連休なのに仕事です

(本牧ふ頭B突堤からのベイブリッジ、by T.M)

休明けに「衛生管理者」の受験準備講習の「法令」について講師をします。

この講習内容で講師をするのは、初めてです。

時間は、3日間でトータル12時間。

この連休中に、過去のテスト10回分、トータル140問の過去問の精査を行い、分析して、資料を作成しています。

この歳で新しいことに挑戦できることを喜ぶとともに、あまりのハードワークに音を上げています。

私の講習会に来られた方全員の合格を目指しますが、年寄には辛い準備です。

そんな訳で、今週と来週のブログ更新を休みます。再開は5月15日です。

では、皆さん良き連休を!

そして、仕事が休めぬエッセンシャルワーカーの方々に感謝の意を表します。

ありがとうございます。

ウィル・スミスに思う

(十国峠からの富士山、by T.M)

ウィル・スミス、かっこよかったです。

病気の奥さんを、大多数の前でジョークの種にされたら、誰だって怒るのは当たり前です。ウィル・スミスのことを、私は絶対に支持します・・・

とこう思っていたけど、よくよく考えてみたら、これはそんな単純なことではないなと思いました。何よりもアカデミーが本当に困っているだろうと思います。

もし、頭の禿げている中年男性が、そのことを女性に馬鹿にされたので、その女性をビンタしたとしたら、やはり非難されるのは中年男性ということになります。

ウィル・スミスの奥さんの病気の脱毛症と、男性の加齢によるハゲを一緒にするなという意見もあると思いますが、心を傷つけるのは一緒です。ウィル・スミスに許されて、中年男性に許されないというのなら、論理は破綻していると思います。

私の専門領域の労働問題に話を移します。

「パワハラが横行している職場において、上司の言動に切れて、部下が上司をぶん殴ってしまう」

これって、ぶん殴った部下が懲戒処分にされても、法的には問題ないと思います。例え、そのパワハラの内容が、今回のウィル・スミスの事件のように、部下の家族への耐え難い誹謗中傷であったとしてもです。悲しいことだけど、それが法律の論理です。

酷いパワハラについては、事実関係を明確にして、できれば録音等の物的証拠をもって対抗しなければなりません。「言葉の暴力」はリアルの暴力より軽く見られるのです。

さて、私の体験を書きます。私はハゲです。30代前半から、前髪が段々となくなり、今では数本になりました。完全になくなれば、まだ見ようがあるのですが、数本残っているのが惨めです。私のこの頭髪について、「ハゲ」と面罵されたことが何回もあります。

監督署で、仕事にあたっていた時のことです。相手が事業主であったこともありますし、労働者だったこともありますし、エセ労働組合だったこともあります。言われるたびに、随分悔しい思いをしました。

ウィル・スミスのように、その時ぶん殴っていたら、「公務員が市民に暴力」ということで叩かれていたでしょう。ある意味、ウィル・スミスの奥さんが羨ましく思いえます。

先日、監督官を目指したいという方からメールを頂きましたが、監督官という仕事には、そういうこともあるよということを伝えておきたいと思います。

ある質問

( 江戸時代建立の吉田家住宅 ・埼玉県小川町、by T.M)

さて、多くの企業では4月1日が人事異動。皆様はいかがだったでしょうか。

この季節になると、なぜか「人事」の相談を私にする人がいます。私に人事の相談をする人は、当然その人事に不満を持つ人です。私が元労働基準監督官ということで、労働問題に詳しいと思っているのです。

余談になりますが、「自分はなぜ出世しないのか?」 こんなことを私に尋ねても無駄です。なぜなら私自身が組織の中で、まったく出世しなかった者であり、本省回りの労働基準監督官を除き、労働基準監督官のほとんどの者が最後にはその地位につくであろう「労働基準監督署長」になれなかった者だからです。

(もっとも、退職した後では、「元労働基準監督署長」より前職を生かし「現場の労働基準監督官」に近い仕事をして、それなりの安定した収入を得ているのだから人生は分からない。)

もし、私が「人事」に関して相談に乗れるとしたら、「その人事異動が労働基準法上正当なものであるかどうか」ということに対する意見を述べることです。

今回の相談は次のようなものでした。

相談者は技術系職員。今年64歳となるもので、60歳以降は常勤嘱託として1年更新の契約を行っています。彼は昨年度まで、「教育及び研究」職についていましたが、今年度より、彼の経験を生かした「ISO及びJISの評価員」に任命されました。これを彼は怒っているのです。昨年度までの彼の「研究」は中途半端で終了となるからです。

彼は、私に次のように訴えました。

「60歳の時に『研究職』という辞令をもらった。それが、今回は『JISの評価員』となった。これは問題ではないのか?」

私は答えました。

「それは、単に労働条件が変更されただけだ。労働条件が不利益変更されたというなら問題となるが、『研究職』から『JISの評価員』への変更は問題ない。これが、『単純作業』への変更、あるいは『リストラ目当ての追い出し部屋等』への異動なら問題となるが、今回の異動はあなたのキャリアが否定された訳ではない。」

彼の不満はある意味、とても「贅沢でわがまま」なものなのです。でも、彼がどうしても「ひと言」を人事に言いたいみたいなんで、次のようなアドバイスをしておきました。

「研究職の場合は残業代がつかなくて、『給料の16%にあたる研究職手当』が支払われていたはずだ。審査員になったら、残業代がつくかわりに、その手当がなくなる。これは不利益変更と主張できる可能性がある」

まあ、無理でしょうけど・・・。ただ、文句は言えるのではないかと思います。

会社員である限り、「職種の変更」については、基本的に異議はできません。「ジョブ型雇用」「メンバーシップ型雇用」等の議論はあるようですが、雇用に安定性を求めるなら受け入れるべきです。

ただ、見逃されがちですが、「職種の変更に伴う、賃金・労働時間等の不利益変更」については争うことが可能です。なにに文句を言えて、何は受入れなければいけないのか。会社に文句を言う前に、冷静に考えて見る必要があります。

こんなメールがきました

(西伊豆・土肥桜、by T.M)

こんなメールがきました。年寄に質問のメールとはありがたいばかりです。

私は新卒で賃貸のリフォーム会社に就職し、約2年働き、昨年4月に早期退職しました。

現在は病院で清掃のアルバイトをしながら、労働基準監督官を目指しております。

監督官の仕事について深く知りたいと思い、情報収集していたところ、

おばら様のブログにたどり着き、拝見致しました。

それでさらに、こんな質問も来ました。

昨日ご連絡させていただいた××です。

ご返信頂き、ありがとうございます。

下記の点について、ご教示頂けますでしょうか。

①        監督官は労働者を働く人を守る立場にありますが、労使双方の観点から、法に基づいて「中立」な対応が求められている事を強く感じました。

仕事をする際、この「中立」の意識はどうすれば保てるものでしょうか。

②        正義感や責任感、情熱を持ち、冷静に対応できる方が監督官には向いており、

実際に監督官として働いている方、適性のある方もそのような人物だというイメージがあるのですが、小原様のご経験上、実際に働いている方の役に立てている方はどのような特徴がありますでしょうか。

③        監督官として働きだす前に、日常から意識しておくとよい事や意外とこのような事も大切だという事があれば教えて頂けますと幸いです。

①が一番お聞きしたい質問です。先日、ある労働局のWeb説明会がありました。

一方への肩入れはいけない。「労働者を守る」という意識が監督官になる前は強かったが、きちんと使用者の意見も聞き、中立の立場から対応しないとならない部分が監督官としての良い部分であり大変な事の一つだと伺いました。

  双方の意見を中立的な観点から考え、出来る限り公平に対応する事が大切なことは    分かったのですが、歯がゆい思いをする事が何度もあるのではないかと感じています。本当は労働者の方を優先したい…など。

中立の立場を保ち続けるには、普段からどういう心持ちでいる事が大切でしょうか。

私は、「先入観を持たずどんな事でもまずは経験してみる、そのあとで結果が分かる。」ということを普段から大切にはしているのですが…

それでこんな返事を書きました。

分かる範囲で質問に答えます。

①監督官は労働者を働く人を守る立場にありますが、労使双方の観点から、法に基づいて「中立」な対応が求められている事を強く感じました。仕事をする際、この「中立」の意識はどうすれば保てるものでしょうか。

「中立」という言い方も、ちょっと語弊を招くような気がします。監督官の仕事というのは、要するに

「労働基準法、労働安全衛生法に違反している事業場に法規を守らせる」

ということです。そのために、調査権限、司法警察権限が与えられています。それ以上でも、それ以下でもありません。

労働基準法等は労働者の保護法規ですから、監督官の仕事をしていたら「結果として、労働者の立場に立っていたケースが多い」というだけです。

逆に、法に規定されていないことは一切できません。そのことで、「労働者の期待を裏切る」ケースも多々あります。

仕事のモチベーションと、仕事の立ち位置は区別しなければなりません。

②正義感や責任感、情熱を持ち、冷静に対応できる方が監督官には向いており、・・・

どんな者が監督官に向いているかなんては、答えられません。

組織の中で「こいつは優秀な奴だ」と思われていても、労働者や事業主から「保身だけの奴」と馬鹿にされていることもありますし、その逆もあります。

私自身は、「仕事を好きになる奴」「仕事に誇りを持てる者」が仕事に向いている者だと思いますが、じゃあどんな者がそういう奴だと尋ねられと少し困ります。

結論から言うと、「なってみなきゃ分かりません」ということです。

私自身は、「人のためになっている」「色々な職場が見れて楽しい」ということで、けっこう仕事は好きでした。

③監督官として働きだす前に、日常から意識しておくとよい事や意外とこのような事も大切だという事があれば教えて頂けますと幸いです。

あなたは今、監督官試験に受かることだけ目指して下さい。すなわち、受験勉強だけ意識して下さい

「私は新卒で賃貸のリフォーム会社に就職し、約2年働き、昨年4月に早期退職しました。現在は病院で清掃のアルバイトをしながら、労働基準監督官を目指しております。」

あなたのこの経歴で、監督官の資質は十分あると思います。

あなたがA監督官(法文系監督官)を目指しているのか、B監督官(技術系監督官)を目指しているのかは分かりませんが、A監督官は「技術的なこと」に、B監督官は「法律的なこと」に勉強不足を必ず感じます。

でも、そんなもの3年もたてばなんとかなります。

本で得られる知識なんて、しゃせんそんなものです。

本当の勉強は、体験から得られます。そして今、あなたはその体験をしています。

ぜひ、あなたのような経歴の方が監督官になって欲しいと思います。

こんな返事でよければ、いくらでも書きますので、何か質問ある方は私にメールを下さい。

お待ちしています。

休みます

(ブダベスト、ユダヤ人街の古いアパート)

御来訪頂きありがとうございます。

仕事の都合により今月は更新を休みます。

再開は3月からです。