
(阿賀野川沿いを走るJR磐越西線の車窓、by T.M)
疲れました。衛生管理者受験準備講習会の法律の講師を水曜日から金曜日までやってヘトヘトです。ご訪問頂いた方には申し訳ないのですが、ブログのアップはできません。来週はパワーアップして、更新するつもりです。
デハデハ
おばら労働安全衛生コンサルタントのブログ・元労働基準監督官の独り言
元労働基準監督官の独り言
(阿賀野川沿いを走るJR磐越西線の車窓、by T.M)
疲れました。衛生管理者受験準備講習会の法律の講師を水曜日から金曜日までやってヘトヘトです。ご訪問頂いた方には申し訳ないのですが、ブログのアップはできません。来週はパワーアップして、更新するつもりです。
デハデハ
(鉄道の町新潟県新津市・JR信越本線新津駅、by T.M)
日刊スポーツ
巨人岡本和真内野手(28)がリハビリを実施した。
川崎市・ジャイアンツ球場の室内練習場に姿を見せ、約1時間汗を流した。左肘の患部は包帯を巻いて固定。マシン打撃では右手1本で山なりのボールをはじき返した。6日阪神戦(東京ドーム)で負傷。病院での精密検査の結果、左肘の靱帯(じんたい)損傷と診断された。一般的には全治3カ月程度とみられ、前半戦の復帰は絶望的となっている。
このシーンを動画でみました。ジャイアンツの岡本内野手が、ランナーのタイガースの中野選手にタッチプレイをしようとした時に交錯し発生した事故でした。どちらが悪いということはなく、2人とも一生懸命に行った末の事故でした。試合後のニュース番組で分かったようなコメンテーナーが次のように話しをしていました。
「岡本選手が、ボールを離してしまえば、ケガをしないですんだ。」
アホなことを言うなと思いました。あそこでボールを離すことなんて、プロ野球選手にできるはずはないだろう。
そういえば、私が50年以上応援しているベイスターズでも危険なプレイが先日ありました。サードの林選手がファウルフライをカメラマン席まで飛び込んでキャッチしたのです。カメラマン席とグランドの境界には腰の高さくらいのフェンスがあり、カメラマン席はグランドより低く設置されています。林選手はフェンスを乗り越えそこに飛び込んだのです。身を挺して行ったファインプレーに、我らベイスターズファンは感動したのですが、安全担当者としては「ちょっと待てよ」という気になるのです。
労災事故というのは労働者の不注意からおきるものばかりではありません。真面目で仕事熱心な労働者は真面目ゆえに労災を起こしてしまうことがあります。例えば、パン工場でベルトコンバヤーで窯に焼く前のパンを投入する作業について、ベルトコンベヤー上のパンの列が乱れていた時に、作業員が思わずコンベヤ上のパンを素手でなおしてしまうことがあます。その時にコンベヤに指を挟まれ負傷するという事故が高確率で発生します。作業員は、不真面目な訳ではありません。自分たちが作っているパンが、不完全な状態となることが嫌で、思わず手がでてしまうのです。
さて、先の岡本選手のケガを起こしてしまったプレイについて、「ワンプレイの成否より、ケガをして休場する方がチームに迷惑をかけるのだから、そんな危険なプレイは避けるべきだ」という意見もあります。それが正論であります。でも、ファンからみたら、そんなプレイなんてくそくらえです。ファンは、ケガを恐れぬ選手のワンプレイに感動するものなのです。
だからこそ、プレイヤーを管理する者は、極力ケガが起きないような環境を整備し、事故が起きた時のアフターの福利厚生を充実させるべきなのです。
パン屋の労災事故については、コンベヤに指が入らぬようにカバーの設置、ワイヤー式非常停止装置のような設備改善はもちろんのこと、「パンの焼きあがりより、指の方が大切」という教育を徹底すべきなのです。
事業主の注意義務がまったく関与しない労働者の不注意からの事故は以外と少ないものなのです。
(JR飯山線の車窓、by T.M)
次のようなメールを頂きました。
私は大学在学時代の6年ほど前からブログを拝見しており、おばら様が最近ブログのネタを探しているような記述を拝見したので連絡させていただきました。
以下のリンクについて簡単に申し上げますと、コロナ禍において俳優のトム・クルーズがプロデューサーとして製作を指揮していた、『ミッション・インポッシブル(何作目かは失念しました…)』において、製作陣が定めた感染症予防指針に違反する行為(ソーシャルディスタンスを守らなかった)を労働者が行っていたため、トム・クルーズが他の労働者数十名ほどの前でFワードを含めた叱責をした場面が流失し『サン』でスクープとして取り上げられ、アメリカで話題となったものです。
トム・クルーズの行った行為がハラスメントとなるか?その内容(企業が負うべき責任や安全管理等)について、以前のUSスチールの記述との兼ね合いなどブログと相性が良いかと思いお知らせさせていただきます。
ありがとうございます。私が情けないばかりに、お得意さんにご迷惑をかけて申し訳ございません。67歳という高齢者への労りの言葉をかけて頂き、涙ぐんでしまいます。
さて、頂いたお話なんですが、トム・クルーズ(以後「トム」と呼ぶ)が、コロナ期の映画の撮影中に、衛生対策を無視したスタッフを公にしかっているものです。論点をまとめてみました。
1トム威圧的な言葉は妥当であるか
2言うことをきかなければ解雇するという表現は妥当か
3公(人前)で叱ることは妥当か
4トムの良い点は何か?
まず、(1)の点ですが、私は個人的には「安全にパワハラはない」と思っているので、トムの行為は賛成しますが、やっぱり怒鳴りつけるのはまずいという意見もあります。墜落の危険性のある作業床の端で安全帯(要求性能墜落制止用器具)を使用していない労働者に「おい、その作業やめろ」と強く言うのはかまわないと思う。でも、強く言ったら、驚いて墜落災害が発生してしまうかもしれない。目的は、作業を辞めさせて、今後同種の不安全行動を起こさせないことなので、静かに説き伏せることは可能であったはずです。と、理屈では分かっていても、自分の職場の災害ゼロを本当に考えている者は、あえて不安全行動をしている人をみたら感情的になるのは当たり前です。冷静にいる方がおかしいのです。
次に(2)についてですが、本気で「解雇」する気があるなら、言ってもかまわないと思います。自分の優先的な地位を利用して、脅しのようにいうならまずいですが、本気で「次にやったら解雇だ」と宣言し、本当に解雇するなら、警告なしで解雇するより良いと思えます。故意の再度の不安全行動は当然解雇理由になります。
(3)の件ですが、結局これが一番の問題でパワハラに該当するかどうかですね。確かに、みなの目前で叱られれば、叱られた方はそれを恥辱と思うでしょう。どれだけ理を説いても、相手に感情的になられたらおしまいでしょう。トムはその点を間違えたように思えます。ただし、「あえて」計算づくで強く叱っていたのかもしれません。組織には叱られ役が必要であるという説があります。一人を叱ることによって、組織の引き締めを行うというものです。でも、このような行為は、叱る者と叱られる者がよほどの信頼関係がなければ、結局は単なるパワハラになってしまうでしょう。
最後にトムの良い点です。非常に論理的です。なぜ悪いのかを、具体的に説明しています。そして、それを情熱的に語るので、とても説得力があります。そして結局は、最後に叱る者に逃げ道を与え救済しています。さすがハリウッド役者、芝居をみているような圧巻な叱責だったと思います。この点は見習いたいと思いました。
さて、メールを頂きましたSさん。このたびは本当にありがとうございました。年取ると、毎日やることといったら、雀魂でオンラインマージャンをやるか、「小説家になろう」でなろう系小説を読むか、netfliksかamazon primeでアニメをみるかといった、高齢オタク系の典型のような毎日を送っていたのですが、メールをもらったことで少しは労働意欲が湧いてきました。ありがとうございます。
もうすぐ、衛生管理者受験準備講習会の仕事があります。ぼちぼち頑張ります。
(白河城・福島県白河市、by T.M)
ゴールデンウィークです。年甲斐もなく遊び過ぎてしまいました。
ご訪問頂いた方には申し訳ないのですが、今週はブログ更新しません(できません)。
来週お会いしたいと思います。
(入浴中のカピバラ・智光山公園こども動物園、by T.M)
4/9 仙台放送
大崎市の大崎市民病院はおととし2月、医師や看護師などの残業代について「適正に支払われていない」として、古川労働基準監督署から是正勧告を受けました。給与規則に伴う残業代の算出方法に誤りがあったことが原因で、追加の支払いは過去3年分で、医師など1572人分、約10億5千万円にのぼります。これまでに一部の支払いを終えていて、病院では、来年度末までに全員分について支払いを進める方針です。
(略)
大崎市民病院のN事業管理者は「誤りを把握できず、正せなかったのは我々」としつつ、労働基準監督署の対応には違和感もあると話します。
大崎市民病院 並木健二病院事業管理者
「ちょっと信じられない額になって、これを1度に払うとか、これを全部払わなきゃいけないっていうのは、ちょっといくらなんでも、うちの病院がつぶれてしまうなと」
今、医師の地域偏在とか問題がありますけれども、半世紀前の人たちがそれを是正をするために作った制度(就業規則)だと思うんです。制度は悪くはないとは思うんですが、それを半世紀にわたって放置してきた。それは許されることなんだろうかと。僕は労基も反省してもらいたいと思いますよ。今まで自分たちが放置してきたその責任は何なんだろうと」
この問題について、市民病院側のいい分は次のとおりです。
「国の給与規定に準じて、当病院は給与を決定した。しかし、国の機関は労働基準法が適用されずに、当病院は適用される。そのため、当病院の過失により労働基準法違反が発生してしまった。」
実はこのようなケースは他にあるんです。それは、私立の学校についてです。公立学校の教師は、現在社会的な問題になっているように、残業をしても残業代が支払われません。調整手当(給与の4%)が支払われます。この制度をそのまま導入してしまう私立学校がけっこう多いんです(私が監督官をやっていた20年くらい前の話です)。
私が監督官をしていた時にも、記事にでてくるような問題がおきました。
「国がやっているからいいと思っていたのに、それを監督署はひどい」
ということでした。でも、この言い分っておかしくないですか。
「まともに遡及是正したらつぶれてしまいます」「もう、しないから勘弁して下さい」
この言葉は監督官に言わないで、迷惑をかけた労働者に言って下さい。病院の医院長が、労働者に頭を下げ、「申し訳ございませんでした」と謝ったら、もしかしたら労働者は理解してくれるかもしれません。
監督署は是正勧告をした以上は従わなければ、書類送検をしなければなりません。しかし、その手続き中に、被害労働者から、「捜査に協力できません」と言われれば、捜査中止とせざるえません。
要するに、使用者と労働者の間に信頼関係があれば、監督署の是正勧告は無意味になるケースがあるということです。上記の記事について、労働者の話も聞いてみたいものです。逆に言うなら、監督署の是正勧告に労働者側が何も言ってこないということは、病院と労働者の関係もそれだけのことだということです。