ウーバーイーツの累進歩合制度

(夕暮れの横浜ベイブリッジ、by T.M)

先月末に宴会を開いて社会の顰蹙をかった厚労省の老健局で、宴会に参加していなかった職員も含めてクラスターが発生しているそうです。宴会が原因であるかどうかは判明していませんが、これって「公務災害」となるのだろうかとふと思いました・・・

今日はこのブログで何回か取り上げた「ウーバーイーツ」の話です。私は以前に書いたように、このウーバーイーツでの働き方を快く思っていません。働く人を「労働者」扱いしていないので、「労災保険の適用」がなく、事故がおきてケガをした時に、働く人本人がその費用を負担しなければならないことに腹を立てているのです。最近は、ウーバーイーツが働く人に保険加入を奨励しているようですが、その「保険」は労災保険のように、「遺族年金」が支給されるほど手厚いものなのでしょうか?

さて最近web上で、ウーバーイーツについてある噂を聞きました。噂の真偽は分かりませんが、その噂とは次のとおりです。

ウーバーイーツには、指定された期間内に一定の回数を超えると支払われる、「クエスト」と呼ばれるインセンティブボーナスがある。

月・火・水・木の4日間もしくは金・土・日の3日間の配達回数によってボーナスがもらえる仕組みである。配達員は「日またぎインセ」と呼んでいるが、この期間に配達する回数プランを選択する。

25回、35回、45回といった回数プランがあるが、100回だと2万円程度の報酬が上乗せされる。ただし、75回プランを選び、74回しか配達できなければインセンティブは出ない。

このような、「歩合給の額が非連続的に増減する」制度を、労働法制の世界では「累進歩合制度」と呼びます。そしてこの「累進歩合制度」は、労働者の過重労働の温床になるものとして、業界によっては規制されています。

私が監督官をしていた時に、タクシー業界でこの制度を採用していた事業場を確認すると、制度中止することを行政指導するとともに、国交省に通報していました。通報をうけた国交省でも後日調査し、認可取消しを含めた強い指導を行っていたと聞きます。

(注)労働局は「累進歩合給」を辞め、「積算歩合給」とするように指導しています。これは、運賃収入等の増額に応じて歩合率を高く設定する制度で、累進歩合と似ている様な気がしますが、「賃金が連続的に増加」することが、非連続に増加する累進歩合給との違いです。

この累進歩合制度を本当にウーバーイーツが採用していたとするなら、最近話題になっているウーバーイーツ配達員の交通ルールの無視等の原因のひとつが、この報酬制度にあるような気がします。実際、タクシー業界で累進歩合制度が禁止されたひとつが、運転手の交通事故が増加したためだと聞いています。

累進歩合制度はどんな形態をとっていても、それは過重労働、交通事故の原因となるため、運用の見直しをすべきと思います。

さて来週の日曜日はゴールデンウィーク真っ只中です。非常事態宣言中で、私はどきにも行く予定がないのですが、アマゾンプライムとネットフリックスを観まくるつもりです。そんな訳で5月9日までは更新しません。

それではみなさん、コロナに注意し、良い休日をお取り下さい。

(休日なく働く、医療関係者やエッセンシャルワーカーの方に心より感謝します)

10年目!

(新型ポルシェ911・ポルシェ   センターみなとみらい、by T.M)

東日本大震災・・・あれから10年ですか。時がたつのは早いものです。

地震と遭遇したのは、当時勤務していた役所(JR新横浜駅)から約8km離れたJR中山駅にいた時のことです。JRが停まってしまったので、出張先からまずは役所まで歩きました。役所に帰ってきてみると、帰りの電車も動いていなかったので、私はさらに16kmあるいて、横浜地下鉄の上大岡駅まで歩きました。つまり半日がかりで24km歩いて家まで帰ってきた訳です。帰ってくる時に、横浜市内の主要道路を歩いていて気付いたのだですが、大きな交差点では警察官が手旗で交通整理をしていました。非常時の訓練が行き渡っていたのだろう、頼もしく思えました。

震災から20日後、神奈川労働局から初めて、現地のお手伝いということで私が石巻労働基準監督署へ行くことになりました。鉄道は寸断されていたので、バスを乗り継いでの移動です。当時は、新宿駅でなく臨時に東京駅からバスが発着していました。そこから11時間かけて、石巻まで行ったのですが、街中はまさにガレキの山でした。

監督署には、「会社や工場が流されてしまい」賃金不払いが発生していることを、ようやく問題とすることができた人たちがたくさん押しかけてきていて、あの時くらい懸命働いたことなかったなと思えます。

そういえば、一緒に働いていた地元の職員がこんなことを言ってました。「今は、みんな手助けしてくれるけど、やがてはいなくなる。その時までに、自立しなければならない」

東北のうまい酒と魚とコメは手に入るようになったけど、復興はまだまだ、道半ば。全ての人が、あの日のことを思い出と語れる日が来ることを願います。

さて、今日はまた思い出話です。

ある中小企業のサービス残業を指摘したところ、事業主が次のように反論しました。

「みんなバスを待つのに、事業場に残っているんだ。寒い中、バス停で待ちたくないからな。そんな時間まで残業代を払わなければならないのか」

調べて見ると、確かにバスの発車時刻は5時45分で、みんな5時30分ぐらいまで残業をしていました。それを事業主は残業と認めなかった訳です。事業主はさらに続けました。

「業務終了の5時になったら、みんなにタイムカードを打刻して、事務所の中でバスを待ってもらいます。」

私はそれは、絶対にダメだと言いました。結局、「タイムカードに客観的な労働時間記録」と「残業の自己申告制」ということで残業管理をしていくことにしました。労働安全衛生法により、タイムカード等により労働時間の把握が義務づけられた現在において、あの事業場は今どのように時間管理をしているのでしょうか。

私が何を言いたいかと言うと、先週のこの記事です。

女性職員、バス乗るため2分早く「退勤」…記録ごまかし316回

3/11(木) 6:59配信、読売新聞

 千葉県船橋市教育委員会は10日、1年9か月間で316回、勤務終了前に退勤しながら、他の職員に頼んで正規の時間に退勤したように記録させていたとして、生涯学習部の課長補佐級の女性職員(59)を減給10分の1(3か月)の懲戒処分とした。

 発表によると、出先機関に勤務する女性職員は、帰宅時に最寄りのバス停から午後5時17分に出発するバスに乗るため、正規の退勤時間の同5時15分より2分程度早く退勤する行為を繰り返していた。バス停は職場から徒歩3、4分で、後続のバスの出発時刻は約30分後だったという。

 同様に勤務時間終了数分前の退勤を繰り返したり、依頼を受けて退勤時間の記録を変更したりした正職員1人と会計年度任用職員6人も訓告や厳重注意処分を受けた。

これ労働者に同情的な声もネット上にあるけど、これは絶対に許せない行為です。

「バスに乗るために2分早退した。」

ということを認めることは

「2分くらいのサービス残業は仕方がない」

という主張を認めてしまうことになり、かえって労働者への不利益となります。

タイムカードの不正打刻はさらに重大です。タイムカードの打刻時間イコール残業時間とならないのは、先の私の事例のとおりですが、過労死の防止等について言えば不正打刻は絶対にやってはならないことです。

「事業主のタイムカードの改ざん」を許してならないように、「労働者が労働時間の記録を改ざんすること」は当然懲戒処分の理由となります。

労働時間の適正管理については、事業主と労働者が対等に義務があるということを強調しておきます。

TVタックル

(紫色のマツムシソウ・乙女高原、by T.M)

次のような記事を見つけました。女優の井上さんが、コロナに罹患した時に、保健所の職員の対応が悪かったと主張しています。その記事を読んでいて、労働基準監督署に勤務していた頃の相談者との電話対応を思い出しました。それを書きます。まずは記事の紹介をします。

スポニチ 3月1日(全文引用)

女優の井上和香(40)が28日放送のテレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」(日曜正午)に出演。自身が新型コロナウイルスに感染した時の保健所の職員の対応に不満がぶちまけた。

 井上は昨年12月29日に陽性と診断され、軽症と診断され、自宅療養に。先月18日に一定の経過観察期間を経て、体調も回復したことを受け、活動再開の報告をした。

井上は、復帰直後のインタビューで「保健所さんから『入院されますか?』と聞かれると、『どうなんでしょう』と。『このくらいの症状なんですけど、どうしたらいいですか』となると、『じゃあ一度様子を見ましょうか』という話になってしまう。もっと苦しい人の話をニュースでも見てるので、私が入ってベッドを埋めるわけにもいかない。本当に歯がゆいしか言いようがない。でも本当に苦しいっていう感じでしたね」とコメント。「私としては先生に診てもらいたいんですと。先生の判断で入院が必要なのか、療養でいいのか、判断してほしいというのはありました」と訴えた。

 スタジオでそのVTRを見守り、エッセイストでタレントの阿川佐和子氏(67)から「本当にそうだよなと思う」と同情の言葉が出る中、井上は「2択なんですよ。自宅か、入院か。忙しいんでしょうけど、事務的なお話しかないんですよ」と訴え。元宮崎県知事で衆院議員も務めたタレントの東国原英夫(63)は「保健所としても強制的に入院はさせられない。人権等の問題があって。ご自分の意見を尊重されるんですよ」とフォローを入れた。

そのうえで、井上は「どっちかというと、『入院じゃなく、受診をしたい』『先生に診てもらいたいんだ』って言ったら、(保健所に)『オンライン診察ができる病院を自分で探してくれ』って言われたんです。年末年始の感染だったので、病院はやっていないですし、病院は自分で探すのかっていうことにすごく疑問で」と不満。「その2日後ぐらいに、もう一度、再三言って、粘って、やっと探してくれたんです。本当に粘らないとやってもらえない。だいぶしつこく言わないと。大変なのはわかるけど、こっちもそんなに言わなきゃ聞いてくれないの?っていう、歯がゆいっていうか、怒りもちょっとありましたよ」と保健所の対応に苦言を呈した。

私も労働基準監督署にいた時に相談を受ける立場で、これは答えられないという質問も多く受けました。それは次のようなものです。

「信頼できる労働組合を教えてくれ」

「弁護士を紹介してくれ」

「産業医を紹介してくれ」 等

これって役所が絶対に答えられない質問なんですよね。例えば、ひとつの労働組合を紹介したら、当然他の労働組合から文句が言われるし、労働組合関係なら「労働センター」という専門の役所もありますから、そこに聞いて下さいということになります。社労士・弁護士の紹介はもっとできません。癒着を疑われるからです。

(注)「産業医の紹介」については、個別の医師は推薦できないのですが、地域の医師会の産業医部会と連携を取ることになっています。

ですから、冒頭の新聞記事の保健所の対応は当然だという気がします。「医師の紹介」なんてしたら、後から大変な騒ぎになりますし、その医師の対応が井上さんの満足がいかないものでしたら、井上さんはさらに怒るでしょう。

また、今回のケースで言うと、井上さんは、保健所側が発するメッセージを実は十分理解しているのです。そのメッセージとは次のものです。

  • 保健所は事務的な返答しかできない。井上さんの心の平安を得るようなことはできない
  • 保健所は、入院手続きを進めるかどうかしかできない。

保健所側としては「そもそも井上さんは、既に医者の診断を得て、コロナ感染を確認しているんだから、そちらの医師と相談したらどうだ」ということも考えていると思います。

それでは井上さんの側からこの局面を見ると、次のようになります。「国民の命がかかっているし、年末年始で診てくれる病院もない。何の手もさしのべないはなぜ?」。

まあ、最良の方法としては、保健所側が「オンライン診療の可能な病院の名簿」を作成してその中から選ぶようにと指導することのような気がします。地方労働局が、「アスベストをはじめとする有害化学物質等の特殊健康診断実施健康診断機関」を紹介するのに、この方式を使っています。でも、「特殊健康診断」ならともかく、「一般診療」では、「あの医師は載せたけど、この医師は載せない」とか「名簿が古くなっている」とかのトラブルが続出するでしょうから、名簿による紹介は保健所はしたくないでしょう。

何度もこんな電話トラブルを経験した私が思うに、相談者と役所の溝はなかなか埋まりません。

それではどうしたら良いのか。まあ、私が担当者でしたら、原則を崩して、さっさと「ふたつか、みっつのオンライン診療機関」を教えると思います。最終的には、「人の命」がかかっていますし、この井上さんの件で一番迷惑をかけられているのは、電話を通じるのを待っている他の相談者なのですから・・・。

公務員の残業

(緑の洋館ダイセル異人館・姫路市、by T.M)

「飲み会は全て断らない」

これを声高々に若者向け動画に述べている、現在話題の中心の偉い役人さんがいるけど、この言葉って昔から言われている役人の処世術なんですよね。私も若い頃よく聞かされました。しかも、この言葉を口に出す時は、みんな冗談ぽく言うのが常でした。この言葉の裏には、よく言えば「協調性」、悪く言えば「阿り」があることをみんな気づいていたからです。それを堂々と自らの誇りのように言う人がいるとは、少し驚きです。

国家公務員に残業代「適切」支給 河野氏が1月に要請・日本経済新聞・2021年2月18日

国家公務員制度を担当する河野太郎規制改革相が1月に中央官庁の残業代の適切な支給を閣僚に要請して最初の国家公務員給与が支払われた。霞が関の各府省は長時間労働の常態化が問題になっている。残業代にあたる超過勤務手当が実態に即して支払われていないとの指摘がある。

河野氏は16日、自身のツイッターに「本日、霞が関の残業時間を厳密に反映した給与が支給されることになっている」と投稿した。「もしそうなっていない場合は内閣人事局に通報を」と呼びかけた。

ツイッターで国家公務員とみられる人による手当が増えたとの報告もあった。

加藤勝信官房長官は18日の記者会見で「徹底した業務の見直しと効率化、勤務時間管理のシステム化、さらには超過勤務そのものの縮減を進めてきた」と語った。「政府全体で国家公務員の働き方改革を進める」と強調した。

公務員の残業代の支払いというのは、古くて新しい問題です。約40年前に、民間企業から公務員に転職した私は、その時間管理のルーズさに驚きました。というか、残業代の、予算が最初に決められているのですから、それを超えることはできません。かと言って、予算どおりに仕事をしていたらとても間に合いません。そこで、40年前は、多くの労働基準監督署が、「残業代の自主規制」をやっていました。残業代が上限を超えないように、勤務記録を作成していたのです。(これはあくまで私が経験した地方労働局での話です。当時、霞が関がどうだったのかは私は知りません)

エクセルもワードもない時代です。というか、コピー機すらろくになく、青焼きコピー機が主流の時代です。役所にはタイムカードもなく、勤務記録はすべて手書きでした。

思えば長閑な時代でした。高校生が、深夜10時過ぎまで働いている飲食店があるという通報を受けて深夜臨検をするのに、勤務終了時間の5時から食事をして、深夜臨検出発まで署で将棋を指していたこともありました。そんな時代だから、大雑把な時間管理許されていたのです。残業代が満額払われないことは、みんな不満でしたが、安定した公務員の村社会の中で、みんな「予算がないなら仕方がない」と諦めていました。

このような、ある意味異常な制度は平成の初めくらいまで続いていたと思います。ある年から、「残業代は勤務時間に応じて払われる」といったことになったのですが、なんとそれに労働組合が強く反対していたことを覚えています。

「残業代が全額支払われること」「時間管理が適正に行われること」のどこに労働組合が反対したかというと、そのかわりに当局は「勤務評価」を組織に持ち込んだのです。当時は「完全年功序列制」だったので、職員間で昇格昇給に差がつくことを組合は嫌ったのでした。

今組織に残っている者で、そんな「昭和の時代」の「勤評反対闘争」のことを知っている者はいないと思いますが、当時労働組合が主張していた、「勤評を取り入れれば職場はゴマすりだけになる」というのは、なんか当たっていたような気がします。(でも、だからと言って、誰でも平等な「完全年功序列」ていうのは、所詮「昭和の夢」でしょう)

時代は変わりました。今公務員は多くの民間企業の人事評価がそうであるように、年間の自己目標を立て、その達成度及び達成難易度で評価され、昇給昇格されるようになりました。その自己目標に、「年間の残業時間を〇〇時間以内とする」とする方が、私の知る範囲でたくさんいます。

さて、冒頭の新聞記事についてですが、河野規制改革相の発言は公務員にとってとても勇気づけられる発言ですが、公務員が労働時間の「自主規制」をしないように気を配って頂きたいと思います。

 

これはオドシでしょうか?

(猛毒のトリカブト・乙女高原、by T.M)

「○〇をしたら、罰金××円」

私が監督官をしていた時に、こんなことを掲示をすることが労働基準法違反となるのか質問する事業主が時々いました。私は次のように答えてました。

「掲示するだけなら問題ない。でも実際に給与から罰金を控除したら労働基準法違反となることがある。だからこれは『オドシ』であって実効性はないものだ」

事業主の中には、「オドシ」でもかまわないから、職場にこのような掲示をするという人がいました。まあ、小規模の自動車運送会社が、

「酒気帯で来社の場合は、直ちに帰宅してもらい罰金10万円」

というような掲示をして、始業前のアルコール検査をすることは仕方ないことなのかなとも思ったことがあります。でも、少し品がないなと思いました。

さて先週、「名門医大がそんなオドシをしているという」記事がありました。これから少し長い引用です。

毎日新聞2月9日

東京女子医科大(東京都新宿区)が職員に対し、新型コロナウイルスの感染で休んだ場合、感染の原因によっては「休業中の給与を無給にする」との文書を出していたことが同大関係者への取材で判明した。「不適切な行為」で感染したなどと認められれば、「民法上の債務不履行に当たる」として無給にするという。ただ、「不適切な行為」が何を指すのか具体的に示されておらず、職員からは「恣意(しい)的に運用される」と懸念の声が上がる。

 関係者によると、文書は「新型コロナウイルス感染症に罹患(りかん)等して休業する場合の処遇について」というタイトルで、経営統括部人事課が1月29日付で出した。

対象は同大のほか、コロナ患者を受け入れている系列3病院で働く医師や看護師、職員ら。

文書は、感染原因として①大学側からの自粛要請に反した行為②明らかに不適切な行為――のどちらかが認められた場合、休業中の給与を無給にするとしている。

濃厚接触者と認定されたり、発熱などの症状で自宅待機を命じられたりした場合も、①か②の行為が認められれば休業・自宅待機中の給与を無給にすると記されている。

同大は、職員に学内でのマスクとゴーグルの着用を義務付け、不要不急の会合や会食の自粛、カラオケやスポーツジムなどの利用禁止を求めている。これらを守らなければ「自粛要請に反した行為」に当たるとみられるが、「明らかに不適切な行為」が何を指すかは分かっていない。

文書は「医科大で勤務する職員は、本来健康な状態で労働を提供する必要がある」と指摘。対策を怠って感染し、休業することは「民法上の債務不履行に当たるとの見解を顧問弁護士から得ている」と強調している。

 系列病院で働く職員は「わざわざ弁護士の見解を持ち出して、脅されているように感じた。自覚なく感染した場合はどうなるのか説明もない」と憤る。

 同大広報室は毎日新聞の取材に「自粛要請に明らかに反した結果、学内で感染拡大リスクを高めた職員のみを対象として無給とする方針を掲げた。罹患したことのみをもって無給とする方針を掲げたものではない」と回答している。

この記事を読んだ私の感想ですが、東京女子医大も無意味な大人げないことをするなと思いました。

大学側の言っていることは、間違っていません。

「医科大で勤務する職員は、本来健康な状態で労働を提供する必要がある」と指摘。対策を怠って感染し、休業することは「民法上の債務不履行に当たるとの見解を顧問弁護士から得ている」

別に「医科大」でなくて、一般の企業でもこれは当たり前のことです。

(注)でも、本当に弁護士が「債務不履行」なんて言葉使ったのかな?単に「労働の義務」を果たさないから、賃金を払わないということではないでしょうか。これって、債務不履行?まあ、私は民事事件に詳しくありません。

そもそも、業務と無関係な「私病」に給与を支払う企業ってあるんでしょうか。私は、公務員だった時に、「ギランバレー症候群」という病気に罹患し1年近く休職しましたが、給与が満額でたのは有給休暇の消化分を含め最初の3ケ月分だけで、後は公務員共済の方から傷病手当金(6割くらいの額)を貰いました。

これは、一般企業に勤務する方も同じです。「重篤な私病」に罹患して長期休職になった場合は、企業は給料を払いません。つまり無給という訳です。そして健康保険から傷病手当金が支払われるのです。

最初から、「私的理由でコロナで休職」の場合は無給なのですから、改めて「無給」であると宣言する必要はないのです。

(注)それとも、東京女子医大は「私病」であるコロナについても、休業期間中は給与を払うつもりだったのでしょうか?それなら凄いことなのですが、昨年の夏のボーナスを支払わないといってマスコミを賑わせた企業が、そこまで福利厚生が良いとは思えないのですが・・・(間違っていたらスミマセン)

それから、「学内でのマスクとゴーグルの着用の義務」がなされてなくて、コロナに罹患した場合は無給とも取れる新聞記事ですが、「学内」での感染が立証されれば「私的病気」でなく「労災」となります。マスク・ゴーグルの直用は関係ありません。「プレスの安全装置を作業者が無効にして、そのために作業員がプレスに挟まれても労災」と同じ理屈です。

それに医療関係者のコロナ罹患については、私的なものか業務上なのかが区別が難しいものです。現在、労働基準監督署はコロナ受入れ病院の労災認定は積極的に行っている様子です。「コロナに罹患したら無給」なんてことを言っていたら、労働者が反発し、労災認定後に病院側を安全配慮義務違反で高額な賠償金を請求ということにもなるかもしれません。

(注)もっとも、今回の東京女子医科大学の文書は、「安全配慮義務」を果たした証拠であるなんて、後で言われるかもしれません。

従業員に、私生活を含めたコロナ対策を要請するなら、今回のような「脅し」の文書でなく、「コロナと最前線で戦う人」への激励を込めた協力依頼の方が良かった気がします。