(秩父ミューズパークからの武甲山、by T.M)
何か最近クルド人の話題をよく聞きます。
文化の違う外国人と一緒に住んだり、働く時に、思いもかけないアクシデントに会うことがあります。何回かに分けて、文化の違いから外国人労働者のトラブルに巻き込まれた件を紹介します。
Xという産廃会社がありました。そこはアジア系外国人のYが経営する会社で、従業員が200人ほどいました。労働者で日本人は20人ほどで、後はアジア系やアフリカ系の外国人労働者が働いていました。アフリカのAという国出身の数が一番多く、30名ほどでした。A出身の労働者のうち、日本語を話せるのは数名でした。
(注)労働基準監督署は入管とは連携していません。少なくとも、私が現役の時代はそうでした(今はどうでしょうか)。不法就労の外国人を見つけても、入管に通報してはいけないということになっていました。労働基準法は「国籍の区別なく」労働者を保護することを目的としていて、例え不法就労の外国人でも保護すべきであり、労働基準監督署への申告をしやすくするために通報はしないのです。まあ、その方針の是非はともかくとして、かつて、労働基準監督署へ申告したことで、不法就労が判明し、労働基準監督署へ某団体から激しい抗議をしたそうです。
Xは産廃業について、いくつかの不法行為が公になり、経営者のYは仕事を廃業することにしました。その際に、数か月の賃金不払いを行い、ある日突然、工場に「今日から、会社を閉鎖します」と張り紙をしたまま雲隠れしてしみました。
労働基準監督署のこの事件を知ったのは、Tという労働組合からの通報でした。監督署では大型で、かつ悪質な賃金不払い事件なので、当然司法事件を視野にいれ調査を開始しはじめました。TにはXのほとんどの労働者が加入し、A出身の労働者たちの日本語が分かる代表3名も加入していました。
そして、労働組合Tの協力もあってYと接触が成功しました。そこでYを取調べしようとしたところ。Tから「まず労働組合と交渉をさせて欲しい」というも申し入れがありました。賃金不払い等で立件しても、労働者にはお金が入らないので、取り敢えず労働組合の対応を見守ることにしました。
すると、労働組合の交渉及び監督署の刑事事件に移行するという強硬姿勢のためか、Yは「未払い賃金、解雇予告手当、慰労金、労働組合への和解金」をすべて支払いました。
YとTで書面が交わされ、労働基準監督署も労働組合も全てが終わったと思い、監督署は司法処分を見送りました。すると、Tよりも過激なKという労働組合から
「A出身の労働者に賃金が払われていない」
との連絡がありました。監督署が事情を確認したとこと、Tに加入していた3人のA出身の労働者はA出身の労働者たちの代表でも何でもなく、Yが支払ったA出身の労働者への賃金がどこにいったかは不明となっていました。3人のA出身の労働者とは連絡がとれなくなっていました。
監督署はK労働組合に事情と経過を説明しました。そして、残りのA出身の労働者についてもT労働組合で交渉を継続してみたらどうか提案しました。すると、K労働組合は
「文化の違いですよね。よくあります」
といって、意外とすんなり理解してくれました。TもKも、けっこう監督署とは対立する労働組合なんですが、理をもって説明すれば分かってくれる方も多数います。
さて、こんな訳で大型賃金不払い事件は後味が悪い結末になってしまいましたが、外国人労働者は同国人どおしだからといって結束している訳ではないのだと、改めて思いました。