過労死認定基準の見直しを、ゆるーく考えてみた

(大黒ふ頭から横浜ベイブリッジを見上げる、by T.M)

朝日新聞 9月15日

雇われる働き手が脳・心臓疾患を発症した場合の労災認定基準が20年ぶりに見直され、労働基準監督署で15日から運用が始まった。労基署が労災かを判断する際、残業時間の「過労死ライン」に比重を置きすぎるとの指摘を踏まえ、それ以外の要因でも柔軟に認定できることを明確にした。

 過労死ラインは労災認定の際、長時間労働が発症の原因といえるかを判断する目安だ。発症前2~6カ月の月平均で残業が80時間、または発症前1カ月で100時間を超えた場合、関連性が強いと判断される。

 新しい基準は、過労死ラインに近ければ、他の要因も勘案しながら総合的に労災認定できると明記した。他の要因とは、終業から次の始業までの休息が11時間未満だったり、身体的負荷、連続勤務といった労働時間以外の要因が認められたりした場合などとした。

さて、20年ぶりの過労死認定基準の見直しです。労働基準監督署の現場ではどのような対応をしているのだろうと思い、知り合いの監督署の労災担当官にさっそく電話取材してみました。

(注)2年前までは、こんな時には担当官を呼び出して、ベロンベロンに酔わせてしまって、本音を聞き出していたのですが、コロナ禍の現在では、その手が使えず難しい取材となりました。

以下、私と彼(A氏)のやり取りです。因みに電話したのは9月17日です。

私 )おい久しぶりだな。

A氏)なんの用だ。下らないブログネタを探しているのなら電話切るぞ。

私 )過労死の認定基準の見直しについて聞きたい。もちろん、私の質問だから、「認定基準の見直しの意義」とか、「認定基準の見直しについて、現場がどのような心掛けで仕事をするのか」とか、そういうことを尋ねているのではない。そんな記事は、私より正確で、詳細で、うまくて、意欲をもって解説する奴がいるだろう。私は、現場の職員のこぼれ話的なことを聞きたいんだ。

A氏)そのことなら機密事項だから、何も話せない。

私 )機密事項のことを聞こうというのでなく、厚生労働省が火曜日(9月14日)に発表した、新認定基準について話を聞きたいんだ。

https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000832042.pdf

A氏)えっ?火曜日に発表されていたのか?署に来たのは今日だぞ(9月17日、金曜日)。

そうなんです。役所ではよくあることなんですが、正式に通達となって署に情報が来るのは、本省が報道発表した後なんです。ですから、トラブルが発生する場合があります。新聞報道があった事案で、労働基準監督署に問い合わせしたところ、監督署が何も分からなくて、相談者は「ここの監督署の職員は勉強不足だ」と言って怒るケースがけっこうあるんです。

でもそれは監督署の職員が悪い訳ではありません。

厚生労働省の組織は本省の下に各県にひとつ地方労働局があって、その下に各労働基準監督署というものがあります。神奈川県の場合では、

「厚生労働省―神奈川労働局―各労働基準監督署」

という流れになります。前述の通達を見てもらえば分かると思いますが、通達の差出人は厚生労働省労働基準局長で受取人は地方労働局長です。要するに、本省から地方労働局局長へは報道発表と同時に情報が通達が電子システムで流れますが、地方労働局ではそれを2,3日留め置いてしまうので、署で通達を読むことが遅れるというような事態が発生してしまうのです。(稀に2,3週間以上遅れることがあります)

局に留め置く理由はそれぞれですが、一番多い理由は「一番最初に通達を読む局の担当官が、署からや局長からの問い合わせやが来ても回答できるように、詳細に読み込むので時間がかかる」というやつです。

後、他の理由としては、局の担当者が直ぐに署に送ろうとしても、基準部長や局長が不在で決裁がとれなくて遅れるということがあります。気の利いた部長、局長になると、「オレがいない時に、署にとって重要な通達がきたら、正式派出の前に情報という形で署に伝えてもいい」と命令していますが、多くの局長達は「オレが目を通していないのに勝手なことをするな」という態度を示します。(そういう上司に限って、仕事ができないのは、当然のことです)

通達の伝達方法は、10年くらい前から紙媒体による通知から、電子メール方式に変更されましたが、組織の在り方自体を変わっていないので、仕事の効率は良くなっていません。ようするにお役所仕事の本質は変わっていないということです。

さてA氏に、「過労死の認定基準見直し」についての現場の感想を尋ねようと思いましたが、まずは「なぜ本省は署へそういう情報を早く流さないのか?署では、なぜ本省のHPをみないと、そのような情報が分からないのか」という、A氏の組織への怒りの言葉を聞いてしまいました。

「過労死の認定基準の見直し」の件については次週書きます。

大学教員の業務委託契約について

青梅鉄道公園

授業任すなら「直接雇用」に 大阪大の非常勤講師訴え 文科省も調査

2021年9月9日 朝日新聞

 大阪大学が業務委託契約を結ぶ非常勤講師に成績評価などを含む授業を任せていることに対し、文部科学省が「大学が直接雇用した教員以外が授業を担当するのは不適切だ」として実態を調査していることが分かった。講師らも「実質的に授業を担っているにもかかわらず不安定な雇用を強いられている」として、直接雇用への転換を求めている。

 阪大の講師を含む関西圏大学非常勤講師組合が9日に会見し、明らかにした。

 組合によると、阪大は最長10年を上限に、講師と業務委託契約を結んでいる。文科省は業務委託自体は認めているが、想定されているのは授業の補助で、4月には各大学に「直接雇用していない者に実質的に授業を担当させるのは不適切」とする事務連絡を出した。

 組合は、非常勤講師が授業の計画作りや成績評価などを単独で担っている阪大のような状態は問題だと主張。文科省も実態の確認を進めているという。

この件は100%大学側が悪いと思います。労働組合もかなり紳士的に対応していますが、もっと別な方法もありそうです。

「業務委託契約」っていうのが何かというと、働く人を「労働者」でなく「個人事業主」として取扱うというものです。典型的な「業務委託契約」が「ウーバーイーツ」のそれです。私が何回かこのブログでも取り上げましたが、「ウーバーイーツの配達員は労災保険に加入できない」等の問題が大学の職員でも発生しているということなのでしょう。ウーバーイーツのように加入職種が限定される一人親方の労災制度も利用できないし、職場でケガをした時にはいったいどうしているんでしょうか。非常勤講師は国民健康保険でも加入して費用の負担をしているのでしょうか。

「ウーバーイーツの配達員の業務委託契約は、デリバリー店と配達員が交わすもので、ウーバーイーツはその仲介を行っているだけだ。大学側と非常勤講師が交わす契約とは違うものだ」

そんな反論があるかもしれませんが、働く者にとっては「労働契約」ではないので、どちらも同じことです。

最近、この「業務委託契約」が増えているような気がします。働く者にとって、不利益が多いような契約を、旧国立大学が締結し文科省がそれを認めていることはおかしいことだと思います。

また、業務委託契約者が「実質的に授業を担っている」のだとしたら、さらに大きな問題です。要するに、大学側は授業を「下請け」に出していることになります。例えば、大学の名前で行う授業が、どこか「別の組織」(例えば「資格取得の予備校」等)に丸投げされていることと同じことです。

労働組合はこの問題について、「適切な業務委託契約の執行」を要求することより、「業務委託契約を労働契約」とすることを求めているようですが、私はこの要求は妥当なものと思います。

と言うより、「実質的に授業を担っている」という段階で、「授業時間に関する指揮命令」を大学側から受けているので、実質的に「時間的な拘束」を受けている訳で、すでに「労働者性」は「有り」と判断してかまわないと思います。

労働組合が取る戦術としては、「既に労働者だ」だから「労働者としての権利を与えろ」という手段が今後にはあるのではないでしょうか。例えば、組合員の誰かに「通災」か「労災」になった者はいないのでしょうか?そのような者がいたら、労働基準監督署に労災申請するという手があります。監督署は、業務量が増えるので、あまりいい顔はしないかもしれませんが、「労働者性の判断」は、しっかりと行うはずです。行政判断で、「業務委託契約」でなくて「労働契約」であったとなれば、働く者の勝ちだと思います。

なぜなら、「組合員は既に労働者なのだから解雇等はできない。他の職員と同じ権利を与えろ」という主張ができるからです。

私が監督官現役の時も、そんな事件は時々起きていました。

解雇通知

(池の平林道からみずがき山を望む・山梨県甲府市,by T.M)

パラリンピックのトライアスロンで銀メダルに輝いた宇田秀生さんは、2013年に結婚式5日後に労災事故に合い右腕を肩から切断したそうです。そんな悲惨な事故から8年後に、こんな記録を樹立するなんて、労働災害の調査等に長年関わってきた者としては、本当に彼を尊敬します。

パラリンピックの開催の是非については、色々意見があったようですが、テレビで選手やそれを支えるスタッフの姿を観ていると、自然と涙がでてきます。参加者全員に金メダルを授与する訳にはいかないのでしょうか・・・

「勝つことよりも参加することに意味がある」そんなオリンピックの精神はパワリンピックな中にこそ生きているような気があいます。

さて、話題は変わり、コロナ被害のことです。

読売新聞オンライン・8/24

青森県八戸市の百貨店「三春屋」が、新型コロナウイルスの感染拡大などで経営不振になり、全従業員約140人の約7割にあたる約100人に解雇通知を出したことが23日、わかった。従業員の労働組合は「希望退職者を募集するなど努力義務を果たしておらず、不当だ」と撤回を求めている。

 三春屋を経営する「やまき三春屋」によると、通知は11日付で、解雇日は9月10日付としている。

 土谷与志晴社長は読売新聞の取材に対し、「新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち、今秋に予定していた改装計画にも支障が出ている。経費削減に取り組んだが三春屋ののれんを残すため、さらに人件費削減が必要」と述べた。希望退職を募らなかった点には「それほど財務状況が逼迫(ひっぱく)している」と釈明。従業員の再就職は「積極的に支援したい」としている。

労働契約法第16条には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。現在のようなコロナ禍において、経営不振を理由に解雇するためには、次の条件が必要です。

「人員削減の必要性」人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること

「解雇回避の努力」配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと

「人選の合理性」整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること

「解雇手続の妥当性」労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと   等

前述の新聞記事引用の解雇事案について、「解雇事由が妥当であるか」の判断は私にはできません。

しかしどうも、私の経験から照らしてみて、「やり方が強引」なので、今後泥沼になるような気がしています。

まずかった点は2点あります。

ひとつ目は「解雇通知が文書で行われ、予告日は8月11日付で、解雇日は9月10日付」であることです。これは労働基準法第20条で示された「解雇予告」期間の30日間をクリアしようとしたのでしょうが、いかにも唐突な解雇通知です。経営陣が「刑事告発」されないことだけを考慮した手続きのように思えます。別の新聞記事には次のようなものがあります。

朝日新聞記事

同労組によると、会社側から、正社員や契約社員を対象に

8月11日付で解雇の予告通知書が送られてきた

という。18、19の両日には全従業員に対して説明会などを実施したが、解雇に対する明確な理由がなかったという。大量解雇は、規模を縮小して営業を続けるためだとみている。

文書の送付だけで解雇が通知されるとは、経営側の怠慢としか言えないでしょう。解雇される者、一人一人と管理職が面談し、事情を説明し、解雇通知を手渡すことが「誠意」です。文書一枚の解雇となれば、労働者の反発もより強くなります。また、労組側の主張の「希望退職者を募集するなど努力義務を果たしておらず、不当だ」という主張の根拠ともなります。

ふたつ目の会社側のまずい点は、社長の「三春屋ののれんを残すため」という言葉です。解雇される労働者にとって、「のれん」などどうでもいいことです。もちろん、社長は「事業継続のため」という意味で「のれん」という表現をつかったのでしょうが、取りようによっては、「永禄年間から続く三春屋の名前を残すためには労働者の解雇は仕方がない」と経営側が上から目線で思っているとも見えてしまいます。

「解雇は避けられないものだから、人間どおしの感情の問題や修羅場は無駄だ」ということを、もし経営者が考えているとしたら、地域の協力を得て存続するデパートのとしては失格ということでしょう。

今後の問題点は2つでしょう。

  • 解雇された労働者に「特別退職金」はあるのか(無理なような気もします)
  • 経営側で責任をとって辞任する者がいるのか

昭和25年、朝鮮戦争前にトヨタは経営危機に陥りました。「乏しきを分かつ精神に立ち、人員整理は行わない」との方針で労使と話し合いを続けてきましたが、銀行からの融資がなく倒産する危機に直面し、人員整理が避けられない状況となり、約2,000人が退職しました。そして、社長の豊田喜一郎は辞任をしました。

「整理解雇」を行うということは、企業の信頼の危機です。それを救う者がいるとしたら、経営者の進退の覚悟のような気がします。

この「三春屋」の従業員の再就職手続きが、早期に進みますことを祈ります。

パワハラ教育について

(小森川林道を行く・山梨県北杜市、by T.M)

8/18(水) 20:04配信 読売新聞オンライン

 部下に暴力を振るったとして、埼玉県警は18日、大宮署の男性警部補(39)を暴行容疑でさいたま地検に書類送検した。部下3人に暴言を吐くパワーハラスメント行為も確認され、県警は同日、戒告の懲戒処分とした。

 発表によると、警部補は5月12日夜、さいたま市内の居酒屋に呼び出した部下の男性巡査部長に胸ぐらやあごをつかむなどの暴行を加えた疑い。警部補は酒に酔っていて、「態度が気にくわなかった」と説明。同市内では当時、新型コロナウイルスの感染拡大で「まん延防止等重点措置」が適用されており、県警は飲食を伴う会合の自粛を通達していた。

 また、県警の内部調査で、警部補が数年前から部下3人に対し、「育った環境を疑う」「精神科に行った方がいい」などと暴言を吐いていたことも判明。警部補は「早く一人前にしたかった。適正な指導だと思っていた」と話しているという。

このコロナ禍にあって、埼玉県警何やってんだと言いたいような記事です。しかし、パワハラって多いですよね。「管理職教育」何やっているんでしょう・・・

という訳で、今回は「教育」の話です。

「職長教育」の講師を、私は年に10回以上やってます。「職長教育」とは、労働安全衛生法第60条により規定された教育で、製造業や建設業の職長(5~20名の職員のリーダー)となる人が受講しなければならないものです。製造業の場合は、講習時間12時間で、教育の目的は、労働安全衛生及び労務管理について、職場リーダーの基本的知識を得ることです。

この職長教育が、他の法定講習と違うことは、「討議法」で行われるということです。「討議法」とは、ひとつのテーマを数人で討論する手法ですが、これがけっこう評判が良いものです。受講生たちは、ただ聴講するだけの教育と違い、自分の意見を持つことが義務づけられ、それについて他者とコミュニケーションを取るというで、講義内容の深い理解が得られるようです。

そんな受講生の満足度が高い職長教育ですが、講師として私が悩むことがあります。それは、「労務管理」をどう教えるかということについてです。

職長教育の内容は90%が労働安全衛生に関することで、労務管理に関することは10%ぐらいです。労働安全衛生のテーマである「リスクアセスメント」「災害調査」「作業手順書の作成」等については、質の高い教育をしている自負はあります。でも、職長が部下に対し「どのように指示するか」「どのように個人面接するか」等の労務管理のテーマになると、私は原則論を述べるに留まります。例えば、次のようなことについてです。

「コミニュケーション能力」「知識技能の力」「人を育てる力状況を総合的に把握判断し対応できる問題解決力」「率先垂範しルール違反者には厳しくいさめる実行力指導力」等

教えていて恥ずかしくなります。これらのことは、私が行政の中にいて部下を持っていた時に、まったく出来なかったことだからです。部下に嫌われたこともあります、部下の信頼を失ったこともあります。今でも、その時にどのように部下に接してたらよかったのかは分かりません。

でも、完璧な上司っていなかったような気がします。

労務管理のことに悩む講師が基本的なことのみをテキストに沿って教える。労務管理の研修っていうのは、結局どこもそんな物じゃないでしょうか。

冒頭のパワハラの警部補も「管理職研修」は受講していたと思います。しかし、労務管理の能力は身につかなかったようです。というか最初から身につける気などなかったのかもしれません。

部下を持ち管理するということは、その人の知性と誠実さの総合力なのであって、講義で基本事項を教えてもらっても、それを育てる地力がその人にないと、育たぬものなのでしょう。

パワハラで苦しまれれていらっしゃる方々、パワハラをする者の多くは実は「パワハラ」をじている自覚はあるものです。なぜなら、パワハラ教育等を受講している人が多いからです。それでも、パワハラをするということは、いじめっ子がいじめをすることと同じで、非常に低レヴェルの倫理観をもっている人です(仕事の能力は知りませんが)。

問題がおきた時は、コンプラインス委員会へ申立しましょう。そのような人には、それしか解決策はありません。それができない時は、労働局の相談コーナーに行きましょう。

週刊誌報道

(1990年式ブルーバードSSS)

週刊「新潮」が先週こんな記事を出しました。

 滞在先のニューヨークで司法試験を終えた小室圭さんは、一時帰国せずに現地で就職するという。そんな折、小室さんの母・佳代さんが長年勤めている洋菓子店でトラブルを起こし、現在無断欠勤中であることが週刊新潮の取材で分かった。

 佳代さんは現在、東急東横線沿線にある老舗洋菓子店に社員として勤務している。同店の関係者は、

「佳代さんは現在、自身が主張する“労災”をめぐって店と大揉めしています」と明かすのだ。

「6月上旬だったと思います。彼女が職場に診断書を持参して『休ませてください』と言う。聞けば数日前、夕刻の終業後に更衣室で仕事用の履物から自分の靴に履き替えようとした時、姿勢を崩してアキレス腱を痛めてしまったというのです」(同)

 実際に、勤務先の近くの整形外科医院で作成された診断書には「アキレス腱断裂」とあったという。

「ただ、誰もその時の“事故”を見ておらず、彼女がその日、どうやって帰ったのかもわからない。店としては本人の説明を聞くしかありませんでしたが、診断書を持ってきた時も、足にギプスはしていたものの、普通に歩いていたのです」(同)

「懲戒解雇ですって?」店側は6月いっぱいの休職を認めたというが、

「7月になっても彼女は出勤しませんでした。しかも無断欠勤です。店が契約している社会保険労務士の助言もあり、社長が佳代さんに連絡を取ったのですが、彼女は平然と『(自分の)弁護士から連絡がなかったですか?』などと言ってのけた。社長も堪忍袋の緒が切れて『どうして連絡をしてこないのか。本来ならば懲戒解雇になってもおかしくないんだ』と、怒りをあらわに問い詰めたのですが、佳代さんは『えっ、懲戒解雇ですって? 弁護士さんに相談します』と言い残し、電話を切ってしまいました」(同)

 その後、佳代さんの代理人から店側に連絡があったものの、社長は事故があったことを事業主として証明する書類に署名していない。今回、仮に労災が認められた場合、大まかには月給を日割りにした日給の8割が休業中は支給されることになる。現在も佳代さんは無断欠勤が続き、給料は支払われず、勤務シフトからもすでに外されているという。

私は週刊新潮という雑誌が好きです。その編集方針には敬意さえ抱いています。日本でジャーナリズムという名に値するのは、「新潮」と「文春」だけだと思ったこともあります。

でも、この記事は頂けません。「労災」のことを茶化さないで下さい。

記事からの推測ですが、被災者は事業主の協力を得ずに、所轄労働基準監督署長に労災申請をしたように思えます。

「夕刻の終業後に更衣室で仕事用の履物から自分の靴に履き替えようとした時、姿勢を崩してアキレス腱を痛めてしまった」

「目撃者はいない」

この調査の所轄監督署の労災担当の職員はとても苦労していると思います。「無理な動作によるアキレス腱断裂」の労災認定事例はありますので、現場職員は現場確認をして、被災者及び同僚、診断書を書いた医師等から事情を聴き、似たような事案がないか調べ、必要があれば外部の意見も尋ね、何度も署内会議で議論して結論を出すものと思われます。確かに、「労働者の勘違いによる労災請求」及び本当に少数ですが「労働者の悪意による労災請求」の事例はありますが、監督署の調査結果がでるまで、あらゆる論評は避けるべきでしょう。

週刊新潮は、この記事によって、被災者へマイナスの印象操作を行いたいようですが、そのようなことに労災事案を利用しないで下さい。

この記事の中から、間違っているものを指摘します。

「店側は6月いっぱいの休職を認めた」と記事にありますが、仮に労災だとしたら、「休職を認めてもらう」べきものではありません。会社側が頭を下げて「労災申し訳なかった。治るまで休んでくれ」と言うべきものです。

また、「7月まで休んでいたから無断欠勤だ」という論理も、仮に労災とするなら通りません。いつまで労災被災者の休業が必要かは、事業主が把握すべき義務があるからです。

事業主が「事故があったことを事業主として証明する書類に署名していない」ことは、このケースでは当然なことでしょう。事実関係を把握していない以上、そのようなことを認めてはいけません。でも、「労災がなかったこと」を確認したのでもないので、このことについては結論がでるまで、マスコミの取材等には今後応じない方が良いと思います。