ブラックユニオン(1)

(夕方の相模湖、by T.M)

「企業を恐怖に陥れる「ブラックユニオン」の実態 プロ組合員ばかりか総会屋からの転職組も」

Yahooニュースで、上記の新潮デイリーの有料記事を紹介してました。記事自体は昨年のものですが、再配信されるということは世間的な関心も高いのかなと思いました。このブログは6年目に突入ですが、そういえばこの「ブラックユニオン」のテーマでブログ記事を書いたことがなかったなと思いました。ブラックユニオンの実態について、経験談を書きます。

私の個人的な分類では、労働組合は2種類あると思います。「企業内組合」と「個人でも入れる地域の業種横断的な労働組合」です。これから、私が書くことは後者についてです。「企業内労働組合」は、日本の企業文化及び組織の一部であり、後者とはまったく違うものです。

私が出会った「個人で加入できる労働組合」の人たちは、立派な方もいましたし、卑劣な方もいました。それは人間の作る組織ですからあたり前です。

「人間を守り」「労働者を守り」、こつこつと何年も「労災に苦しむ人たち」のため、行政や企業と戦っている、尊敬すべき組織があります。

かと思うと、完全に企業に対する、解決和解金という名の金銭狙いの、「ゆすり」「たかり」を生業としている組織もありました(というより、個人的な犯罪行為だったりする)。

もう10年くらい前でしょうか、ある男性が労働基準監督署を尋ねてきました。そして、次のようなことを訴えました。

「私は、ある飲食店に勤務しています。そこで私は残業代がもらえないで、うつ病となりました。長時間労働もありました。私はAという労働組合に相談したところ、そこの書記長は、店長と交渉し500万円をもらってくれました。その時に200万円を解決和解金として労働組合がとり、300万円を私がもらいました。1ケ月ほど休んで、職場に戻ったんですが、店長とは気が合いません、一緒にいるだけでイライラします。私は、昨日店長に次のように言いました。『100万円支払ってくれたら、もうこれで終わりにしましょう』。そしたら店長は色よい返事をしません。労働組合に依頼したらもう無理だと言います。それで、監督署にお金を取り立てて欲しくて来ました。」

話の途中で、私はこの男のことを観察しました。元気がとてもよくて、鬱には見えません。けっこう論理的に話すので躁でもなさそうです。どうも「勘違いをしている者」で、本当に自分が金銭を受け取る権利があると思い込んでいるような気がしました。

私は、この男に質問しました。

「病院には行ったのですか」

男は答えました。「組合の委員長に勧められて1回行きました。そこで診断書を書いてくれました。」

私は、さらに質問を続けました。

「あなたは、休業を1ケ月したと言いましたが、診断書には『休業が必要』と記載されていたのですか? また、あなたは休業期間中に気持ちがふさぎ込んで、出歩けないみたいなことがあったのですか?」

男は答えました・

「診断書には、休業のことは書かれていませんでした。私自身は普通に生活できましたが、組合の委員長から、その間休んでいろと言われたので休んでいました。でも、職場復帰すると、どうしても店長とは一緒に仕事がしたくありません。ですから、私はお金をもらって辞めようと思って、金を請求したところ断られたのです。」

私はこの問題を整理してみました。まず、事業場の悪い所は、小さな飲食店によくあることなのですが、「労働契約書」を作成せず、時間管理もいい加減で、残業代未払いの可能性があるということです。

また、労災については、治療費及び休業補償を国の制度である「労災保険制度」を必ずしも使うことはなく、事業主が支払えばよいだけです。

ですから、そのような問題について、労働組合が介入してきて、未払い残業代、労災における費用請求及び解決和解金を請求することは合法です。

しかし、「労働者が事業場の労務管理が悪いせいで、『うつ病』となった。」「そのうつ病のせいで、休業が必要であった」ということは証明されていません。というより、ストレスを原因とした精神疾患による労災を認定するということは、とても難しいもので、労働基準監督署では、その認定申請があった場合、専門の調査官が半年は調査し、医師の判断を何度も仰ぎ、認定か不認定を決定するものです。労働組合なら、そのことを知らないはずはありません。

また、事業場は「労災によって、労働者が休業4日以上した場合は、労働者死傷病報告書を労働基準監督署に提出する必要」があります。この死傷病報告書を提出していなければ、事業場は「労災隠し」をしていることになり、場合によっては監督署から書類送検されます。

(注)監督署は「労災隠し」については、厳しい対応をします。

そこで、私は男性に法律の説明をした後で、「取り敢えず、死傷病報告書の件を事業場に尋ねます」と答えました。すぐにでもお金がもらえると思っていた男は不服そうでした。

男が来た翌日のことでした。私が監督署を留守にしていた時に組合の委員長が監督署にやってきて、「申告を取り下げる」と申立をしました。私はすぐに、労働者に連絡を取ったのですが、前日とは打って変わって「申告を取り下げる」と言うだけでした。

さて、この事件なんですが、監督署としてはこれで終わったのですが、皆様は真相をどうお考えでしょうか?