
(旧信越本線横川〜軽井沢間の眼鏡橋、by T.M)
朝日新聞 11/7
働く高齢者の増加で労働災害も増えているとして、厚生労働省は高齢者に配慮した作業環境の整備を企業の努力義務とする。6日の労働政策審議会の分科会で、労使が大筋で合意した。厚労省は2025年の通常国会に労働安全衛生法の改正案を提出する方針。
努力義務とする対策としては、段差の解消や手すりの設置のほか、高齢者の体力や特性に配慮した作業内容の見直しなどを想定している。定期的な健康診断や体力チェックの継続的な実施も求める。同法に基づく指針も定める方針だ。
人手不足などを背景に、高齢の労働者は増えている。65歳以上の労働者は、23年は約914万人で過去最多を更新した。厚労省によると、労働者全体に占める割合は、23年は50歳以上が41.4%、60歳以上が18.7%まで増えた。
私が一時期安全衛生の顧問をしていた会社の話です。そこは全国に30工場を展開していて、私は関東・東北の10工場を年3回パトロールをしていました。一昨年に、その会社の労働災害の分析を依頼され、全国の工場で発生した労働災害を確認したところ、現代を象徴するような労働災害が、7月のある日に2件発生しました。
1件目は東北工場で発生した災害です。工場には夜勤があり、夜勤明けの午前5時にその災害は発生しました。夜勤明けの職員が、帰宅しようとしてクルマ(軽自動車)に乗り、会社の駐車場から出ようとしたところ、自転車で出勤してきた22歳の男性職員と駐車場内で衝突し、22歳の職員は自転車と一緒に転倒したという事故でした。この事故により、22歳の職員は、打撲となりましたが休業は0日でした。
2件目の災害は、1件目の災害からちょうど12時間後の午後5時に、湘南工場で発生しました。その工場ではベルトコンベヤーの調子が悪くてメンテナンス担当の職員が屈みこみながら修理していたのですが、就業時間終了のチャイムを聞いて、あせっていました。そこへ、1日の作業を終え、やれやれといった具合の62歳のパートタイマーの女性が更衣室に向かい歩いてきました。急いで作業をしていたメンテナンスの職員がいきなり立ち上がった拍子に、後ろを歩いていたパートタイマーの女性と衝突してしまいました。女性は尻餅をつくと同時に手を床についたのですが、手首を骨折し休業2ケ月の災害となってしまいました。
さて、ある会社で一昨年の7月に発生した2件の災害ですが、これは何か現在の職場環境を象徴していませんか?22歳の若者は自転車に乗っていて、軽自動車と衝突し、捻挫で休業0日、かたや62歳の女性は急に立ち上がった男性と衝突し、手首骨折休業2ケ月。きっと、こんなことが日本中のあらゆる職場で発生しているのでしょう。高齢者の災害は些細なことが、重篤な結果となるのです。