れられているはずでしょ。でも、それが一切ないということは、店長さんは、この手紙を書いている時に、閉店のことなど思いもよらなかったということではないですか。」
担当者は、1、2分無言でした。そして、本社に電話をしてくると言って、席を外しました。大分、動揺しているようでした。私は、この手紙が「解雇」を証明する直接の証拠になりえないということを相手が気付くのではないかと思い、内心は冷汗ものでした。
担当者は20分くらいして、戻ってきました。そして、早口で話しました。
「本社と話したのですが、慰労金ということで働いていた人たちには、ひと月分の賃金を支払うことにしました。」
「すると、解雇を認めるのですか。」
「解雇は認めません。ただ、店長さんを含め、皆さんよく働いてくれたので、ひと月分の手当を支払うと言っているのです。支払日は閉店の日です。皆さまの銀行口座に振込みます。」
私は、心の中で、申告者の損得を考えました。。