(五十里(いかり)ダム・日光市川治温泉,by T.M)
ちょっと間違っているなと思えるニュース記事を見つけました。
フェイクニュースとまでは言えないけれども、恣意的に人々の不安を煽っているようなニュースです。「日刊ゲンダイ」の2月7日の記事です。
次のようなものです。
*************
厚労省が公表している「新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQ&A(2月4日時点版)」によると、<2月1日付けで、新型コロナウイルス感染症が指定感染症として定められたことにより、労働者が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、都道府県知事が就業制限や入院の勧告等を行うことができることとなりますので、それに従っていただく必要があります>とあり、
―(略)-
さらに<新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか>との問いに対しては、こうある。
<新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、欠勤中の賃金の取扱については、労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。なお、賃金の支払の必要性の有無等については、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきものですが、法律上、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う必要性の有無については、一般的には以下のように考えられます>とし、<新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません>と明記されている。
要するに新型肺炎に感染しても休業補償はなしということ。会社を休む場合は有給休暇や欠勤扱いというわけで、これでは、仮に感染が分かっても内緒で通勤するサラリーマンがいても不思議ではない。
厚労省の指針は今後、変わる可能性があり、あくまで現時点だが、政府にはスピード感を持って対応してほしいものだ。
(以上、新聞記事)
******************
中国に進出している日本の自動車メーカー等は、現在操業停止としているところが多いようです。
私は、今回のウィルス事件で、日本でも中国同様に、ウィルスの感染を恐れて工業の操業停止になった場合の労働基準法第26条の休業手当の支払いについてはどう判断すれば良いのかと疑問に思っていました。
この新聞記事は、厚生労働省が「休業手当を支払う必要がない」という指針を示したように印象操作しています。
その指針を調べてみました。次のものです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html#Q3
同指針では
① 企業が操業停止になった場合の休業手当の支払いについて
② 労働者が、コロナウィルスに感染した時に、企業が休業を命じた場合の休業手当の支払いについて
の2項目について回答しています。この2つは別々の問題です。
ところが、新聞記事では、この2つの項目の文章をつなぎ合わせて、
「感染が分かっても内緒で通勤するサラリーマンがいても不思議ではない。」
という結論に持っていっています。要するに、行政が間違っているということを主張したい訳です。
ちなみに、同指針では次のように記載されています。
① 工場停止の場合、企業の休業手当の支払いの必要の有無はケースバイケース
② 労働者がコロナウィルスにり患して休業した場合は、休業手当の支払いは不要。(これは、以前から当たり前にことです)
さらに、同指針では、②のコロナウィルスにり患し、欠勤した労働者については、次のように説明しています。
「被用者保険に加入されている方であれば、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、傷病手当金により補償されます。具体的な申請手続き等の詳細については、加入する保険者に確認ください。」
つまり、社会保険に加入している労働者については、休業手当でなく傷病手当金が支給されることが明記されているのです。
別に、厚労省の肩を持つ訳じゃないけど、結論ありきの報道ではなく、正確にして伝えて欲しいものです。