恥ずかしい技能実習制度

(川崎市夢見ヶ崎動物公園のペンギン、by T.M)

WBCで優勝して良かったです。日の丸をつけた選手が活躍するのが私は好きです。

私は愛国者です。日本大好きです。日の丸と君が代を敬愛しています。天皇家、特に「昭和天皇」には格別な崇拝の念を持ちます。

3月25日 NHK

3年前、熊本県芦北町で死産した双子の赤ちゃんを自宅に遺棄したとして、死体遺棄の罪に問われたベトナム人の元技能実習生の裁判で、最高裁判所は執行猶予のついた有罪とした1審と2審の判決を取り消し、逆転で無罪を言い渡しました。

無罪を言い渡されたのは、ベトナム人のレー・ティ・トゥイ・リンさん(24)です。

リンさんは、技能実習生だった2020年11月、死産した双子の赤ちゃんの遺体を段ボール箱に入れて芦北町の自宅に放置したとして死体遺棄の罪に問われました。

死産したあとの行動が死体遺棄罪の「遺棄」に当たるかが争点で、24日の判決で、最高裁判所第2小法廷の草野耕一裁判長は「習俗上の埋葬とは認められない形で死体などを放棄したり隠したりする行為が『遺棄』に当たる」という考え方を示しました。

そのうえで、リンさんの行為について「自宅で出産し、死亡後まもない遺体をタオルに包んで箱に入れ、棚に置いている。他者が遺体を発見するのが難しい状況を作り出したが、場所や遺体の包み方、置いていた方法などに照らすと、習俗上の埋葬と相いれない行為とは言えず、『遺棄』には当たらない」と判断し、1審と2審の有罪判決を取り消して逆転で無罪を言い渡しました。

外国人が日本で働きながら技術を学ぶ技能実習制度は、発展途上国の人材育成という国際協力を目的に1993年に創設されました。

(略)

去年6月時点で日本にいる実習生はおよそ33万人、このうちおよそ4割が女性です。

実習生には日本人の労働者と同じく労働関係の法律が適用され、妊娠や出産を理由に解雇などの不利益な扱いをすることは禁止されているほか、産休などをとることもできます。

一方で、厚生労働省によりますと、妊娠や出産を理由に技能実習を続けられなくなった人は2017年12月から2020年11月までの3年間で637人に上っています。

(略)

妊娠・出産をめぐるトラブルも各地で起きていて、出入国在留管理庁が去年、ベトナムやフィリピンなど7か国の女性の実習生を対象に初めて実態調査を行ったところ、回答した650人のうち、母国の送り出し機関や受け入れを担う日本の監理団体、それに実習先の企業などから「妊娠したら仕事を辞めてもらう」など不適正な発言を受けた経験があると答えた人は、およそ4人に1人に当たる26%でした。

私は、この技能実習生の方に謝罪したい。日本人として、愛国者として、今の「技能実習制度」は恥ずかしい。

そもそも技能実習制度とはなんでしょうか。公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)のHPから引用します。

「外国人技能実習制度は、1960年代後半頃から海外の現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が評価され、これを原型として1993年に制度化されたものです。

技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進です。

制度の目的・趣旨は1993年に技能実習制度が創設されて以来終始一貫している考え方であり、技能実習法には、基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と記されています。」

要するに、

つまり、建前は「技能実習生」は「留学生」と同じということです。しかし、実際は「安い労働力」と見なされています。私はこのような「外国の方を巻き込んだ国家レベルの嘘」が、日本人として恥ずかしいのです。

日本人は「外国人労働者の受入れ」について真剣に検討すべきです。現在のような技能実習制度を続けていると、世界から信用を失くすのではないかと、愛国者は真剣に危惧するのです。

教師の労働時間

(智光山公園こども動物園の湯浴みが大好きなカピバラ、by T.M)

3/10 時事通信

埼玉県内の公立小学校に勤務する男性教諭が、労働基準法に基づく残業代約240万円の支払いなどを県に求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は8日付で、教諭側の上告を退ける決定をした。

 請求を棄却した一、二審判決が確定した。

 公立校教員の給与体系を定めた特別措置法(給特法)は、時間外勤務手当を支払わない一方、月給の4%に当たる「教職調整額」を一律支給すると規定。残業を学校行事や職員会議などやむを得ない場合に限ると定めている。

 一審さいたま地裁は2021年、「一般労働者と同様の割増賃金制度はなじまず、給特法はあらゆる時間外勤務について労基法の適用を排除している」として訴えを退けた。その上で、「多くの教職員が時間外勤務をせざるを得ない状況にあり、給特法はもはや教育現場の実情に適合していないのではないか」と指摘し、「給与体系の見直しを早急に進め、勤務環境の改善が図られることを切に望む」と付言した。

 二審東京高裁は昨年、一審の結論を支持していた。 

まあ妥当な判決だと思います。これは、「教師に残業代を支払わないことが妥当だ」という意味ではなく、「法律の判断としては妥当だ」という意味です。「残業代」とは、労働基準法という法律によって作られた制度。だとしたら法律によって制限もできるはず。それが確認できた判決でした。もっとも、訴えた方もそれは承知の上で、世論に訴えることを求めて訴訟したようですが・・・

教師にも残業代を支払われるようになったらよいのですが、何か「一般労働者と同様の割増賃金制度はなじまない」という考えも根強いような気がします。

このブログでも何度も書きましたが、「修学旅行の時に、教師がよる飲酒している」と問題視されるます。つまり、「修学旅行の時は教師は24時間生徒の安全を見守る義務がある」のです。これは「修学旅行の時は教師の24時間労働が当然である」ということになります。

何も、修学旅行の時だけではありません。旭川市イジメ自殺事件では、自殺した生徒の自殺の直前に、担任教師が生徒からの相談を、「デートがあるから」といって断ったことが非難されています(事実関係を学校側は否定しています)。つまり、「生徒から相談を受けたら、教師はデートを断るべきだ」と思われているのです。

このような業界では、労働基準法の即時適用は難しいのではないでしょうか?

だとしたら、根本的な解決にはなりませんが、取り敢えず「月給の4%に当たる教職調整額」を「20%」くらいに上げ、最大拘束時間を設けたらどうでしょうか?教師の時間外労働の是非を論じるより、よっぽど現実的だと思うんですが。

QBハウスについて

(身延山久遠寺 by T.M)

共同通信 2/14

低価格ヘアカット専門理容店「QBハウス」の神奈川県内の店舗で働く美容師8人が14日、残業代を過少に算定していたなどとして約2800万円の支払いを運営会社側に求め、東京地裁に提訴した。

 訴状などによると、8人は2003~16年にQBハウスのスタッフとして採用されたが、運営会社が業務委託する個人事業主のエリアマネジャーに雇用される形態になっていた。業務上の指揮命令をしている運営会社の「キュービーネット」が事実上の雇用主で、残業代を支払う責任があると主張している。

 キュービー社はホームページで、運営会社などで勤務する理美容師は「業務受託者に雇用されている」との見解を示している。

この問題なんですが、監督官の現役の時に少し研究したことがあります。ちゅーか、10年前からこの形態があるんですよね。この問題は、私の経験としては、働いている美容師さんはQBハウスの労働者の可能性が高いと思います。でも裁判では原告側(労働者側)が負けると思います。理由は、最も協力して欲しい者の協力が得られないからです。

この問題の本質は「エリアマネージャー」が、QBハウスの労働者であるかどうかです。エリアマネージャーとQBハウスの契約が「委託契約」であるなら、エリアマネージャーは個人事業主ということになるから、その下で働く美容師さんたちはエリアマネージャーの労働者ということになり、QBハウスの労働者ではないということになります。

エリアマネージャーとQBハウスの契約が、見かけ上は「委託契約」であるが、実は「労働契約」であるなら、QBハウスがエリアマネージャーを指揮命令して、美容師さんたちを雇用しているので、美容師さんたちはQBハウスの労働者ということになります。

(注) 「委託契約」であるか、「労働契約」であるかは、基本的に「場所的拘束を受けているか、時間的拘束を受けているか、事業主の指揮命令を受けているか」等ではんだんします。

つまり、美容師さんたちがQBハウスの直接雇用であるかどうかについては、間に入るエリアマネージャーの属性次第ということになります。

エリアマネージャーが美容師さんたちと共闘してくれて、「自分たちもQBハウスの労働者だ」と主張してくれれば、美容師さんたちにとって裁判は有利になりますが、どうもそうでない様子です。だから、私はこの裁判は原告側にとって厳しいものになるのではないかと思います。

意外と「コンビニ」等についてもこういう問題があります。コンビニの店主とコンビニ本社の契約は、店主に資本(土地、建物)がどのくらいあるかで違いがありますが、基本は、店舗の売り上げから必要経費を差し引いたものが店主の収入となります。最初に資本がある方がコンビニのフランチャイズであれば「必要経費」は少なくなりますが、資本を持たない雇われ店長については「必要経費」の比率が多くなり、削れるのは人件費ぐらいですから、店長自らが過重労働となります。あるコンビニの雇われ店長から、これは「実質的な労働者でないか」と相談を受け申告となり、けっこう気を入れて調査したんですけど、店長が途中で「揉め事をおこしたくない」等の理由で申告を取り下げたことがありました。結論を出したかったんですけど、今となってはちょっと残念に思える事件でした。

五ノ井さんの事件です

(野毛山動物園のキリン、by T.M)

非常に興味深い労災関係の記事があったので、長いけど引用します。

1/31(火) 1:29配信 日テレNEWS

陸上自衛隊での性暴力を告発した元自衛官の五ノ井里奈さんが、性暴力を行ったとして懲戒免職となった5人の男性隊員に550万円、十分な調査をしなかったなどとして、国に200万円の賠償を求め提訴しました。訴えを起こした理由は、加害者側の弁護士が作成した書類に書かれた“ある言葉”でした。

五ノ井さんは東日本大震災で被災した際に、支援してくれた女性隊員にあこがれ、自衛隊に入隊したといいます。しかし、あこがれの自衛隊で受けたのは、約2年間にわたる日常的な性暴力でした。

去年9月、防衛省は複数のセクハラ行為が行われていたことを認め謝罪。そして、陸上自衛官の隊員5人を性的な接触を行ったと認定し、懲戒免職としていました。

その後、五ノ井さんは、隊員側の3人から示談を持ちかけられていることを明かしていましたが、訴訟を起こすにいたった理由について――

性被害を受けた元陸上自衛官 五ノ井里奈さん

「できることなら、私としては戦う選択をしたくなかったのですが、本当に反省しているのかどうかというのが伝わらない」

五ノ井さんがこう感じたのには、ある出来事がきっかけでした。実は、示談を持ちかけられた際、加害者側の弁護士が作成した書類の中に、「個人の責任を問われるか疑問があるが…」という言葉があったといいます。これに対して、「責任がないということを言っているんでしょうか?」などと問い合わせたものの、回答がない状況だということです。

性被害を受けた元陸上自衛官 五ノ井里奈さん

「回答書がこないっていうのが、私としてはことの重大さを軽く見てるんじゃないか。このまま中途半端にするよりかは、しっかりとオープンにして、明確にする必要があると思っている」

会見の最後、伝えたいことを問われた五ノ井さんは、「私は、自衛隊が嫌いでこういう活動をしているわけではなく、絶対、同じ被害を出さないためにこういう行動をしているので、自衛隊は素晴らしい職業というのは間違いないので、しっかり内部を変えてほしいと思っています」と話しました。

これって、弁護士が凄いアホで無神経だと思います。でも、少し誤解があるのかなとも思います。というのは、この記事には大事なことがはっきり書かれていなくて、それはこの裁判は労災補償を争う裁判だということです。別の新聞記事には、はっきりと「国の安全配慮義務を争う」と記載されています。

職場内の人間関係が原因となり、ケンカ等が発生し、怪我人がでた場合に「労災」扱いとなるかは、「業務」と因果関係があるかどうかが問題となります。この五ノ井さんの事件は昨年の12月23日に防衛相が責任を認め労災としていますから、今回の安全配慮義務違反の損害賠償事件となった訳です。

労災の件で損害賠償請求するなら、確かに加害者への損害賠償請求へはハードルが高いようです。それは民法715条に「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と明記されているからです。

この事件は「モリカケ事件」における「赤木さんの損害賠償事件」と似ています。モリカケ事件で公文書の書き換えを苦として自殺した財務省職員の家族が、国と当時の上司を「安全配慮義務違反」として提訴しましたが、国が請求額を全額支払うことで上司への責任追及はされることなく裁判は決着しました。(これも酷い決着のさせ方です)

この五ノ井さんの事件についても、「国の安全配慮義務」を争うならば、国が五ノ井さんの請求額をそのまま支払って、加害者出席の裁判が行われる前に、裁判自体が終結する可能性があります。

加害者側の弁護士が作成した書類の中に、「個人の責任を問われるか疑問があるが…」

こんなセンシブルな事件に、こんな誤解させるような文言を入れた書類を作成した弁護士の責任は大きいと思います。

東日本大震災で被災した際に、支援してくれた女性隊員にあこがれ、自衛隊に入隊した

この気持ち分かります。2011年の3.11の後の4月に被災地に仕事で行ったけど、当時の自衛隊の活躍は、まさにヒーローでした。五ノ井さんの傷を癒すために、、自衛隊がどうあるべきであるのか・・・ 組織内部の良心に期待するしかないと思います。

自衛隊が、再び国民の尊敬を集める組織となることを、切に願います。

明けましておめでとうございます

(川崎市夢見ヶ崎動物公園のフラミンゴ、by T.M)

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

新年になってから、私の4月以降の処遇に動きがありました。現在の勤務先で「週5日勤務」の常勤雇用から、「週4日勤務」の非常勤雇用となることが決定しました。今年の3月で年金受給要件を満たす65歳になるための措置です。

給料は下がりますが、いい事もあります。なんと副業が認められるのです。そこで「おばら労働安全衛生コンサルタント事務所」を5年ぶりに復活させることにしました。

ちょうどタイミング良く、1件仕事も舞い込んできました。幸先の良いスタートです。

講演会、安全診断、顧問、執筆等なんでもします。

労働安全衛生だけでなく、労務相談の経験豊かです。3月くらいになったら電話連絡先を公開しますが、今は取り敢えずメールでご連絡下さい。

  obaraconsultant@jcom.zaq.ne.jp

ノーマスク理由の解雇は無効 マンション管理人が勝訴  2022/12/5(月) 共同通信

 新型コロナウイルス対策のマスク着用の指示に従わなかったことを理由に解雇されたのは不当として、マンション管理人の70代男性が、雇用主の近鉄住宅管理(大阪市)に未払い賃金を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は5日、「解雇は社会通念上相当とは言えない」として無効と判断し、約90万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は大阪府摂津市のマンションで管理人を務め、昨年5月に新型コロナに感染。復帰後、会社側は男性がマスクをつけていないと住民の苦情があったとして、他のマンションの清掃員への配置転換を打診した。拒否すると、マスク着用の指示に従わなかったとして解雇通知を受けた。

他の記事を読むと、「解雇処分は重すぎ」ということでの判決であり、「マスクの着用の有無等については判断していない」みたいな解説がありましたが、少し疑義がある判決です。

労働安全衛生法には「マスク着用」を義務づけている法条文があります。「アーク溶接時の粉じんマスク着用」等がそれです。もちろん、「マスクを着用しなければ法違反であるケース」と「お願いレベルのコロナ対策対応のマスク着用」では意味が違いますが、企業は状況に応じて、業務中にマスク着用を求めることは、非常識なことではないと思います。

また、労働者は就業時間中であれば、業務命令を受ければ着用衣服について制限を受けることは当たり前だと思います。例えば、工場や小売店で会社支給の制服を着用するのと同じことです。労働者は就業時間中は、事業主の「指揮命令下」にあるのですから当然のことです。

この事業主の業務命令を拒否しても処罰されないというのは相当な理由がなければなりません。もしかしたら、この労働者は「マスクをしていたら健康に差し障りがある」というような状況だったのでしょうか?

「住民の苦情があったとして、他のマンションの清掃員への配置転換を打診した」上での解雇措置ですから、それでは会社はどうすれば良かったのでしょうか?疑問の残る判決です。