普通の日記(29年8月11日)

(ポルトのワイン工場で眠る酒)

今日の話は、ラジオ体操についてです。7月25日のNHKニュースです。

「浜松市に本社を置く自動車メーカーのスズキが牧之原市の工場で朝の体操や朝礼を労働時間に含めていなかったとして労働基準監督署から是正勧告を受け、従業員に未払いの賃金およそ1000万円を支払ったことがわかりました。是正勧告を受けたのは牧之原市にあるスズキの相良工場です。

スズキによりますと相良工場では、始業時間の前に行っていたおよそ10分間の体操や朝礼について労働時間に含めていなかったということです。従業員からの情報で島田労働基準監督署が立ち入り調査を行い、先月、体操や朝礼の時間を労働時間として把握するよう是正勧告を行いました。

勧告を受けてスズキは工場内で働く従業員のうちおよそ500人に対し、今の勤務制度になった去年6月からことし2月までの未払い分の賃金、あわせておよそ1000万円を今月支払ったということです。(NHKニュース)」

労働基準監督署の取った措置については、あたり前のことだと思います。「始業前のラジオ体操が、使用者の指揮命令下にある」以上は、当然労働時間となるのですから、賃金の支払いが必要となります。

私が違和感を持つのは、「なぜ、ラジオ体操が強制されたのか」ということです。

始業前にラジオ体操をする理由は何なのでしょうか。これは、従業員の生活習慣病対策及び腰痛対策のためです。ラジオ体操の健康への効力については、「NPO法人 全国ラジオ体操連盟」は次のように述べています。

「ラジオ体操は、人間の体をまんべんなく動かすために必要な運動を組み合わせてつくられています。しかも、健康な人なら負荷も少なく、だれでも手軽にできる体操です。これを毎日続けることで、加齢や生活の偏りなどが主な原因となる体のきしみを取り除き、人間本来がもっている機能をもとの状態に戻し、維持する効果があります。

事実、ラジオ体操会に毎日参加するようになった人の多くから、風邪をひきにくくなったという話も聞きます。ほかにも血圧や血糖値が下がった、坐骨神経痛やギックリ腰の症状が軽くなったという声を聞きますが、実はラジオ体操がこれらの症状を改善させたのではなく、ラジオ体操を継続することで体全体の血流がよくなり、筋肉に弾力性ができ、その結果、症状が緩和されたと考えるほうが正しいのです。

つまりラジオ体操は、漢方薬のようにじわじわと体のなかに染み込み、もとの健全な状態に戻す働きをしたのです。決して即効性があるものではありません。(NPO法人 全国ラジオ体操連盟のHPより)」

企業が朝のラジオ体操を辞めてしまった時のことを想像してみましょう。その場合、従業員が「腰痛で労災認定」されたら、企業は「ラジオ体操をしていなかったから、腰痛は発生した。だから安全配慮義務違反だ」ということになるでしょうか。それは、さすがに無理があるような気がします。

そもそも、ラジオ体操というのは、仕事が始まる前に仲間どうしが集まって体をほぐし、気分良く仕事をするために行うものです。この「気分良く」というのがとても大事なことです。

「気分良く」ラジオ体操を行うためには、従業員の自主性を尊重し、例え参加しない従業員がいたとしても大目に見ることが肝要です。従業員が自主的に行うこのようなラジオ体操なら、始業前に行われることがあたり前で、会社側は場所を提供しているだけということになります。また、従業員の健康のために、会社が勧奨し協力することは、とても素晴らしいものとなります。

そのようなラジオ体操がいつの間にか、「従業員への強制」となり、労働時間となってしまいます。この過程が私は問題のような気がします。これは、「会社の仲間どうしの飲み会(コミュニケーション)が、いつの間にか職場の慣例業務となり、強制となる」過程と似ている気がします。

(この項続く)