職場の人間関係

(ニッコウキスゲ、T.M氏の日光シリーズ1)

前々回のブログ記事に、「46年前に宇宙戦艦ヤマトがイスカンダルに旅立った」と記載したところ、ある人から「45年前の間違いではないか」という指摘を受けましたが、調べてみると、確かに「宇宙戦艦ヤマト」のテレビ放映は1976年前(45年前)でした。

間違いを記載したことをお詫びします・・・

そんな訳で、本日は少しだけ「ヤマト」に関連した話をします。

映画「アルキメデスの大戦」を観てきました。テーマはけっこう深いのですが、ストーリーは、太平洋戦争前の戦艦ヤマト建造のための予算を巡る帝国海軍内の権力闘争を描いていました。組織内の権力闘争を、意外な側面から描くというストーリーは、現在テレビで放映中の池井戸作品ドラマの「ノーサイドゲーム」を連想させます。池井戸ドラマで「ラクビー」にあたるものが、「アルキメデスの大戦」では「数学」に該当します。まあ、映画評については、yahoo!映画のレビューでも見てもらうことにして(けっこう好評価です)、私がこの映画の中で注目したのは、海軍の中にあるヒエラルキーと、それを理不尽と思わない兵士たちの姿です。

この映画の中の主人公である帝大生(数学の天才)は、ひょんなことで山本五十六海軍中将と知合いになり、数学の才を買われ、戦艦ヤマト建造経費の不正経理の調査をすることになりますが、調査に必要なため海軍に就職することになり、いきなり「少佐」という地位を与えられます。主人公は、「軍隊は嫌いだ」と公言するくらいですから、軍隊内の自分の地位には無関心です。しかし、彼を取り巻く人々(例えば、彼の部下になった、エリート少尉)は、主人公の地位と言動のギャップに悩まされ、ある時は怒り、ある時はあきれかえります。主人公のように、組織内の階級というフィルターをとおさずに軍人と接するならば、素の人間が見えてきます。逆に言うと、組織の中では人は、「地位」というものを纏わないと落ち着けないものなのでしょう・・・

最近ある地方労働局に勤務している友人と、酒を飲んでこんな話をしました。

労働局長と郵便局長では、どちらが偉いんだろうか?

もちろん、こんな話題は「下の下」です。でも、盛り上がりました。「労働局長」と「郵便局長」の給与は、下っ端であった私の数倍くらいでしょうが、多分同じくらいではないかと想像します。部下の数でしたら、私の知る某労働局は1000名くらいですし、大規模郵便局では、非正規職員の数を含めれば、それくらいの職員がいることがあります(従業員50人未満がほとんどでしょうが)。

その職場にいる者にとっては、自分の所属する「長」が、No1に思えてしまけど、関係のない第三者から見ると、結局は両方ともただのオッサンですし(女性管理職の方、ごめんなさい)、それに恭しく仕える者が、時には滑稽に思えてしまうこともあります。

私が新監だった時、埼玉県の朝霞にある労働研修所で、100名近い同期の者と泊り込みの研修受けていました。朝から、研修所長が私たち研修員に対し、「今日は、元事務次官の××さんが来るから、その時間帯は見苦しい所を見せないように」という訓示をしました。現役の事務次官が来るならともかく、「元」事務次官が来るからといって、何て大げさなんだと思いましたが、実際にその人が研修所に来た時は、所長がピリピリして施設内を案内していました。その緊張度合いが、私にはとても面白く思えました。

その元事務次官から何も感じぬ私のようなものは、結局、出世をしないで役人生活を終えるものなんだなと、気付いたのはようやく最近のことです(もう、遅いです!)。

 

今日は取り留めのないことを書きました。

来週はブログを休みます。

替わりに、今週中ごろに、いつも写真を提供してくれている、T.M氏の記事を載せますので、彼の華麗な写真をお楽しみ下さい。

ダブルワークと労災保険(3)

(足柄のアジサイ・開成町、by T.M)

「Uber Eats」の問題点は、やはり配達人が「労働者」でなく「個人事業主」であることでしょう。

労働者とは、「労働時間を売って、お金を得る人」です。こうはっきり言うと、身も蓋もなくて 必ず反発を受けます。「働くということは、何かしらの成果がなければならない。時間だけ拘束されていて、金をもらえるのは公務員くらいだ。」(こういう発言に引合いに出されるのは、いつも必ず“公務員”です)

労働とは、「成果」なのか「拘束時間」なのかは、それこそ100年前からある議論でして、取りあえず、現在の労働基準法では、労働者の定義は上記のようなものになっています。もうすこし、法律的な表現をするなら、「労働者とは、使用者から、時間的・場所的な拘束を受け、その指揮命令を受ける人」ということになります。

「Uber Eats」の配達人は、その業務の自由さ故に、労働者とは法的にならず、個人事業主となるのです。働く人にとって、「個人事業主」の方が得か、「労働者」が得かは、考え方ですが、普通に考えると、やはり「労働者」の方が安心でしょう。「個人事業主」のメリットは、税金面で「必要経費」を計上できるということですが、デメリットは、労働者でないので労災保険の適用がないということです。

 もちろん、学生や主婦が行うパートやアルバイトで、今までも「労働者」でなくて、「個人事業主」扱いされていた業務はあります。「家庭教師」や「新聞の集金」等がそれに該当します。しかし、この「Uber Eats」の業務が、それらと違うことは、「事故が多い業種」であるということです。

 ある業種が別の業種と比較し、災害が多いかどうかを判断する一番確かな方法は、「労災保険料率」を比較する方法です。企業が労働基準監督署に支払う労災保険料は

       (支払賃金総額) ×  (労災保険料率)

です。この「労災保険料率」は業種ごとに定めてあって、過去の労災保険の給付の実績からその料率が定めてあります。ですから、業種比較で、多くの保険給付があった業種が分かるのです。ちなみに「労災保険料率」が一番高い職種は、「炭鉱業」で「8.8%」です。

「Uber Eats」の配達人の業種は何かということについては、少し議論の余地があります(つまり、新しい業務形態なので、業種がまだ決まっていない)。業務が似ている業種として、「貨物取扱事業」が挙げられますが、保険料率は「0.9%」です。これは、けっこう高い数字で、一般の飲食店の「0.3%」の3倍です。つまり、レストランのデリバリーのつもりで働いても、通常にレストランで働くよりもはるかに危険だということです。

もしダブルワークの人が「Uber Eats」で配達中に、交通事故でもあったら、治療費と休業補償は自分の社会保険を遣わなくてはなりません。もし、本業の方を長期欠勤した場合は、「退職」扱いとなる可能性があります。あくまで、「自己都合の休職(病気休暇も含む)」なので、労働基準法19条の「解雇制限」の対象にはならないのです。

この、「Uber Eats」の配達人の労働については、「労災保険」以外に、「最低賃金」のことが大きな問題となります。

(続く)

 

爆発災害について

(真岡市中村八幡宮、by T.M)

今回の札幌の爆発事故については、色々と書きたいことがありますが、まずは、負傷された方々の回復、そして被災された方々が一日でも早く、元の生活を取り戻されることを祈ります。

この事件について、どうもマスコミ等では不動産紹介会社の担当者を責めるばかりで、これが、「労災事故である」という視点が欠けているように思えます。ですから、会社責任への追及が甘くなっているようです。

会社が労働安全衛生法違反をしていた可能性は、非常に高いと思います。少なくとも、「引火性物質の取扱の社員教育をしていなかった」ことか、あるいは「引火性物質について、社員が適切に取扱っていたかどうかを確認することを怠った」ことは、(今後労働基準監督署が事実を明らかにすると思いますが)、マスコミ報道から判断すると、確実のように推測できるのはないかと思います。

作業に使用していた消臭剤については、「一般消費者の用に供される製品」であるのか、あるいは「業務用」であるのかによって、法的な取扱いは違います。メーカーが公表したSDS(安全データシート)から判断すると、メーカーは労働安全衛生法上の責任の軽い「一般消費者の用に供される製品」として取扱っていたようですが、同消臭剤がホームセンター等で売却されていないことから、法的な責任の重い「業務用」のような気もします。これもまた今後の捜査で明らかになることだと思います。

また、「一般消費者の用に供される製品」であっても会社には責任があります。次のQ&Aはある省庁のHPから抜粋したものです。

7.一般消費者の用に供される製品については、リスクアセスメントの対象にならないのか。ホームセンターで売っている物の中には、特定化学物質(エチルベンゼンなど)が入っているものもあるがどうか。

7.労働安全衛生法上、表示・通知義務のあるものにリスクアセスメントの実施義務が課せられるため、通達でも明示したように、一般消費者の用に供される製品については、義務の範囲からは除かれます。ただし労働安全衛生法第28条の2に基づくリスクアセスメントの努力義務の対象には含まれるため、SDSを入手し、リスクアセスメントを実施するようにしてください。

つまり、会社は「リスクアセスメント」を実施していなければならないのですが、この「リスクアセスメント」については、次回説明します。

私が今回の事故で驚いたことは、爆発災害の報道写真に、「労基署」という背中にワッペンを貼った制服を着用している者がいたことです。(下の写真は報道された写真の一部を私が切取ったものです)。監督署、頑張っているなーと思うと同時に少し違和感を覚えました。

監督署の職員は、いつからこんな服を着て、災害調査に行くようになったのでしょうか。背中のワッペンの「労基署」という文字はなんでしょうか。私の知る限り、監督署の制服に記入される文字は「○○労働基準監督署」「○○労働局」あるいは「厚生労働省」というものですし、それも胸のあたりに刺しゅうされているもので、このように「労基署」とだけ大きく書かれたワッペンは背負いません。 

これは、今回のような大きな事故でマスコミが来る時のためのみの制服でしょう。普段、職員がこのような制服を着用し、公共交通機関を利用して臨検監督へ行っているとは思えません。

私はある事を思い出しました。今から8年前に東日本大震災の時に、被災地の宮城県石巻市の労働基準監督署にお手伝い行った時のことは、以前にもこのブログに記載したと思います。業務命令としての「お手伝い」でしたが、震災後3週間後の派遣であったため、「現地までの足」と「現地での宿泊場所」を自力で確保できる者で、「志願した者」が派遣条件でした。私は妻が石巻市出身なので、妻の知人の家に泊まることにして、現地までの交通は鉄道が全線ストップだったもので、臨時に東京駅から出ていた東北地方行のバスを乗り継いで現地まで行きました。宿泊した家庭は、当時電気もガスも泊まっている状態でしたが、「石巻のために東京から手伝いに来てくれる」ということで、私を快く受け入れてくれました。そんな訳で、けっこう苦労しました。

その時に、出発前日に神奈川労働局の各部署に挨拶に行った時に、私の派遣の責任者である人事の担当者からいきなり、「神奈川労働局」と記入された腕章を渡され、「マスコミが来たらこれを着用して下さい」と言われました。そして、その担当者それ以外は私に何の話もしませんでした。(少なくとも、他の者は「頑張ってくれよ」とか「たいへんだなあ」とかいうことは言ってくれました。)

私は、その腕章を被災地には持って行きませんでした。

少し話が飛んでしまいました。爆発災害での「労基署」のワッペン着用について、賛否両方の意見があると思います。監督署の職員が災害調査に行く理由は、「災害の原因を明らかに」すること及び「再発防止措置のため」で、「組織の宣伝」のためではないと反対する者がいると思います(私はその考えです)。

また、士気が高まって良いと考える方もいると思います。(ただし、その場合においても、写真のような急ごしらえのワッペンでなく、きちんとデザインされたものの方が良いと思います)。

どうか、現場の職員の意見をよく聞き制服等を揃えて頂きたいと思います。

 

お休みです

3連休で遊びすぎました。おいで下さった方には申し訳ございませんでした。せめて、T.M氏の写真だけでもお楽しみ下さい。

(旧草軽電鉄の北軽井沢駅、by T.M)