(人形劇三国志の諸葛孔明、by T.M)
4/10 NHK クローズアップ現代
「荷物の仕分け作業で手首に激痛」「深夜の工場内で倒れて救急搬送」労働災害の中で60歳以上が占める割合は年々増え続け、3割近くに上る。さらに、統計には表れない“埋もれる労災”の実態が見えてきた。解雇を恐れて労災申請を断念する従業員や、事故発生後、すぐに企業に認めてもらえないという訴えが相次ぐ。老後の生活不安を抱え、厳しい労働環境でも働かざるを得ない高齢者たちに何が起きているのか?実態と対策に迫る。
この番組を観ました。番組の最後にこのブログでリンクを張っている原社労士の名前も出てきました。最近連絡ないからどうしてるのかなと思ってましたが、元気なようなので安心しました。その反面に、なんで私のところに取材に来ないのかな、なんて思いました。
番組の内容です。3つに分かれていて、最初は「高齢労働者」の労災が増えているとの指摘。2番目は「過労死の認定基準を高齢者は緩くしろ」との問題提起、3番目は「高齢者が建設業者の労災隠しの犠牲者」である事実報道でした。この中で第3番目の労災隠しのパートは、何も高齢者を取り上げなくても、よくある話です。建設業における労災隠しとは、ある意味普遍的な問題でして、特に高齢者は関係ありません。(この部分で、わが盟友“原社労士”は発言しています。彼の得意分野です)。
最初のパートの「高齢者の労災が増えている」ということについてですが、これについてはちょっと誤解があるようです。最近、某大手パン製造メーカーの工場で60歳代のベテラン女性行員がベルトコンベヤーに挟まれて話題となりました。高齢ドライバーが、高齢を原因とした判断ミスで事故を発生させた「池袋暴走事故」のような事故が、昨今話題になりますが、この大手パン製造メーカーの事故も、被災者の年齢を主原因とするかの憶測が、マスコミ等の報道で一部為されていました。実は、パン製造工場において作業者がベルトコンベヤーと接触するという事故は実はとても多く起きているのです。私としては、この大手パン製造メーカーが、災害リスクの予想は十分可能なはずの、パン工場としては典型的な災害を発生させたことの方が問題だと思います。
高齢者の労災というと機械に挟まれ・巻き込まれ災害が多いと感じている方がいると思いますが、機械災害が多いのは実は10代と20代なんです。若年層が無理な機械操作をして災害を増やすところは、交通事故の傾向によく似ています。高齢労働者に多い災害は1に「転倒災害」、2に「腰痛」です。もっとも、高齢者の「転倒災害」って、重篤化するおそれがあるから要注意です。
この時のクロ現の放送で気になったのが、2番目のテーマの「過労死の認定基準を高齢者は緩くしろ」との問題提起です。確かに、過労死の認定基準をそのまま高齢者に当てはめることは、労働者保護の観点に望ましくないと思います。でも、「過労死の認定基準を緩くすることより」、そもそも高齢者が残業することがおかしいのではないでしょうか?
労働基準法では18歳未満の労働者について、「危険有害業務の規制」及び「残業時間の禁止」が規定されています。満70歳以上の労働者について同様な規制があってもいいような気がします。
「高齢者だから労働時間を短くする(残業規制をする)」ということになったら、高齢者の雇用の門戸がまた狭まれる気もします。「若い者」を使うより年寄りの方が安心して仕事を任せられるというように高齢者自体の努力も必要でしょう。傲慢な高齢者に仕事はないことは当たり前のような気もします。これは、私への自戒でもあります。