友からのメール

(嵐山2、by T.M)

小学校時代の同級生で、現在大学教授をしている友人からメールで問い合わせがありました。「偽装請負について、労働基準監督署がどのように対処しているか知りたい」ということでした。次のように回答しました。

I 様

質問について、とりあえず3つに分けます。

(質問1)

監督署は、「タレコミ」のない事業場も臨検監督するのか。

(質問2)

監督署に対し、「偽装請負の摘発目的」の「タレコミ」があり得るのか。

(質問3)

監督署が、臨検監督をした事業場で、偶然に「偽装請負」を見つけてしまった。

その時に監督署は、何をするのか?

さらに、この質問には「監督署が長時間労働の調査をしている時に、偽装請負を見つけることがあるのか」という質問をつけ加えます。

まずは、質問1についてです。

監督署の監督は、次の3つに分けられます。

① 定期監督

 これは、「過重労働」であるとか、「災害の多い業種」であるとか、監督署が主体的にテーマを決めて実施するものです。テーマは、「業種」であったり、「外国人労働者を使用している事業場」であったりと、様々です。

② 申告監督

 これは、要するにタレコミのあった事業場への臨検監督です。

③ 災害時監督

 これは、「腕がなくなった」とか、「足がなくなった」とかいう労働災害に関する監督です。

取り敢えず、絶対に監督するのが②「申告監督」です。これは、それをしないと「申告した者が怒る」からです。役人の不作為は許されません。

本省が重要視するのは、①「定期監督」です。「~に対し仕事をした」と言えば、予算獲得となり省益となるからです。監督署の窓口に来た、「困った労働者に事業主」のために仕事をしようとする監督官は、そもそも霞が関の官僚の出世コースのためには不要なのです。

  • 「定期監督」に対しては、年度ごとに「件数」と「人日」が割り当てられるのですが、監督署の現場では②「申告監督」が忙しくて100%達成はほぼ無理です。私の経験では達成率が30%未満だったこともあります。

監督官の配置数なんて、超大規模署でさえ30人未満、田舎では署長をいれて5人未満なんてことがありますから、①「定期監督」でたまたま事業場へ行く確率は低いと思われます。

といっても、この①「定期監督」の実施については、「優先度」という概念があります。テーマが「長時間労働」と「家内労働」であったら、同じ定期監督の計画であっても、優先度の高い物から実施されます。

ある監督署の年間定期監督の優先度の高い実施目的(テーマ)に該当する企業であった場合は、もしかしたら監督が実施されるかもしれません。

テーマ及び優先度の決め方は、政治的な理由等、これもまた様々です。

質問2についてお答えします。

「偽装請負」の「タレコミ」があっても、監督署は動きません。派遣法違反は、労働局内の需給調整事業課の仕事だからです。

地方労働局の内部は、完全に「労働基準行政」と「職業安定行政」に分かれています。人事交流なんてことを本省は言っていますが、そんなことは上部だけです。

そこそも、採用試験に「労働基準監督官試験」と言う独立したものがあるのですから、監督官の世界に職安(一般試験採用者)は入れません。監督官とは、防衛相における制服組だと思ってくれれば言いと思います。独立した機関です。

労働局の中の「基準」と「職安」はそれぞれの領分を絶対に犯しません。そして需給調整事業課は職安の仕事です。

従って、「偽装請負」の「タレコミ」があったら、監督署では需給調整事業課、もしくは地方労働局の雇用環境・均等部 指導課を紹介して終わりです。

もっとも、「偽装請負」というのは、「中間搾取」と「賃金の直接払い違反」という労働基準法違反となる場合があり、送検事例もあるのですが、それはあくまで社会問題化してこじつけた事例でレアケースです。

質問3についてお答えします。

監督署の監督官が実際にやってきて、偽装請負を見つけるかということですが、これは100%見つけます。簡単なことです。

でも、見つけたからといって、「労働基準法24条違反(賃金の直接払い違反)」等の是正勧告はしません。需給調整事業課に連絡して終わりです。

在宅勤務中に、このメールを書いてます。

最近、仕事が忙しすぎて、休日にパソコンを仕事でいじっていることも多いので、開き直って在宅勤務を多くしています。

出張は、「直行直帰」なので、職場には週に1回くらいしか行っていません。

仕事とプライベートの境がなくなってきた今日この頃です。

小原立太

追伸

個人的には、③の災害時監督を重視していました。こういう監督官は稀です。