長時間労働規制の問題点(9)


(大宮動物公園で撮影、by T.M)

大きな組織の中で個人が孤立するといったことも、問題ですが、実は小規模事業場での「就業規則」と「36協定」の件についても、また問題なのです。

事例を挙げます。女性従業員3人が働く、小規模事業場の話です。
2人が正社員で、何年も前から働いていて、1人はパートタイマーで3ヶ月前から働いている人です。
その会社は従業員10人未満ですから、法的義務はないのですが、就業規則は適正に作成されていて、残業の項目が明記されていました。そして、正社員との合意のもとで36協定が締結されていました。
パートタイマー(Aさんと呼ぶ)には、労働契約時に社長さんから「業務の都合により時間外労働命じることがある」と記載された契約書が交付されましたが、彼女は「家庭のことがあるので、あまり残業はできない」と答えました。それに対し、社長は「考慮しようと」返答しました。
Aさんが入社して、3ヶ月目くらいして、社長から「1日2時間残業するように」と命令され、Aさんは「できません」と答えました。すると、社長さんは「嫌なら辞めてくれ。本当は解雇もできるのだが、それは君のために勘弁してあげる。当社は就業規則も36協定もしっかりしているから残業を命令する権利はある。今は年度末で忙しいんだ。」と説明したそうです。

Aさんは、結局その会社を辞めることになりましたが。納得はできませんでした。Aさんは、正社員の女性2人と仲が悪かったため、告げ口により辞めさせられたと信じ込んでいました。しかし、この場合の「残業拒否」は確かに、「正当な解雇理由」となってしま可能性が高いのです。
(補足)会社が「解雇」したのでなく、Aさんの「自主退職」でしたが、社長さんは、支払う必要がないのに、「解雇予告手当の金額」と同じ「ひと月分の賃金」を「慰労金」の名目で、Aさんに支払いました。もしかしたら、社長さんは、Aさんの主張のとおり「後ろめたく」思っていたのかもしれません。