高齢者への安全教育について

(久里浜港の東京湾フェリー・県横須賀市、by T.M)

兄と母を2週間のうちに連続して亡くしてしまいましたが、2人が危篤状態の時によくタクシーに乗りました。私の自宅の横浜市の上大岡から、藤沢市の大きな病院2つに何度も往復しました。タクシー第はだいたい9000円くらいで、深夜には10000円くらいです。タクシー使用にあたっては、スマホアプリの「GO」が随分と役に立ってくれました。

このアプリを使用すると、どんな場所でもタクシーを呼ぶことができますし、クレジットカードの登録がされていますので、降りる時にお金の支払い等を気にすることもありません。母が死んだ日に、真夜中の1時頃に病院の誰もいない駐車場にタクシーがきてくれた時には感動さえ覚えました。

ところが、この「GO」アプリでトラブルが何回か起きました。みな高齢ドライバーの方たちでした。タクシーを降りようとしたら、「支払いがまだだ」と言われて呼び止められたことがあります。「支払いはアプリに登録されたキャッシュカードで行われた」と説明しても運転手さんは「機械には記録されていない」と言い、私を無銭乗車扱いします。急いでいたので、タクシー会社と運転手さんの名前を聞いてパスモ(交通系電子マネー)で支払いましたが、後から調べて見ると、やはり運転手さんの機械の操作ミスであることが判明しました。また、タクシーを降りる時に領収書を請求したところ、「アプリ決済だから領収書はでない」とおかしなことを言われたこともあります。また、アプリで指定した場所から離れたところにクルマを停められたことも何回もありますし、なぜか近くにいないのにアプリに反応し、30分以上の遠方から迎えにきてくれたこともあります。トラブルを起こすのは、みな高齢ドライバーの方たちでした。

また、仕事等タクシーを利用する時の運転手が操作するナビもこれもまた便利です。知らない町にいって、タクシーの運転手に「〇〇町××番地に行って」と依頼し、そこまで乗せていってくれる時に、ナビのありがたさをしみじみと感じます。ところが、せっかくナビがあるのに、地図を取り出し、「アーダ、コーダ」と言う運転手がいます。まるで、道を知らない私が悪いという態度でした。ナビの使い方でトラブルを起こすのは、これもまた、高齢ダイバーです。

さて、厚生労働省は7月21日に「令和2年・労働安全衛生調査(実態調査)」の結果を公表しましたが、それには「年齢別のストレス相談割合」が掲載されていました。それによると、何と若年層ほどストレス相談の割合が高くなっていて、60歳以上の労働者の相談割合は年齢別で最低ですが、これは実態を表わしている統計でしょうか?

また、「高年齢労働者に対する労働災害防止対策に関する事項」が記載されていて、「手すり、滑り止め、照明、標識等の設置、段差の解消等の実施」「作業スピード、作業姿勢、作業方法等の変更」等のいくつかのアンケート項目がありましたが、その中には

「IT活用についていけない人への教育」

の項目はありませんでした。

もちろん、ITリテラシイーが低いということは、「パソコン・スマホを購入できない」という収入格差の問題もあると思いますが、実際に「ナビ」も「GOアプリ」も使いこなせない高齢タクシー運転手出会うと、「本人たちもつらいだろうなと」思ってしまいます。企業は高齢者の活用のためにも、高齢者向けの「IT教育」を実施すべきでしょう。

上大岡駅前でタクシーを待っていると、時々「個人タクシー」が来ます。そのタクシーには「キャッシュオンリー」とか「いつもニコニコ現金払い」とかのシールが貼られています。みな、高齢ドライバーです。そういうクルマが、タクシー待ちの私の順番のところに当たると、私は次の人に順番を譲ります。見ていると、私のような人も多くいるようです。

このようなタクシーを避けるということは、現金払いが面倒なのでパスモが使えるクルマを待つということが一番の理由ですが、乗る前から「タクシー運転手はきっと頑固な人だろうな」と思ってしまうこともあります。きっと、タクシー運転手はそう思う私のことを、「タクシーでパスモが使えると思っている傲慢な奴」と思っていることでしょう。

個人タクシーの運転手は自分の裁量で支払い方法を選択することが可能ですが、勤務するドライバーであったら、今後は私のような客もどんどん増えてきますので、もはや自分たちが機械に慣れるしかありません。過重ストレス防止のためにも、自らが積極的なIT活用をすることが必要となってきていると思います。もちろんこれは、高齢者である私への戒でもあります。

マイナンバーについて

(神戸市迎賓館、by T.M)

兄が6月25日に死去したと思ったら、7月10日に母が死んでしまいました。驚きです。ここ一週間は後始末に終始しているのですが、兄(独身)と母の遺産を私が一人で相続することになりました。手続きについては、よく分からなかったのですが、法務局の「法定相続情報証明制度」を使って、相続に必要な証明書(法定相続一覧図)を作ってもらえばよいことに気付きました。その手続きがとても面倒です。故人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集しなければなりません。なんと、母の戸籍謄本については大正時代に作られた書類の写しを取寄せることが必要なのです。

それにしても、日本の役所って凄いですよね。そういう書類が残っているんですから。でも、管理が大変そうです。とても非効率ですよね。

この非効率さ故にビジネスが成り立つらしく、銀行からは「50万円で手続代行をする」と言われました。因みに弁護士に頼むと相続財産の3%くらい、司法書士への依頼では30万円くらいかかりそうです。

どうして、コンビニで相続手続きができないのでしょうか?

私は別に冗談を言っている訳ではありません。「相続人が複数いて」「相続人どおしの協議」が必要なケースを除いて、私一人が相続人の場合はマイナンバーカードを使用すれば、コンビニで「相続証明書」ができるようなシステムを作ればいいのです。

もし、マイナンバーカードに、現在行政が使用している個人情報を紐づけることが可能であるなら、何兆円もの費用の節約が可能でしょうし、コンビニで相続手続きや婚姻手続きができるようになるでしょう。行政の内部に昭和の終わりから平成の最後まで過ごした者は、アナログからデジタルに替わる時代を過ごしています。例えば、「事業場台帳」と言われた紙台帳から、1年がかりで基準システムに情報を入力して本当に業務効率は良くなりました。

例えば、「2021年度の転倒災害における60代以上高齢者の割合はどのくらいか?」という質問に、今では数分で答えられますが、昔は一日がかりで台帳をめくったものです。

もちろん、「マイナンバーに全ての個人情報を紐づけることで数兆円の行政改革を行う」というマイナンバー推進派の意見に対し、「情報が中央に集中すると、国による統制がきつくなり怖い」「情報漏洩した場合、全ての情報が漏洩してしまう」等の反対意見があるのは当然ですが、私はそれは別の次元の問題であると思います。私はデジタル推進賛成派です。

さて地方労働局では現在困ったことが起きているそうです。例の「今年の5月のアスベスト訴訟の最高裁での判決及びその後の和解」を受け、厚生労働省本省では、地方労働局に対し、局及び労働基準監督署で所有している監督記録・労災認定記録当をPDFにして本省に送付するように命じたそうです。ここで、困惑したのは現場の職員です。本省の意図は分かるものの、各労働局及び監督署には書類をPDFに効率よく変換する機械がないのです。

現在、多くの企業に導入されている「書類の束の裏表を1枚づつ読み取り、書類の束を瞬時にPDFとする機械」が地方労働局や監督署にはなく、旧式な書類1枚ごとにPDFに変換する機械しかないのです。どうやら、本省には最新式のPDF変換機があるようで、この命令を地方労働局にした者は、現場の実情をまったく理解してなかった模様です。

(注)この情報は6月末のもので、現在ではさすがに「是正」されているものです。

デジタル化を進めるにあたり、まずは全国の局・署にPDF変換機の設置からはじめなくてはならないとは、まだまだ道は遠そうです。

再び、ウーバーイーツ

(岩堂山からの眺め・神奈川県三浦市、by T.M)

私が2週間ブログを更新しなかったら、行政に勤務していた頃の友人が心配して電話をくれました。友達というのはありがたいものです。

その時に教えてもらったのですが、「ウーバーイーツ」が「一人親方として労災保険の特別加入」が認められたそうです。さっそく調べてみました。

時事ドットコムニュース、6月18日

労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)は18日の部会で、料理を宅配する「ウーバーイーツ」などの自転車配達員とフリーのITエンジニアについて、労災保険が利用できる特別加入制度の対象とすることを了承した。厚労省による省令改正を経て、9月にも保険料の自己負担で加入できるようになる。

 日本フードデリバリーサービス協会によると、自転車配達員は約9万人。労災保険の対象となるアルバイトではなく個人事業主として働く場合、業務中の交通事故などに対し十分に補償されないことが問題となっていた。9月以降は自ら加入を申し込んで保険料を負担すれば、治療費の支給や休業補償が受けられる。

私としたことが、兄が危篤状態にあったせいかもしれませんが、このニュースを見落としていました。私は、以前にこのブログで、ウーバーイーツで働く人に「労災保険の特別加入」が必要だと書きました。ですから、この記事については、少し思うことがあるのですが、それを書く前に「一人親方の労災制度」について解説します。

労災保険は労働者の仕事中又は通勤途上での万が一の災害に対して、その災害で被ったケガや病気に対して補償するためのものです。

労災保険は従業員を雇用した場合には事業主が必ず加入しなければならない基本的な制度です。本来労災保険というのは労働基準法の災害補償を元に作られた制度であり、保護の対象はあくまで「労働者」に限定されています。とはいっても、フリーランスや会社の経営者等外形的には労働者と変わらず、ある意味労働者とみなして保護するのが適当ではないかと思われる方々がいます。

そこで、労災保険は原則雇われている方を対象としたものですが、例外的に労働者に準じて保護することが適切と思われる業種で働くフリーランス(一人親方)の方でも、労災保険に加入する道を拓きました。それが、労災保険の特別加入制度です。

フリーランスの方が労災保険の特別加入できる業種とは従来は

1 自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人貨物運送業者など)

2 建設の事業(土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復、修理、変更、破壊もしくは解体又はその準備の事業)(大工、左官、とび職人など)

3 漁船による水産動植物の採捕の事業(7に該当する事業を除きます。)

4 林業の事業

5 医薬品の配置販売(医薬品医療機器等法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業)の事業

6 再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業

7 船員法第1条に規定する船員が行う事業

8 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業

9 シルバー人材センター加入者等

です。これらの業種に今後「ウーバーイーツ」も加わる訳です。

私は以前このブログで、「ウーバーイーツは無くさなければいけない」と書きました。その理由は、「働く人が事故に会った時の補償が何もない」ことだからでした。しかし、今回のこの「労災保険の特別加入が可能となる」ことにより、働く人が負担覚悟であるならば労災の備えができることになりました。今回のこの決定を素直に喜びたいと思います。

ただ、疑問に思うこともまだあります。ひとつには、「厚生労働省は、ウーバーイーツで働く人の労働者性を否定した」と認められてしまうことです。ウーバーイーツで働く人が「特別加入のフリーランス」でなく、「労働者」として労災申請した場合に、「ウーバーイーツで働く者は労働者でなく個人事業主だ。なぜなら厚生労働省がそれを決定したからだ」という結論になってしまいそうな気がするからです。

確かに、ウーバーイーツで働く人の労働者性は「働く時間が自由だから」という理由で否定されそうです。しかし、マッチングアプリを使った労働提供って、「短時間の労働契約の締結」っていうことも言えませんか(ちょっと強引な理屈でしょうか)?これって、もう少し議論が必要だった気もしますが・・・

次に思うことは、「ウーバーイーツは労災保険の特別加入をしない人には仕事をまわさなくなる」ようになるんじゃないかということです。既に特別加入が認められている建設業によくあることなんですが、元請けは労災保険の特別加入をしていない者以外の契約をしません。それは元請けにしてみれば当たり前のことで、自分の現場で事故が起きた時に、その補償を自分でできる者でないと面倒なことになるからです。もしウーバーイーツで、労災保険の特別加入が働くことの条件になったら、労災保険料を自分で払わなければならない働く人は実質的な報酬の引き下げとなります。

また、特別加入をするにあたっては、働く人はどこかの事務組合に加入しなけれならないのですが、その事務組合を会社側の関係団体で一括するとなったら目も当てられません。

なんか、ウーバーイーツで働く人の労働条件については一歩前進であるけど、今後何か問題が発生するような悪い予感がします。

お知らせ

私の兄、小原 巧(オバラ タクミ)が金曜日(6月25日)に、腎盂癌のため死去しました。享年66歳です。弟からみても早過ぎる別れだと思います。

生前、兄とご親交賜わった方々にご報告するとともに、故人に代わりまして生前のご厚誼に対し御礼申し上げます。

当ブログは今週及び来週を休載とします。再開は7月11日からです。

霞が関・地方労働局の残業

(関ケ原古戦場・石田三成笹尾山陣地、by T.M)

姫路市にあるN製鉄の工場で、エックス線を使う測定装置の点検中に事故が起き、男性社員が年間の限度量の数倍から数十倍に及ぶ大量の被ばくをした可能性があるそうです(この災害により健康障害を起こした方の早期の回復を祈ります)。似たような事故を私も災害調査をしたことがあります。

今から、25年前のことです。私の勤務する監督署の管内の病院で、医師の一人が過剰なX線を被爆しました。彼はX線を使用して患者を治療する専門家だったのですが、自分の腕に自信を持っていたのか、本来立ち入ってならない所に立入り、手の先が変色してしまい、X線の過剰被爆だと診断されたのです(この事故は幸いに大事に至りませんでした)。

この事故を災害調査したのですが、珍しい事故だったので本省の労働技官がその調査に同行しました(注 本省の労働技官に「調査権限」はありませんので、調査するためには「労働基準監督署」の調査に同行しなければなりません)。

災害調査が終わったのは夜の7時を過ぎていました。私たち署の職員は本省の技官を近くの私鉄の駅まで送っていきました。すると技官はこう言いました。「これから本省に戻ってひと仕事する」。

私たち、署の職員は「今日は災害調査をして疲れた。でも充実した一日だった。飯でも食って帰ろうか」という気分なのに、本日さらに仕事をするという本省の技官の後姿に、これが「霞が関の働き方」と思い感じ入った次第です。

霞が関の働き方については、地方労働局勤務の者は、その恐ろしさをよく耳にします。

「(予算編成期)に、大蔵省(当時の名)から3時に呼び出しを受けた。午後3時だと思っていたら、午前3時のことだった。」

「(本省に勤務する)妻が明け方に帰ってきたかと思ったら、歯を磨いてそのまま仕事に行った」

「国会待機の時に1週間家に帰れなかった」 等々

地方労働局のさらにまた末端の署でも、日をまたぐ残業というのは確かにありました。災害調査を夢中にやっていたら、終電車に乗れなかった。過重労働調査の深夜臨検をやるため署に泊まり込んだ。言いがかりをつけてきた労働者や事業主の話を聞いていたら、深夜になっていて、嫌がらせとして相手は時間を延ばしているのが分かっているため、腹を括って最後まで付き合った等々です。

でもなんだか本省の残業と署の残業って違うんですよね。最前線の現場にいる者と、後方で組織を守る者とでは仕事の質が違います。ストレスは本省勤めの方があるでしょう(と私は思います)。

(FNN 6月18日)河野大臣が公務員の働き方改革に関し、「管理職に恐竜みたいな人がいる」と苦言を呈した。河野公務員制度担当相「一部、管理職にまだ考えが切り替わっていない恐竜みたいな人がいるようで、若干、超過勤務手当に関して、頭が切り替わっていない管理職がいる」

河野大臣は公務員の残業削減を進める一方、サービス残業をなくすため、職場にいる場合は超過勤務として手当をつけるよう求めてきたが、従わないケースがあると明らかにした。そのうえで、そうした管理職を絶滅した恐竜に例え、適切に対応しない場合、厳正に対処する方針を示した。

まだ、霞が関はこんなことをしているのでしょうか?長時間労働させているなら、残業代くらい正規に払えよ。払わないということは、上司の「保身」としか思えません。

もっとも、労働時間管理が悪いのは地方労働局の方が上。霞が関はそれでも、カードリーダーで出退勤が管理されているというのに、地方労働局はまだ自己申告です(私が退職した5年前から労働時間管理のやり方は変わっていないと噂です)。

タイムカードは地方労働局の課に一枚づつです(これは本当です)。朝最初に来た者と夜最後に退出した者が打刻します(何の意味があるのでしょうか?)。

私が在職中に、このタイムカードの打刻時間と職員のシステム端末の利用時間に大きな開きがあって問題となったことがあります。現在では、そのような事態が発生していないことを祈ります。