教師の営業時間?

京浜島つばさ公園からの風景、by T.M)

長い記事だけど引用します。

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「銀行と同じで(教師にも)営業時間がございます」。進路相談の日程調整をめぐり、保護者に勤務時間をキッパリ伝えた教員の投稿がネット上で話題を集めている。2014年のアカウント開設以降、教育現場の問題点について発信を続ける現役公立中学校教諭の神原楓さんに、投稿に込めた意図を聞いた。

「久しぶりに面白いやりとりがあった。

保護者『先生は土日、学校にいますか?』

『土日はいませんね』

保護者『じゃあ進路相談できる時間がないですね…』

『私が授業に入ってない時間をお伝えしますね』

保護者『いやその時間は私が仕事じゃないですか』

『銀行と同じで営業時間がございます』」

 投稿では、子どもの進路相談を行いたい保護者と神原さんのやり取りを、対話体で紹介。神原さんは続く投稿で「いまだに『教師はいつでも相談にのってくれるもの』と思っている保護者はたくさんいる。いや、むしろ事実として、今も多くの教師が『オールタイムで保護者の相談』にのっている。保護者が勘違いしてしまうのも無理はない。『営業時間』を明確にしない学校に非がある」と問題の本質に触れている。

 この投稿は5600以上のリツイート、6.5万いいねを集めるなど大きな話題に。「子どもの大事な進路相談ですから、保護者側が時間を作って欲しいですね。先生ってほんと大変です」「先生も休ませてあげて下さい」「子どもの為に、勤務上無理をするのは親のほうであるべき」と好意的な反応が多く寄せられている。

「今はちょうど三者面談の時期で、11月中には志望校を決めないといけない。私は部活動顧問を断っており、土日は学校にいないことも日頃から保護者には伝えている。今回の保護者も話せば分かってくれたようで、特に険悪な感じはなかったです」と神原さん。

 とはいえ、共働き世帯の保護者からはできれば土日に対応してほしいという声があるのも事実だが、必要なのはまず学校としてのスタンスを明らかにすることだと神原さんはいう。

「私も小学生の子を育てる親なので、土日にも学校を開けてほしいという気持ちは分かります。それでも、我が子の面談や行事などあればまずは自分が休みを取るのが道理。もちろん、どうしても難しいという場合は管理職と相談して勤務時間をずらすということもありますが、本当にどうしてもということは実際にはほとんどない。ちゃんと話せば都合をつけてくれる保護者がほとんどです」

 ツイッター開設当初は投稿内容に批判的な声も多かったが、最近は肯定的な反応がほとんどだという。「何よりも教員自身の労働観が世間一般より遅れていて、サービス残業や土日出勤はして当たり前だという意識が根強く、だからこそ社会や保護者も『先生はそういうもの』と誤解してしまう。教師にも法的に定められた適切な勤務時間がある。今の20代や30代前半の先生など、ようやく時代に合った価値観を持った若い世代が増えてきた。彼らのような期待の星を上の世代が守っていかないと」。今後も教員の労働環境改善のため、地道な発信を続けていくつもりだ。

何か嫌だな、この人の言い方。私の、このブログの過去記事を読んでくれれば分かるけど、私は教師の労働時間については、問題点を指摘してきました。

1 修学旅行は労働法規に照らし合わせ、明らかに違法だから中止しろ

2 部活活動について、労働時間にカウントしろ 等

です。

でも、この人が言うような主張には賛成しません。

揚げ足取るようですが、「教師の営業時間」って、間違った表現方法です。銀行員が「銀行員の営業時間は何時から何時までです」なんて言いいません。「弊社の営業時間は何時から何時までです。」と言います。

さらに言うと、「公立学校」って「営業」しているのですか?いつから、「営利団体」になったんです。

公立学校教師には、残業代が払われていない。だから、残業を命じることはできない。ここまでは、賛同します。

しかし、「今の20代や30代前半の先生など、ようやく時代に合った価値観を持った若い世代が増えてきた。」として、「保護者の都合なんてどうでも良い。自分たちの労働時間が大事だ」という人には公立学校の教師になって欲しくないと思います。

公立学校はサービス残業を撲滅すべきである。そのため、人員の増加等をすべきである。そして、労働時間の適切な管理をすべきである。そう思います。

しかし、「保護者・生徒のために、法整備を行い教師に残業命令を出せるようにすべきである」とも考えます。少なくとも、私立学校ではそれも可能です。

最低賃金の謎

( 飛行機からの富士山、by T.M)

失われた30年とかいいます。1990年から2020年までの経済成長率は日本1.5倍増に対し米国3.5倍増、中国37倍増、ドイツ2.3倍増だそうですが、この日本の低成長を揶揄した言葉だそうです。。

日本人の賃金も上昇していないそうです。この30年間に日本の平均賃金が4.4%増に対し、米国47.7%増、英国44.2%増、ドイツ33.7%増、フランス31.0%増だそうです。

この数字を見て、ちょっと驚きました。私が知っている賃金関係の金額の指標はもっと上昇しているからです。その指標とは「最低賃金額」のことです。

1990年の最低賃金は全国平均で516円、2020年では902円で、30年間に74%増となっています。東京だけに限るなら1990年が548円で2020年は1013円なので、85%増です

この30年間に平均賃金がほぼ横這いなのに、最低賃金だけは約80%上昇している。経済学的には、何を意味するのでしょうか?

多分現在では、30年前よりも「最低賃金ギリギリの給与額で働く人の割合」が増えているということなのでしょう。しかし、「最低賃金を引き上げても経済成長しない」ということも事実のようです。

(あと、地方の賃金と東京の賃金格差も大きくなっているようです。)

委託への是正勧告

(フクジュソウ、by T.M)

やっぱり韓国ドラマって凄いと思います。

日本の「半沢直樹」にように、企業内の人間関係と陰謀をテーマにした韓国ドラマの『大丈夫じゃない大人たち~オフィス・サバイバル~』が現在CS放送のホームドラマチャンネルで放映されています。このドラマで、次のような人物Aが登場します。

「Aは大手家電製造会社のXに所属する、人事課に所属するエリート社員。Xは地方工場のYの人員整理を行うこととした。Xは人事のプロのAに『成功したら取締役にする』との約束をし、『リストラをスムーズに行う下準備をすること』という極秘命令を与えAを地方工場Yに赴任させる。この本社の極秘命令のことは、Yの工場長も知らない。Aは、Yにおいて人事に不満を抱くベテラン社員Bに、『私のいうことを聞いたら、人事で優遇する』と約束し、Bを利用しリストラの準備をする」

どうですこの物語。日本の半沢直樹なら、この「人事のA」と「裏切者のB」にYの従業員たちが「倍返し」をし、「本社のリストラの陰謀を潰す」というのが「お約束」です。

ところが、この韓国ドラマでは、なんとAが「ヒロイン(女優)」であり、主人公なのです。当然、Aは様々な葛藤、事情を抱えています。この悪役のAの立場から見た企業の姿が、単純なストーリーの「半沢直樹」より、ドラマへ奥行を与えているのです。

(しかし、どうして、日本のドラマは長く続くと、つまらなくなってしまうのだろう。「半沢直樹」も「ドクターX」も第2シーズンぐらいまでは面白かったけど、いまじゃ「水戸黄門」だもんな)

このドラマの凄さはそのリアルティです。ドラマの第一話の冒頭で、従業員を解雇する場面がでてくるのですが、それは私が労働基準監督官時代に見聞したリストラの場面にそっくりでした。もしかしたら、「リストラ」を経験した日本の企業は、このようなドラマのスポンサーになることを嫌うかもしれません。そんなドラマを作れることが、韓国ドラマを面白くしている原因のひとつなのかもしれません。

読売新聞 5月29日

ネット通販「アマゾン」の荷物の宅配を運送会社から業務委託された個人事業主のドライバーについて、運送会社から指揮命令を受けており、事実上の雇用関係にあるとして、労働基準監督署が運送会社に労働基準法違反で是正勧告していたことがわかった。宅配荷物の増加で、個人ドライバーに業務委託する動きが物流業界で広がる中、違法とする認定が明らかになるのは異例。今後影響が広がる可能性がある。

 関係者によると、運送会社は、「アマゾンジャパン」の荷物の配送を受託する複数の協力会社のうち最大手で、東証プライム上場の「丸和運輸機関」(埼玉県吉川市)。春日部労基署(埼玉県春日部市)が1月に出した勧告では、同社が宅配を業務委託している個人ドライバーの一部について、同社の労働者にあたると認定した上で、労基法で定められた労使協定を結ばずに法定労働時間(1日8時間)を超えて働かせたなどとしている。

 同社は、個人ドライバーと、1日あたりの固定料金で宅配を業務委託。しかし、ルートを指定したり、予定外の配達を急に指示したりしていたほか、制服の着用も求めていた。また、報酬の一部を「事務管理料」として天引きしていたという。

 業務委託では、報酬は成果に対して支払われる。業務の進め方は個人事業主の裁量に任される。企業が指揮命令すれば、雇用関係にあるとみなされ、企業は労働条件を書面などで明示することが必要になる。怠れば労基法違反になる。

 労基署は是正勧告を出した企業に改善内容をまとめた報告書の提出を求める。

 同社の昨年3月期の売上高は1121億円。うち23・4%がアマゾン関連という。

 同社は読売新聞の取材に、委託する個人ドライバーについて「労働者性は認められない」とする一方、是正勧告については「お答えできない」としている。

 物流業界では、宅配荷物の急増と人手不足を背景に、個人ドライバーに委託する動きが近年急拡大している。国土交通省によると、軽貨物運送業者数は2016年度は約16万業者だったが、20年度には約20万業者に増え、同省は、この大半が個人ドライバーとみている。

これは、大きなニュースです。私は、トラックドライバーの待遇の改善こそが、日本の低賃金の解消の第一歩になるものだと思っているからです。

大きな通販会社の物流倉庫に行ってみると、その巨大さに圧倒されます。その存在が、「地方都市のデパートや商店街を衰退させている」くらいなのですから、まさに産業構造の変化の象徴と言えるものです。

この通販の運送の現場では、世界中で「委託」という名の「搾取」がまかりとおっています。ケン・ローチ監督の映画「家族を想うとき」では、その実態が描かれ、また最近のNHKの「クローズアップ現代」では、その問題が取り上げられました。

米国のアマゾン本社では、格差是正のために自ら取り組んでいるとも聞きます。この記事にある「丸和運輸機関」とは、宅配を中心に拡大している企業で、ここ数年間で株価は10倍以上になっています。また、Wikipediaの説明によると「社員教育」に力を入れている優良企業ということです。ぜひ、業界を引っ張る企業として、この是正勧告を契機として、委託先への待遇改善に取り組んで頂きたいと思います。

公務員のサービス残業

(甲州街道小原宿本陣のひな飾り、by T.M)

末松文科省大臣 5月17日定例記者会見

万が一、校長が虚偽の記録を残させるようなことがあった場合には、信用失墜行為として、当然、懲戒処分の対象ともなり得ることを明示をいたしてございます。これは重要なポイントです。(中略)

私も事実確認はしていないんですけれど、7時50分に学校に到着して執務を始めているということになっているんですけど、実際は7時20分に来ているみたいなお話も聞いたことがございます。同時に、事実確認はしていませんけれども、何気なしに、要は、タイムカードでこの時間で帰ることになっていますと。タイムカードを押します、最近はIDカードなんかでぴっという形でやるんですけれども、でも、現実はやっぱり、仕事を持って帰っているという、これってやっぱり、そういうつじつまを合わせるような、この状況では駄目だと思いますので、そういう意味では、内容においても、きちんと時間が守られるということ、このことを念頭に置かなければならないと思っていますけれども、ある面では、先生方が、そういうことをやっておられるとしたらそれ自体ですね・・・

「事実確認していない」って、全国の労働基準監督署の「申告監督」の記録を見て欲しい。私立学校の労働時間の改ざん事件なんて、多分何件もでてくると思う。(公立学校には、監督署は「臨検監督権限」がない。)

しかし、「校長が信用失墜行為で懲戒処分」とは、よくぞ言ってくれました。はっきりとそう言うことで、教育の現場はひきしまると思います。

そんなことを書いていたら、昔私が所属した地方労働局のことを思い出しました。その地方労働局では、多くの職員が「年間の目標」として、「ひと月○〇時間以上は残業しない」ことを挙げていて、それが人事評価の基準となっていた。

また職員の上司は、次のような目標を掲げ、さらに上の管理職が査定していました。

課長だと「当課の残業代は〇〇以下とする」、部長だと「当部の残業代は○〇以下とする」

さて、これは労働時間短縮の好事例のような気がしますが、実は違います。ポイントは2つです。

(1) 部長・課長の管理職は、「残業〇〇以下」としないで、「残業代〇〇以下」としていること。この「代」がつくか、つかないかは大きな違いがあります。要するに、管理職は、職員の「残業時間」ではなく、「残業に係る予算」を目標としていることです。

(2) 管理職の「残業代を予算どおり」にするということは、管理職が職場の業務量を減らすことを手段とすることでなく、職員の「残業を〇〇時間以内にする」という自主行動を促し、それを人事ひょうかすることを手段とすることです。

要するに、「職員が残業代を一定額以上申請しなければ、管理職が良い評価をする」というシステムを作っている訳です。だから、私が所属していた地方労働局は、私の在職中はサービス残業ばかりでした。

以前、大阪府知事を橋下徹氏がしていたところ、「職員はどれだけサービス残業をしていると思っているんだ」と嚙みついた女性職員がいましたが、多分当時の地方公務員の職場でも、この地方労働局のような人事管理が行われていたと思います。

こんなことは、現在の霞が関では行われていないのかなと、文科大臣の発言を読んで思いました。

旭川イジメ事件

(中伊豆ワイナリーのぶどう畑、by T.M)

文春オンライン4月17日

昨年3月に廣瀬爽彩(さあや 当時14歳)さんの遺体が見つかって1年、そしてイジメを受けてから3年――。世間の注目を浴びた“凄惨なイジメ事件”が大きな山場を迎えた。2022年4月15日、イジメの有無の再調査を行ってきた第三者委員会は「イジメとして取り上げる事実があった」として爽彩さんが受けた「6項目の事実」について「イジメだった」と認定、同日、記者会見を開き、その内容を公表した。第三者委員会から「6項目の事実」について報告を受けた爽彩さんの 母親は文春オンラインの取材に複雑な胸中を冒頭のように語った 。

(以後2021年4月の記事の再掲となる)

イジメ被害者の方の御冥福を祈ります。御遺族の方が、一日でも早く癒されることを祈ります。

旭川のイジメ事件については、何らかの進展があったようです。この問題は、被害者の女子生徒の自殺の後で、学校側が「イジメ」の実態を隠蔽していた等の不祥事が発覚して問題となっています。

私はこの問題について、一番議論されなければいけないことが議論されていないような気がします。それは「教師の労働時間と義務」の範囲です。文春オンラインには、この事件について、次のような記事もありました。

「担任の先生が(爽彩さんの母親からイジメの)相談を受けたときに『今日わたしデートですから、明日にしてもらえませんか』って言ったというのが報道で出ていますよね。小耳に挟んだ話ですけど、先生がお友達にLINEで『今日親から相談されたけど彼氏とデートだから断った』って送ったっていう話をちらっと聞いたんですよ。本当に腹が立ちました。そういうことも言ったかどうか全部はっきりして欲しいです」

 当時の担任教師は前に立っていた同僚の後ろに隠れるようにして、下を向くだけで、一言も答えない。代わりに校長が「いまの質問にここで即答はできない。申し訳ございません。検討します」と答えた。

この記事から判明するように、世間の常識では、「生徒のイジメ相談を無視して、デートに行った教師」を非難するようです。

この事件について、その事実関係は判明していませんが、それがもし事実だったとして、学校側は、職務怠慢として、この教師を処罰できるでしょうか?

労働法の観点から申し上げるなら、この教師は何も悪いことはしていません。勤務時間外なのに、なぜ生徒の相手をしなければならないのでしょうか?

でも、この時点で教師が真摯に生徒の相談に乗っていたら、最悪の結果に至らなかったかもしれません。ならば、「良心のある人間として、すぐに生徒の相談に乗るべきだった」と思う人が大多数であると思います。

だからこそ、「教師の時間外労働と責任の範囲」を「問題として認識」し、解決に向かって動かなければなりません。

(多くの方が、その認識されてなくても、「教師は24時間、生徒のために尽くすべきだ」と考えています。)

これは、学校の管理する立場の者がなんとかしなければならない問題です。私は、人件費が多くなっても、教師の数を増やし、「複数担任制」等を検討すべきであると思います。

このイジメ問題を解決するためには、教師を責めるだけでなく、教育システム全体の改革が必要ではないでしょうか。