TDL

(オンブバッタ・山梨県清里、by T.M)

12/26 時事通信

東京ディズニーランド(TDL、千葉県浦安市)でキャラクターの着ぐるみを着てショーなどに出演していた元契約社員の30代女性が、神経や血流障害により肩や腕が痛む「胸郭出口症候群」を発症したのは、運営会社の安全配慮義務違反が原因として、「オリエンタルランド」に損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、千葉地裁であった。

 岡山忠広裁判長は請求を棄却した。

 訴状などによると、女性は2015年2月に入社し、重さ10~30キロの着ぐるみを1日3~6時間ほど着用してショーやパレードに出演。17年1月に胸郭出口症候群と診断され、同年8月に労災認定された。

 女性側は、トレーナーに上半身の痛みやしびれを複数回訴えたが、会社側はそのまま業務を継続させたなどと主張した。岡山裁判長は、トレーナーは外部の委託業者だったとして「会社への申告と同一視できない」と指摘。業務軽減が必要なほどの痛みだったと会社側が認識できたとはいえないと結論付けた。

TDLの着ぐるみを着た労働者の労災については、今年の3月に地裁で判決がでて、会社側が負けて、確か高裁に控訴中だと思ったら、この判決です。よくよく、調べて見ると別の事件でした。ということは、TDLは複数のこのような裁判を抱えているということでしょう。だとしたら、この判決理由については解せないものです。

労災発生の状況に違いがあるといっても、同じ労働をしていたものが何人も事故を起こすということは、

着ぐるみをきて行う業務

については、災害の発生の可能性が高いということになります。それなのに、記事の中にあるように、「労働者が異常を報告したトレーナーが外部の委託業者だったから会社側が認識できなかった」ということは、それでは危険な作業に従事する労働者は、誰に異常を報告したらよかったのかということです。

この論法が通じてしまうなら、会社組織をよく知らない契約社員が、体調の不良を自分の業務を管理している者に訴えたとしても、会社は「体調不良を訴えた相手が自社の社員でないので、自分たちは知らなかった」として、逃げてしまいます。

そもそも、この「トレーナー」という方はどんな立場なのでしょうか。TDLと労働契約を結ぶ労働者が、「業務を起因とした体調不良」を外部の委託業者に報告していることが異常なことです。

事実関係がよく分からず、判決の当否については判断できませんが、裁判所はその当たりを突っ込んで欲しいし、報道ももっと詳細なものが知りたいです。

さて、本日は大晦日。みなさん、よきお年をお迎え下さい。来年も本ブログをよろしくお願いします。

着替え時間

(最近のマイブームかじるバターアイス、by T.M)

12/22 神戸新聞

制服に着替える時間が労働時間に含まれるとして、兵庫県内に勤務する日本郵便(東京)の従業員ら44人が同社に対し、計約1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、神戸地裁であった。島岡大雄裁判長は着替えが労働時間と認め、計約320万円の支払いを命じた。

 判決理由で島岡裁判長は、職員が制服の着用や郵便局内の更衣室で着替えることを義務付けられていたと指摘。更衣時間は同社の指揮監督命令下に置かれていたと判断した。

 一方、2016年には同社グループ企業の社員が、着替えにかかった時間分の未払い賃金の支払いを求める訴訟を起こし、ほぼ全額を支払う内容で和解が成立していたことを受け、原告側は今回の未払いを「不法行為」と主張していたが、「不法行為が成立するような故意があるとはいえない」と退けた。

 日本郵便は「(請求棄却の)主張が認められず、控訴を予定している」とコメントした。

 判決によると、原告のうち31人は神戸市や高砂市など県内の郵便局に勤める正社員や再雇用社員ら。17年12月~20年11月、着替えにかかった時間分の賃金相当の損害金として1人当たり5万~42万円を求めていた。

何か裏があるのかな、この事件。「着替え時間は労働時間」、少し労働問題を齧ったことがある者なら、これは当たり前のこと。「三菱重工長崎造船所事件の最高裁判例」を、労務担当者が知らないはずはない。

それでも、日本郵便が頑なに争うということは、新聞記事に出ていない事実があるかもしれない。

ここでおさらいです。次のケースでは、「着替え時間」は労働時間となります。

  • 企業が制服を定めている。
  • 企業が制服の使用を労働時間内での着用のみ認めている。(通勤に使用は不可)

ここで問題になるのは、次のようなケースです。

  • 業務中について、作業服に着替えないと着衣が汚れる
  • 企業は、制服を支給しているが、仕事中にその着用は強制しない。

つまり、こういうことです。

「ウチは着替え時間を労働時間とはしません。着替えなくともけっこうです。衣服が汚れることを本人が気にしないなら、それでかまいません」

企業がこれを主張したら、労働基準監督署は何もできません。

また、こんなことを主張する人もいます。

「私は朝、ジョギングをして会社に行きます。会社ではスーツにネクタイ着用です。無言のルールでそう決められています。ジョギング姿で業務をしたら、上司から怒られるでしょう。だから、スーツに着替える時間を労働時間として認めて下さい。」

これは実際にあった事例です。

外国人労働者

(シラカバと紅葉・上州武尊山山麓、by T.M)

11/29 読売新聞

神奈川県内で昨年、トラックやバスなどの車両を使用する事業者の8割超で労働基準関係法の違反があったことが、神奈川労働局のまとめで分かった。運転手の担い手不足や時間外労働の制限で輸送能力が落ち込む「2024年問題」も懸念されるなか、職場の環境改善は大きな課題となる。

 発表によると、県内162の事業所のうち84・6%にあたる137事業所で、労働基準法や最低賃金法に違反があった。違反の内訳(重複あり)は、労働時間に関する内容が97事業所(59・9%)、時間外手当の未支給などが40事業所(24・7%)と続いた。時間外労働が1か月で222時間となるドライバーもいたという。

 違反した事業者数は、20年が125事業所、21年が104事業所と高止まりしている。労働局の担当者は「人手不足が常態化し、しわ寄せを受けているドライバーもいる」と分析する。

 業界の労働時間を巡っては、来年4月から「働き方改革関連法」により、時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、運転手の長時間労働の是正が期待される。ただ、物流停滞による社会への影響のほか、賃金減少などによってドライバーの人手不足が進むおそれもある。労働局監督課の哘崎雅夫課長は「減った労働時間分の賃金を補う仕組みが必要だ」と指摘する。

2024年問題って、運送業も建設業も同じように考えられているけど、本質的に違う問題があるんですよね。

建設業は、例えば万博の問題が典型的なんですが、建設業自体が「一過性の受注量の増大」をあてにして、中々「人を増やすことに踏み切れない」という問題があるんです。人を増やそうと思えば、奥の手があります。「外国人労働者」の雇用です。

運送業は、その手が使えないんです。現行の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」では、トラック運転手やタクシー運転手について技能実習生という名の外国人労働者が従事できないんです。だから、慢性的に人手不足となるのです。

私自身は、これ以上外国人労働者が増えることには懐疑的です。「文化の違う人が増えることがなんとなく不安だ」という思いもありますし、日本人労働者の賃金等労働条件が低くなってしまうのではないかという危惧もあります。しかし、なによりも

「外国人労働者及びその家族について、日本人と同じ権利を持つこと。医療、教育等の社会補償は当然であり、生活保護についても認めること」

について、日本人は覚悟ができていないのではないかと思うからです。

ただ、もし外国人が働く制度が変わり、トラック運転手やタクシー運転手へ外国人労働者がそこに雇用されることとなったら、けっこうWinWinの制度なるかもしれません。

農業は、労働基準法により「残業しても割増賃金を支払わなくてもよい」ということになっています。経済面の理由のみで日本で働きたい外国人労働者にとっては、運送業で働く方が合理的だと思います。

宝塚歌劇団

(タンポポと甲斐駒ヶ岳、by T.M)

日刊スポーツ 11/25

読売テレビの報道局解説委員長・高岡達之氏(58)が、25日に放送された読売テレビのバラエティー「今田耕司のネタバレMTG」(土曜午前11時55分)に出演。9月に宝塚歌劇団の25歳宙組団員が転落死した問題についてコメントした。

 遺族側は、死亡の背景にパワハラやいじめがあったと主張。それに対し、14日に会見した歌劇団側は過重労働を認めたものの「上級生によるいじめやパワハラは確認できなかった」とした。2月に一部で報じられたヘアアイロンによるやけど問題にしても、12月1日付で次期理事長就任が決まっている村上浩爾専務理事が「証拠となるものをお見せいただくようにお願いしたい」とコメントしていた。

 高岡氏は「来週以降、密室の沈黙が崩される」としたうえで、22日に労働基準監督署が立ち入り調査で労働時間や勤務実態などの聞き取りを行った事に触れ「見方によっては『マルサ』(国税調査部)より怖い。労働基準監督署の方は司法警察員。逮捕状が請求できるし、逮捕ができます。今、劇団の内部調査だから『答えたくない』という人がいるといいますが、労働基準監督署の調査は尋問ですので、答えないなんてことは許されません」。

 さらに労働時間について「これが本当に今までちゃんと管理していなかった。上級生に任せてました-なんてことになると、致命的な影響を受けます」と言い及んだ。

 団員が亡くなる直前1カ月の時間外労働について、歌劇団側は118時間以上(遺族側は277時間以上)と主張しているが、高岡氏は「法律上、過労死は80時間が危険ライン。公式の会見で認めた時間であったとしたって、すでに30時間以上超えている」と説明し「逆の言い方をすれば、労働基準監督署も問われますけどね。これだけバックに大きな企業のいる劇団ですから」と話した。

西宮労働基準監督署の職員の方々、頑張って下さい。とても難しい事案だと思います。この事案の結論によっては、大きな一石を投じることとなります。

死んだ劇団員と宝塚歌劇団は業務委託契約を締結していたということですが、これが「偽装委託契約」であり、本当は労働契約であったということに、労働基準監督署がメスを入れることができるかどうかがカギです。次のような問題にも関連してくると思います。

「相撲部屋と、関取以下部屋住みの力士とは労働契約でないのか?」

「落語家の弟子は、労働者でないのか?」

「試合時間以外の時間管理をされている野球選手は労働者ではないのか?」等々

この宝塚歌劇団の労働者性の問題について、最大の焦点は、

「契約切替え時の業務内容の変更」

となるでしょう。ウィキペディアによると、宝塚歌劇団は、入団後ある一定期間は労働契約を締結し、その後は業務委託契約となるそうです。今回亡くなった劇団員の方は、業務委託契約となって、まだ間もないとかいう話です。労働契約から業務契約へ変更があった時にどのような業務内容の変更があったのか?もし、業務内容に大きな変更がない場合は労働契約の継続とみなせますので、「偽装委託契約(偽装請負)」と見なせるような気がします。

残業拒否

(タンポポと八ヶ岳連峰、by T.M)

11/17 読売テレビ

関西空港などで航空機の誘導などを行う会社の労働組合が、長時間労働が改善されないとして12月から時間外労働をしないと会社に通告したことがわかりました。

 大阪府泉佐野市に本社を置く『スイスポートジャパン』は関西空港など6つの空港で航空機の誘導や荷物の積み降ろしなどの業務を行っています。

 『スイスポートジャパン』によりますと、約1400人の社員の9割が加入する労働組合から12月から一切、時間外労働を行わないと通告されたということです。航空需要が回復している一方で、人材確保が追いついておらず、長時間労働が改善されないことが理由だということです。

 斉藤鉄夫国交相「国際便の運航にも影響が懸念される事態であると、そのように国土交通省としても認識しております」

 『スイスポートジャパン』は、「組合と協議を続けている。改善して対応したい」とコメントしています。

この記事なんですが、もう少し分かり易く報道してくれないでしょうか。意味が分かりません。

労働の分野では、「日立製作所武蔵工場事件」という有名な最高裁判例があります。これは、残業命令を拒否した労働者を懲戒解雇したことが認められるか否かが争われました。結果は解雇は有効と判断されました。この時に、最高裁が残業命令を労働者側が拒否できない要件として示したのが次の3点です。

  • 適正な理由のある残業であること。
  • 就業規則に残業に関する記載があること
  • 時間外労働協定(36協定)が、過半数労働組合もしくは過半数労働者代表と締結されていること。

さて、この最高裁判例を踏まえ、上記の記事についてですが、2つの解釈ができます。

第一の解釈

今まで残業をしていたということ、及び従業員数1000人以上ということを考慮すると、就業規則には残業に係る記載があると思われる。そして、いわゆる「エッセンシャルワーカー」なので、当然に正当な残業命令である。

「就業規則への記載」「適正な残業命令」以外に「36協定」が存在したならば、残業拒否した労働者はすべて「処分対象」ということになってしまう。だから、今回の事件は「36協定の有効期間が11月で終了する」ので「更新の36協定」を過半数組合は締結しないことにしたという解釈。

第二の解釈

そもそも今までが「36協定以上の違法残業」をしていた。だから、今後は残業拒否をすることとしたという解釈。

「第一の解釈」のとおりであるなら、これは正当な組合活動ということになります。

「第二の貸釈」のとおりであるなら、違法残業を取り締まる労働基準監督署の出番という

ことになります。

せっかくのテレビ放映なのですから、「法違反の有無」くらいは確認して報道してもらいたいものです。