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勝手ながら、今週は更新を休みます。
おばら労働安全衛生コンサルタントのブログ・元労働基準監督官の独り言
元労働基準監督官の独り言
(ロウバイ、by T.M)
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(津久井のウメと相模川上流の眺め、by T.M)
「有機溶剤」「特定化学物質」「特別有機溶剤」「がん原生物質」「特別管理物質」・・・
衛生管理者の受験準備講習の関係法令(労働安全衛生法及び労働基準法)の講座の講師をすることになったんで、有機則や特化則の条文を読み返してみたんだけど、あまりの難解さにイライラしてきました。
でも、私は講義する立場であって受験する立場でないからどうってことないけど、「製造禁止物質」や「製造許可物質」を全部暗記する受験生はたいへんだろうな・・・
特にたいへんなのは特化則。この省令は「有機則」や「鉛則」でグループ管理できない化学物質を個別管理しようとしてできた省令なんだけど、管理する物質が増えすぎて、もうどうなっているのか分からない。この特化則について、某企業から分かりやすく講義してくれという依頼があったけど、「この省令は、体系的にできていないので、分かりやすくすることは不可能です」と丁重にお断りしました。ようするに、特化則とは「論理的な整合」を取ることを目的としているだけの文章で、それゆえ誰も理解困難なものとなっているのです。
例 特化則第5条 事業者は、特定第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場(特定第二類物質を製造する場合、特定第二類物質を製造する事業場において当該特定第二類物質を取り扱う場合、燻くん蒸作業を行う場合において令別表第三第二号5、15、17、20若しくは31の2に掲げる物又は別表第一第五号、第十五号、第十七号、第二十号若しくは第三十一号の二に掲げる物(以下「臭化メチル等」という。)を取り扱うとき、及び令別表第三第二号30に掲げる物又は別表第一第三十号に掲げる物(以下「ベンゼン等」という。)を溶剤(希釈剤を含む。第三十八条の十六において同じ。)として取り扱う場合に特定第二類物質のガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場を除く。)又は管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場については、当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。ただし、当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置の設置が著しく困難なとき、又は臨時の作業を行うときは、この限りでない。
これ、もはや日本語じゃないですよね。
ところで衛生管理者の受験生の皆様が苦労して暗記した「特化則」や「有機則」が5年を目途になくなる方向性になっています。世の中は不条理です。
つまり厚生労働省の化学物質対策課も、現状の化学物質の管理の状況では、流石にまずいと思ったのか、SDS(安全データーシート)の普及の徹底を目指し、SDSに記載されているGHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム、The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)を基に実施される化学物質のリスクアセスメントの結果について規制しようというものです。
要するに、「小難しい法条文」でなく、化学物質の個別のSDSに記載されている「ばく露限界」等の数値を、事業場に理解してもらおうというものです。
非常にすっきりとして、分かりやすい化学物質管理の方法になるような気がします。
この「グループ管理」が限界なので「個別管理」に変更するということは、当然、「紙による管理」から「デジタル化」した管理に切り替わるということです。そうでなきゃ、数千にも達する化学物質管理はできません。
(注)現在、リスクアセスメントが必要な化学物質の数は700前後ですが、5年後には3000以上に増えるそうです。
「デジタル化」による個別管理で効率化を目指す。これって行政のあるべき姿だと考えていたら、「マイナンバー」制による個別管理がこの発想であったことに気づきました。
化学物質と違って「人間」の個別管理は効率だけでは割り切れないのかなと思いました。
(本牧ふ頭B突堤からのベイブリッジ、by T.M)
休明けに「衛生管理者」の受験準備講習の「法令」について講師をします。
この講習内容で講師をするのは、初めてです。
時間は、3日間でトータル12時間。
この連休中に、過去のテスト10回分、トータル140問の過去問の精査を行い、分析して、資料を作成しています。
この歳で新しいことに挑戦できることを喜ぶとともに、あまりのハードワークに音を上げています。
私の講習会に来られた方全員の合格を目指しますが、年寄には辛い準備です。
そんな訳で、今週と来週のブログ更新を休みます。再開は5月15日です。
では、皆さん良き連休を!
そして、仕事が休めぬエッセンシャルワーカーの方々に感謝の意を表します。
ありがとうございます。
(十国峠からの富士山、by T.M)
ウィル・スミス、かっこよかったです。
病気の奥さんを、大多数の前でジョークの種にされたら、誰だって怒るのは当たり前です。ウィル・スミスのことを、私は絶対に支持します・・・
とこう思っていたけど、よくよく考えてみたら、これはそんな単純なことではないなと思いました。何よりもアカデミーが本当に困っているだろうと思います。
もし、頭の禿げている中年男性が、そのことを女性に馬鹿にされたので、その女性をビンタしたとしたら、やはり非難されるのは中年男性ということになります。
ウィル・スミスの奥さんの病気の脱毛症と、男性の加齢によるハゲを一緒にするなという意見もあると思いますが、心を傷つけるのは一緒です。ウィル・スミスに許されて、中年男性に許されないというのなら、論理は破綻していると思います。
私の専門領域の労働問題に話を移します。
「パワハラが横行している職場において、上司の言動に切れて、部下が上司をぶん殴ってしまう」
これって、ぶん殴った部下が懲戒処分にされても、法的には問題ないと思います。例え、そのパワハラの内容が、今回のウィル・スミスの事件のように、部下の家族への耐え難い誹謗中傷であったとしてもです。悲しいことだけど、それが法律の論理です。
酷いパワハラについては、事実関係を明確にして、できれば録音等の物的証拠をもって対抗しなければなりません。「言葉の暴力」はリアルの暴力より軽く見られるのです。
さて、私の体験を書きます。私はハゲです。30代前半から、前髪が段々となくなり、今では数本になりました。完全になくなれば、まだ見ようがあるのですが、数本残っているのが惨めです。私のこの頭髪について、「ハゲ」と面罵されたことが何回もあります。
監督署で、仕事にあたっていた時のことです。相手が事業主であったこともありますし、労働者だったこともありますし、エセ労働組合だったこともあります。言われるたびに、随分悔しい思いをしました。
ウィル・スミスのように、その時ぶん殴っていたら、「公務員が市民に暴力」ということで叩かれていたでしょう。ある意味、ウィル・スミスの奥さんが羨ましく思いえます。
先日、監督官を目指したいという方からメールを頂きましたが、監督官という仕事には、そういうこともあるよということを伝えておきたいと思います。
( 江戸時代建立の吉田家住宅 ・埼玉県小川町、by T.M)
さて、多くの企業では4月1日が人事異動。皆様はいかがだったでしょうか。
この季節になると、なぜか「人事」の相談を私にする人がいます。私に人事の相談をする人は、当然その人事に不満を持つ人です。私が元労働基準監督官ということで、労働問題に詳しいと思っているのです。
余談になりますが、「自分はなぜ出世しないのか?」 こんなことを私に尋ねても無駄です。なぜなら私自身が組織の中で、まったく出世しなかった者であり、本省回りの労働基準監督官を除き、労働基準監督官のほとんどの者が最後にはその地位につくであろう「労働基準監督署長」になれなかった者だからです。
(もっとも、退職した後では、「元労働基準監督署長」より前職を生かし「現場の労働基準監督官」に近い仕事をして、それなりの安定した収入を得ているのだから人生は分からない。)
もし、私が「人事」に関して相談に乗れるとしたら、「その人事異動が労働基準法上正当なものであるかどうか」ということに対する意見を述べることです。
今回の相談は次のようなものでした。
相談者は技術系職員。今年64歳となるもので、60歳以降は常勤嘱託として1年更新の契約を行っています。彼は昨年度まで、「教育及び研究」職についていましたが、今年度より、彼の経験を生かした「ISO及びJISの評価員」に任命されました。これを彼は怒っているのです。昨年度までの彼の「研究」は中途半端で終了となるからです。
彼は、私に次のように訴えました。
「60歳の時に『研究職』という辞令をもらった。それが、今回は『JISの評価員』となった。これは問題ではないのか?」
私は答えました。
「それは、単に労働条件が変更されただけだ。労働条件が不利益変更されたというなら問題となるが、『研究職』から『JISの評価員』への変更は問題ない。これが、『単純作業』への変更、あるいは『リストラ目当ての追い出し部屋等』への異動なら問題となるが、今回の異動はあなたのキャリアが否定された訳ではない。」
彼の不満はある意味、とても「贅沢でわがまま」なものなのです。でも、彼がどうしても「ひと言」を人事に言いたいみたいなんで、次のようなアドバイスをしておきました。
「研究職の場合は残業代がつかなくて、『給料の16%にあたる研究職手当』が支払われていたはずだ。審査員になったら、残業代がつくかわりに、その手当がなくなる。これは不利益変更と主張できる可能性がある」
まあ、無理でしょうけど・・・。ただ、文句は言えるのではないかと思います。
会社員である限り、「職種の変更」については、基本的に異議はできません。「ジョブ型雇用」「メンバーシップ型雇用」等の議論はあるようですが、雇用に安定性を求めるなら受け入れるべきです。
ただ、見逃されがちですが、「職種の変更に伴う、賃金・労働時間等の不利益変更」については争うことが可能です。なにに文句を言えて、何は受入れなければいけないのか。会社に文句を言う前に、冷静に考えて見る必要があります。