レックの火災事故について

(新橋〜横浜間鉄道開業時の一号機関車、by T.M)

4/29 静岡放送

2020年、静岡県吉田町の工場で消防隊員ら4人が死亡した火災で、静岡県警が社員2人を書類送検したことをうけ、会社側が反論する異例の会見を開いた。「社員の管理責任は問えない」とする会社側の主張とは?

(レック 貝方士利浩専務)

「当社としては事故調査委員会で『原因は特定できなかった』と結論づけている。原因を特定できないものについては現場の管理責任者の責任は問えないだろうと認識している」

静岡県警の捜査に強い口調で反論したのは、工場で火災が発生した日用品メーカー「レック」の役員。

この火災は2020年7月、吉田町にあるレックの工場で起きたもので、工場の中で状況を確認していた消防士と警察官の合わせて4人が逃げ遅れて死亡した。

この火災の原因について県警は「工場で製造した洗剤から出火した」として、発火した洗剤に含まれていた「過炭酸ナトリウム」が熱で化学反応を起こし、爆発的な延焼に至ったと説明。

「過炭酸ナトリウム」の適切な管理や火災を防ぐための措置などを怠ったとして、4月28日、工場で品質管理などを担当していた責任者2人を業務上過失致死傷などの疑いで書類送検した。

これに対し4月29日、急きょ記者会見を開いたレック。会社の事故調査委員会の報告では「出火原因の特定に至らなかった」として、県警に対し「原因が特定されていないのに社員の責任は問えない」と反論した。

(レック 青木光男会長)

「前提として消防の管理下におかれての事故。なぜ亡くなったからといって私たちの社員の責任なのか、私はそれだけは合点がいかない」

また、火災の原因をめぐってもレック側は「防火シャッターを開けたことで空気が一気に工場内に入り爆発した可能性が高い」という見解を示しているが、県警は「爆発時に防火シャッターは閉まっていた」と否定している。

県警の捜査に対し会社側が反論する異例の展開。レックは今後、書類送検された社員2人が起訴された場合、裁判で全面的に争う姿勢を示している。

亡くられた警察官様と消防士様のご冥福を祈ります。

消防署と警察と労働基準監督署は、必ず災害の現場で出会います。とは言っても、被災者救出を目的とする消防署と、災害原因を調べて、最終的には書類送検まで持っていく警察と労働基準監督署では少し立場は違います。また、警察が現場に常に20名以上は必ず来るのに、監督署は多くて4人くらいで、立場は対等とはいえ、監督署は警察の後ろに回って災害調査をしていた現実があります。しかし、現場で見かけると仲良くなり、検察庁へ警察職員と一緒に相談に行くようなことも何回かありました。また、消防署は救急車を出動させるため、事故の第一報が工場等から入りやすいため、警察署と監督署は情報ももらう立場でもありました。

この3年前の事件では、災害調査中に警察官と消防隊員が爆発の2次被害に合い4人亡くなったそうです。それが、今回の「業務上過失致死傷罪」の送検となった訳ですが、会社側としては、「警察」や「消防」の仕事の進め方が悪かったので死亡災害が起きたのに、なぜ自分たちが送検されるのだという不満があるということです。

警察や消防の方と一緒に現場で仕事をしてきた元監督官の私としては、殉職されている方がいるのに、会社側のこの発言はないと感情的には思います。でも、理性的に考えると、会社側の主張も正しいと思います。もし、労働基準監督官が災害調査中に亡くなったとしたら、それは、そのような危険な災害調査をさせた組織の問題であると思うからです。(「救助」を目的として危険な現場にいらした消防の方たちは、少し違うと思います)

会社側の対応としておかしいなと思うのは、「出火原因の特定に至らなかった」と述べている点です。事故の原因が判明していないということは、再発防止対策ができていないということです。すなわち同種災害が再び起きる可能性があることです。実際に、今回の災害の以前にも火災があったそうです。

「出火原因の特定に至らなかった」のに、現在も工場を稼働しているとしたら、そちらの方は大きな問題であると思います。