タイミー

(上信電鉄下仁田駅とポルシェ、by T.M)

10/6 時事通信

生活や仕事の空き時間を使って短時間働き、給与が即日支払われる「スキマ(隙間)バイト」の利用者が急増している。

即日払いが人気の理由だが、給与を立て替え払いする仲介アプリの運営企業が、利用者から金銭をだまし取られる被害が相次いでおり、業界団体は被害拡大を警戒している。

仲介業者の団体「スポットワーク協会」によると、主要4社と、3月に新規参入した「メルカリ ハロ」に登録した人数は9月時点で延べ約2500万人に上る。

仲介アプリの運営企業は、就労者に対し給与を即日立て替え払いし、月末に求人掲載した雇用主から手数料を上乗せした額を回収する。この仕組みを悪用し、雇用主役が架空の求人を掲載。就労者役が応募して、うその出退勤記録をアプリ側に申告して給与の立て替え払いを受ける例が昨年末から複数確認されている。

大阪では逮捕者も出た。アプリ運営会社から現金計約68万円を詐取したとして、府警は今年9月上旬、電子計算機使用詐欺容疑で、介護事業所の元経営者ら4人を逮捕した。4人は雇用主と就労者役に分かれて共謀していた。捜査関係者によると、被害総額は計430万円以上に上るとみられるという。

同協会の担当者は「不審な求人を出している雇用主がいないかなどのパトロールを各事業者で強化している」と説明。業界内での情報共有も強化する方針という。業界大手の「タイミー」(東京都港区)はこうした被害について「利用者の安心・安全を担保することが最優先だ」とコメントし、政府や警察の方針にのっとって対策を取る考えを示した。

この記事で紹介されたスポットワークのように、労働者に職業紹介をして、賃金を立替払いし、紹介先から紹介料と立替えた賃金を受取るといった有料職業紹介所は、昔からありました。「マネキン紹介所」、「家政婦紹介所」等がそうです。これらは厚生労働大臣認可の職業紹介所で、マッチングアプリを利用した現代のスッポトワークの業者も同じ許可を得ているようです。

昔から、こういう有料職業紹介所は労働基準監督署の監督官からは評判がいいです。なぜなら、「トラブルを起こさない」からです。ここが、許可をとらない「違法派遣業者」とは違います。

短時間の臨時職員に纏わる労働関係のトラブルは、監督署の窓口では昔から絶えません。一番大きな原因は、労働条件を書面で明示していないことから起きるトラブルです。「給料額が違う」「労働時間が違う」「仕事の内容が聞いていたのと違う」等々です。スポットワーク業者のタイミーのHPを見ても、その辺りの管理は徹底されているようです。

タイミー等のスポットワーク事業者は、労使関係のトラブルをどのように解決しているのでしょうか。「あんな労働者紹介しやがって、給料なんか払えるか。こっちが賠償金を取りたいくらいだ。」という事業主をどのようになだめているのでしょうか(元労働基準監督官監督官としては、このようなやり取りが容易に想像できます)。

多分、労働者に立替えた金は事業主が払ってくれない場合も多々あるのではないでしょうか。そんなときは、紹介会社の持ち出しで終わることも多いのではないかと推測します。もしかして、ボタンの掛け違いで労働者に賃金が支払われないとすると、大変な事態になるかもしれないからです。労働基準監督署に労働者から賃金不払いの申告がされ、それが監督署を通し地方労働局職業安定部にまで情報が入れば、そんな事業者を紹介した紹介会社の責任が問われ、職業紹介の大臣許可の取り消しということになってしまいます。

昔の「マネキン紹介所」や「家政婦紹介所」で労働基準法違反で許可取り消しになった事例は知りませんが、確か「監督署」から「職安(ハローワーク)」への通報事案に職業紹介所の不祥事事案が含まれていた記憶があります。

だから、タイミーみたいな企業は泣き寝入りのケースも多いと思います。でも、将来性のある業界。良好な雇用関係の維持に今後も頑張って欲しいと思います。

トラブルが起きないように事業者の指導をお願いします。監督署もハローワークもスポットワークの業者を応援していると思います。

お休みします

(松永安左エ門の旧邸「老欅荘」・小田原市、by T.M)

急に、今週末の新潟出張が決まりました。

来週末は、札幌出張です。

60代後半の老いぼれにもなっても、仕事があるということは、ありがたいことです。

でも、仕事の合間にブログを書くには、頭の回転がついて行きません。

御来訪された方には、まことに申し訳ないのですが、今週、来週とブログは休みます。

再開は10月12日です。

では、またお会いできるのを楽しみにしております。

大崎市民病院

(名物の出雲割子そば、by T.M)

9/6 仙台放送

大崎市民病院が医師や看護師など約1500人に勤務手当の一部を支給せず、労働基準監督署から是正勧告を受けた問題で、当初は支払いが難しいとして未払いとなっていた約8億円について、病院が一転して支払う方針を示しました。

9月6日の大崎市の定例会見で伊藤康志市長は「職員や患者に不安を与え、申し訳なく思う」と謝罪しました。

この問題は大崎市民病院が医師や看護師など約1500人の手当て10億5000万円を支払わなかったため、労基署から是正勧告を受けたもので、病院は昨年度分の2億3000万円は支払いましたが、残りの約8億円は経営難を理由に支払いは難しいとしていました。その後、労基署との協議の結果、病院は全額を支払うことを決めたということです。

大崎市 伊藤康志市長 「経営努力でどこまで追加支払いができるのか検討、指示した」

支払いを終える時期などは未定ということです。

まずは是正勧告をした古川労働基準監督署の方に、ご苦労さまと言いたいと思います。私も35年前に同監督署で監督官をしていました。当時はまだ「古川市」であって、新幹線が停車する市としてバブルの終末期の繁栄を謳歌していました。現在は周辺町村と合併し「大崎市」となりましたが、人口は合併前より減少しているようです。多分、賃金不払い等景気の悪い話も当時以上であると思いますが、後輩監督官が頑張っていることは嬉しいものです。この事件は、未払賃金を全額支払わなければ、当然終わらぬ話ですが、ゴールは見えてきたと思います。

しかし、この市長なんかずれたこと言っていますね。賃金未払は、労働者に対する「債務不履行」ということです。民間企業で、手形が落ちない等の債務不履行となったら、破産手続きをして債権債務を整理することが道理でしょう。だから、未払賃金を払えないなら、公益性の高い事業であるから市民のためを思い税金を投入し存続させるのか、資本主義の原則に従い破産手続きを行い病院を閉鎖させるのかのどちらかのはずです。どちらも市長が決断すべきところなのに、何か市長の言葉は無責任で他人事です。

もちろん、民間企業でしたらこういう場合、債権者との合意の元で債務の一部を免除する、返済期間を延長するなどして再建を目指す民事再生という手もあります。でも、それなら徹底的な経営の見直しをしなければなりませんが、なによりも債権者に納得してもらわなければなりません。この市長、債権者である労働者に頭を下げてお願いしているのでしょうか。冗談じゃなくて、「労働者に土下座する覚悟」はあるでしょうか。

私が良く知る賃金不払い事件というのは、どうも経営者が労働者を「債権者」と認めていないケースがよくありました。給料を払っていないのに、「自分は労働者を雇っているのだから自分の方が上だ」と考えているようでした。もし、市長がそのような方で、解決を引き延ばすなら、労働基準監督署は書類送検をすべきでしょう。通常、「公務員」については労働基準監督署は司法警察権限は適用できませんが、「市立病院」については権限があります。また、「市立病院」送検は全国的な大きなニュースになると思います。後輩諸君、頑張ってください。

トランスジェンダーと労働法

(ウルム市庁舎、by T.M)

8/10 日テレニュース

9日、パリオリンピックのボクシング女子66キロ級決勝で“性別”をめぐる議論の渦中にいるアルジェリアのエイマヌン・ハリフ選手が中国の楊柳選手に5対0で判定勝ちし、金メダルを獲得しました。

試合は終始、ハリフ選手の優勢で進み、鋭いパンチが決まるたびに会場中は大歓声に包まれました。

これまでの試合では、イタリアの選手が開始わずか46秒で棄権したり、別の選手が抗議の意を示すリアクションをしていたとSNS上で話題になったりする場面もありましたが、決勝戦の勝利直後には中国の楊選手と拳を突き合わせて互いに笑顔でたたえ合う様子がみられました。

試合後のインタビューでハリフ選手は、家族や観客らに感謝を述べた上で、「私は女性として生まれ、女性として育ち、参加資格を満たしている、それは間違いない」と改めて主張。世界に向けて「今後こうした誹謗中傷が無くなることを願っている」と話しました。

何か、この人のニュース聞いていたら改めて、「女性って何だろう、男性って何だろう」と考えました。難しいことは分からないけど、男女による法規制の差について、労働法制ではどうなっているか、説明します。

まず、労働安全の分野なんですが、妊産婦や年少者を除いて、女性労働者が男性労働者と比較して、体力面で保護されているのは、次の規定です。

「重量物の取扱いについて、男性は無制限だが、女性は断続労働で30kg、継続労働で20kg以上を取扱ってはならない」

これは刑事罰を伴なう法条文であり、この規定から判明するように、明らかに男女体力面の差を認めています。草薙剛主演の2020年日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画「ミッドナイトスワン」ではトランスジェンダー(出生の性別は男性、性自認は女性)の主人公(草薙)が、建設現場で重量物を運び悪戦苦闘する姿が描かれていましたが、このような場合の重量物の取扱いについては、労働基準法上今後どうなるのでしょうか?

次に労働衛生面ですが、これは安全面より規制があります。母性保護のため有害物質に汚染された場所(例、作業環境測定結果が第3管理区分の箇所等)等が全面的に就業禁止となります。これは、性自認が女性にしろ男性にしろ、「母性保護」が理由である就業制限の適用は安全面より難しい気がします。(出産能力がある性自認は男性の方の保護は不必要? 性自認は女性の方の母性保護はどうする?)

労働基準法設立から約80年、労働安全衛生法は50年以上の歴史を持ちます。何か、トランスジェンダーの方々の権利と保護を労働法の分野でも見直す時機かもしれません。

お休みです

(ローテンブルクの家並み、by T.M)

熱がでました。フラフラです。今日のブログ更新は中止します。

せっかく、お出で下さったのに申し訳ございません。