労災不服審査!

(タイワンリス、by T.M)

お久しぶりです。

如何お過ごしでしょうか?私は4月から人事異動があり、サラリーマンとしては週3日の勤務で相談員という職となりました。組織の外部からの問合せに答える仕事です。そして残りの週4日でコンサルタント業に勤しんでいます。現在のところ、今年は衛生管理者受験準備講習会の講師を年2回の合計6日間と某地方自治体の公務災害に関する第3者委員会の委員を毎月1回出席することが決まっています。幸いにして、仕事はけっこうありますけど、私ももう66歳、体に負担がないようにボチボチやっていくつもりです。

そういえば、このブログに写真を提供してくれているT.M氏がアラフィフで早期退職し、神奈川労働局を卒業しました。T.M氏の今後の活躍を期待しています(彼なら絶対にやってくれます)。

さて、本題です。

朝日新聞 4/1

仕事が原因で病気やけがをした労働者を国が労災だと認定した際、事業主に不服を申し立てる権利があるかが争われている訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(堺徹裁判長)は3月28日付で、当事者双方の意見を聞く弁論を6月10日に開くと決めた。弁論は二審の判断を変えるのに必要な手続きで、「不服申し立ての権利がある」とした二審・東京高裁判決が見直される可能性がある。

 この論点で最高裁が判断を示すのは初めて。二審判決には「労働者の立場が不安定になる」との懸念が出ていた。

 労災が認定されると、労働者に賃金の一定割合や治療費などが国から支給される。労働者やその家族の申し立てを受けて労働基準監督署が調査し、認定の可否を決める。労働者側と行政の間の手続きで事業主は関与できず、認定への不服を申し立てる権利もないとされてきた。

労災の認定について、事業場側がひと言話したいことがあることはよく理解できます。言いがかりとしか思えないような理由で労災申請してくる輩はけっこういるからです。私の知るケースでは入社3ケ付月目で「じん肺になった」と主張する者がいました。その事業場では、何年も同種作業をしていた人が何人もいて、他の人たちには何の症状もでていないのに、その人だけ「じん肺」になったというのです。そんなことがあるはずはありません。(事業主側には、「雇入れ健診」を実施していなかったという落度はあるのですが・・・)

そんなケースでも、労働基準監督署の労災担当職員は真摯に対応します。でも、事業場側にとっては、この調査は負担になります。そして、労働基準監督署は「労災になったかどうか」を事業主には決して教えないのです。(そういう決まりです)

これでは、事業主が怒るのも無理はないと思います。

でも、やはり「労災の認定」について事業場側が口を出すことはあってはならないことであると思います。労災の認定要件は「業務起因性」と「業務遂行性」の存否です。それを現状どおり行政判断だけに委ねてしまっていいのかという疑問は確かに存在します。(正確に言うと、「労災でない」という行政判断について、労働者側のみ司法でひっくり返せます。事業主については門戸が閉ざされています)

でも、この件については、事業主の方には行政判断を第一にしてもらいたいと思うのです。スピードのある判断で労働者保護を第一に考えることは、労働行政にとって当然なことだからです。また、行政が間違った判断をしたとしても事業場側にはほとんどデメリットがないでしょう。休業期間中の給与及び医療費は労災保険の方から支給されますから、金銭面で問題となるのは、「労災を起こした時に保険料が上がるメリット制」の件でしょう。

これについては、確かに大いに議論する必要があると思いますし、厚労省内でも議論されているようです。でもだからと言って、苦しむ労働者への支援を遅らせる訳にはいきません。

もし、事業主側がどうしても労災認定が不当でるあると思うなら、死傷病報告書の不提出等の抵抗手段があります。労災が発生し、それが休業4日以上である場合は死傷病報告書(様式23号)を提出する必要があります。それを故意に怠ると労働基準監督署は「労災隠し」として、事業場を書類送検します。ですから、労働基準監督署が労災認定すれば、労働基準監督署は死傷病報告書を提出するように事業場に求めますが、それを拒否することで監督署と争うことができます。もし、監督署が書類送検をすれば、その時にはじめて「労災があったかどうか」裁判所で判断することになります。もっとも、裁判で負ければ、事業場に前科がつくことになりますが、「労災でない」という信念と自信があれば、それも良いかもしれません。「労働者」と「使用者」、どちらかが常に悪いということはないからです。