よくやりました

( 北伊豆地震断層の動き・火雷神社、by T.M)

朝日新聞 8月22日

スナック菓子「うまい棒」を製造する茨城県常総市の菓子メーカー「リスカ」で違法な長時間労働があったとして、常総労働基準監督署は22日、法人としての同社と、武藤秀二社長を労働基準法違反の疑いで書類送検し、発表した。

 発表によると、同社は2021年1~11月、同市内にある石下工場の従業員9人に対し、時間外労働に関する労使協定(36協定)で定められた上限を超えて働かせた疑いがある。1カ月あたりの時間外労働が100時間を上回ったり、複数月の平均で80時間を超過したりし、最長で月に約120時間に及ぶ例があったという。

 リスカのホームページによると、同社は1971年創業。うまい棒などの菓子を製造している。

 同社総務部の担当者は「従業員が集まらないことなどが背景になって、数年前から長時間の時間外労働が指摘されていた。書類送検されたことについては、反省すべき点が多い。会社を挙げて再発防止に取り組む」と話した。

偉いぞ、常総労働基準監督署。労働基準法第32条(過重労働)での送検は珍しい。しかも、「11ケ月の期間の9人の労働者の時間外労働」を捜査したことは素晴らしい。

厚生労働省のHPに、過去1年間の労働基準法・労働安全衛生法の送検実績が企業名入りで公表されていますがが、労基法32条違反は珍しく、あっても

  1 36協定(時間外労働協定)が締結されていないのに、残業させた

  2 1ケ月の期間について、1人の労働者に過重労働をさせた

という内容が多いものです。これは、残業時間の特定という捜査が難しく、複数の人間の長期間の過重労働の法違反を特定することは、膨大な業務量を要するからです。

私は、「いくつもの法違反の中から、特に悪質な法違反を抜き出して送検する」といった捜査手法を否定はしません。一見手抜きに思えるかもしれないが、「被疑者を刑事罰に処す」「送検事実を世に知らしめる」ことで、行政の目的は達したと思えるからです。「特定しなかった法違反」については、「情状としての事実」として捜査報告書に記載すれば良いのです。「ひとつの法違反の特定」と「多くの類似の法違反の特定」で、労働基準法違反の量刑がかわることはありません。

そのような行政機関の慣例を無視して、今回は敢えて多くの犯罪事実を特定し送検したことについて、私は捜査担当官の深い怒りを感じます。

ヤフコメを読んでいると、「こんなことで送検されるのか」という疑問の声があがっていました。御安心下さい。労働基準監督署は、1回の法違反の特定で長時間労働の送検はしません。ポイントは新聞記事のこの部分です。

「数年前から長時間の時間外労働が指摘されていた。反省すべき点が多い。会社を挙げて再発防止に取り組む」

要するに、過去何回も法違反を指摘されてきたのでしょう。多分、管内の有名企業ですから、何とか法違反を是正してもらいたいという気持ちも所轄労働基準監督署にあったと思います。そんな気持ちを無視されたので、残念だという気持ちもあったのではないかと想像します。

どうしても、長時間労働が発生してしまうという事業場の経営者に一言申し上げます。労働局に相談に行って下さい。長時間労働をなんとかしたいという気持ちがあれば、多分親切に相談に乗ってくれるはずです。(・・・、アホでおかしい相談員も、たまにいます)

合格連絡がきました

(京浜島つばさ公園からの風景、by T.M)

今年の春に、労働基準監督官試験を受ける予定の方から相談メールを受けました。それはこのブログでも紹介しました。

その相談者から、監督官試験を合格したとの連絡を受けました。そこで次のような返答をしました。

A 様

合格おめでとうございます。

これから採用日までは、「人生にとって黄金の休日」となります。

現在の仕事との関り合い方次第だと思いますが、ゆっくりと楽しむことを勧めます。

因みに私は、その期間に3ケ月間の中国一人旅をしました。当時はまだ珍しかった「地球の歩き方」を手に、「秀インターナショナル(後のHIS)」より入手した格安航空券を利用しました。40年前の中国です。日本より貧しく、みな人民服を着ていました。汽車に乗り、シルクロードの奥の都市・ウルムチまでいった覚えがあります。(現在、ウイグル問題で揺れている地区です)

本当に自分の人生にとって、幸福な時期でした。

A様も、何かにチャレンジすることを勧めます。(もっとも、ハメを外して「内定取消」とならないように、注意して下さい)

X労働局勤務ということですが、X局で一番大きな監督署で令和2年まで署長をしていた「B」さんが、私の同期で、確かY労働基準監督署に再任用でいると聞いた覚えがあります。

もし、機会があったら尋ねてみて下さい。彼なら、私の知り合いだと言えば、歓迎してくれるはずです。

社会経験豊かなAさんにアドバイスすることではないと思いますが、労働局はやはり「組織」です。色々な者がいます。まあ20%が尊敬できる者、20%が「保身」だけの嫌な奴だと思って下さい。その嫌な奴が、意外と幅を利かせていることは、どこの社会でも一緒です。

小原 立太

しかし、こんな初々しい連絡をもらうと、我が身を振り返り、ダグラス・マッカーサーの言葉を思い出します。曰く、

  老兵は死なず、ただ消え去るのみ

固定残業代

( 奥武蔵からの上州の山並み、by T.M)

Abema Times 8/13

「連れの男性より明らかに少なかった。なぜ一言減らすか聞けない?」。定食屋の対応をめぐり、ネット上で議論となっている。

 男性と一緒に行列のできる定食屋を訪れたという女性。ところが、出された定食のご飯の量が男性より少なく盛られていたため、女性はショックを受けたという。

 アンケート調査では、「食事を残すことがある人」は女性に多く、中でも20代の女性の場合、50%以上にのぼっている。

 しかし、ネット上では「女性は食べられないって決めつけ、それこそ昨今やめろって言われてることだよ」「ご飯少なめにしますかの一言も無く勝手に分量減らされるの、別に盛られたご飯じゃ足りない訳では無くてもすごくもやもやする」などの声が上がっている。

 一方、同業の定食屋は「そのお店の方は、お店の方なりの気遣いをされたんじゃないかと思いますけれども。当店では、特にお客様から『少なくして下さい』と言われない限りはどのお客様に対しても、同じ量でお出ししています」と話していた。

ごめんなさい。なんか、笑ってしまう記事でした。女性は差別されたと言っているけど、「女性、男性の差」ではなく、「食べられそうな人と、食べられなさそうな人」を外見で判断して、「食べそうな人にサービスしている」ということかもしれません。それなら問題ないのではないでしょうか。

でも、見方を変えるって大事ですよね。

日経新聞の報道によると、サイバーエージェントという会社が、新入社員に対し、「初任給42万円」を支払うことにしたそうです。非常に高額な給与というニュアンスでしたが、実は「残業時間80時間、深夜労働46時間分の固定残業代を含む」ということでした。

計算してみると、ひと月の所定労働時間を173時間とするなら、「給与42万円の内訳」は、次のようなものになります。

「基本給250850円、25%割増の残業代108750円(60時間までの残業代)、50%割増の残業代43500円(60時間から80時間まで)、深夜労働手当16675円」

初任給の全国平均は21~22万円ですから、サイバーエージェントの「基本給25万円」は、そう高くはありません。そして残業代プラス深夜労働手当17万円に相当する、ひと月80時間の残業時間を新入社員に押し付けることは、無理があるような気がします。

もちろんサイバーエージェント側としては、「長時間労働をさせるつもりはない。念のために残業代を多めに支払っている」と主張するでしょう。でも、実情は知りませんが、ブラック企業の多くが似たような答弁をしていた記憶があります。

労働基準法で規定する「特別な事情がない限り残業時間の上限は45時間」をベースとして、せめて次のような給与を支払ったらどうでしょうか。

「基本給316590円、45時間分の残業代102938円、深夜労働なし(所定労働時間173時間/月)」

「固定残業代」という制度に反感を覚えますが、残業代なしで初任給32万円なら少し納得できます。

役人の権限

 (土肥桜とメジロ、by T.M)

8/7 スポーツ報知(長いけど、全文引用します)

元大阪府知事の橋下徹氏が7日、コメンテーターを務めるフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜・午前7時半)に生出演した。

 番組では、前川喜平元文部科学事務次官が5日に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡る野党合同ヒアリングに出席し、2015年、統一教会が世界平和統一家庭連合へ名称を変更した経緯を証言したことを報じた。

 スタジオでは1997年に旧統一教会が名称変更を当時、宗務課長だった前川氏に相談したが、霊感商法など社会的に問題があることから名称変更の「申請を出さないで欲しい」と教団に伝えたことを報じた。この方針は18年間、踏襲されたが教団から15年6月に改称の申請があり、文科省の外局の文化庁は同年7月に受理し、同8月26日に認証を決定した。

 この経緯を受け橋下氏は「今、前川さんが正義の味方みたいになっていますけど僕からすれば前川さんが違法です」と指摘した。

 その理由を「今、統一教会が完全にトラブル団体なので前川氏が言っているように名称変更を認めてしまえばさらに被害が広がるから名称変更を認めなかった、結果オーライとして何となく結論が正しいように見えるんですが」とし「僕も統一教会に対しては寄付金の上限規制とか刑事罰をもっと厳格に適用することは必要だと思うんですが、法治国家なんでしっかりルールに基づいて判断しなきゃいけない役所は」と指摘した。

 その上で高度経済成長時代に「民間企業が悩まされたのが官僚がものすごい裁量を持って勝手に許可とか認可とかよくわからないまま不認可にしたり、もっといえばこの前川さんがやった手法、申請書を受け取らないっていう。ズルズル引き延ばしていく。こういうことが横行したので、これはもう法治国家じゃないだろうということで1993年に行政手続法というのが定められたんです。これは認可する際、基準をはっきりさせましょう、官僚に自由裁量与えない、それから申請書の受け取り拒否もダメ。受け取った上で期限を決めた上で結論をちゃんと出しなさい」と解説した。

 さらに宗教法人法に「社会に害悪があるからとか名称変更を拒絶してもいいなんて一切、ルール上書いていません」とし「名称変更の問題とトラブルの問題は分けて考えてトラブルについてはきちっと対処しないといけないけど、名称変更については前川さんの胸先三寸、判断だけで勝手に拒否しちゃいけないんです」と指摘した。

 宗教法人法14条4項には「所轄庁は認証申請の受理から3か月以内に認証の決定通知をしなければならない」と定められていることから「これをやってこなかった前川さんの方が違法だし、ずっと名称変更を認めてこなかった文科省の方が違法で。今回は申請を受理して要件整っているから3か月ちょっと超えてたのかな?それぐらいに名称変更を認めた方がこっちの方が本来、正しい」などとコメントした。さらに「統一教会の問題をちょっと横に置いておいて前川さんのような法律のルールを無視した形で自分が正義になったつもりで判断をする。これは法治国家のあり方として大問題です」と指摘していた。

私は橋本氏の意見に100%賛成します。と言うか、この件について、ブログで情報を発信しようと思っていたのですが、橋本氏が先に言ってくれて助かりました。私では、こんなにうまく説明できません。

この記事に付け加えるなら、当時前川氏がそこまで、この教団の悪質性を見抜いていたのなら、申請を受理して「不許可」とすべきでした。一回「不許可」になってしまえば、2度とは申請できません。前川氏が、その時にそのような措置を取っていなかったから、数年後にこの問題が蒸し返されることになったのです。前川氏の言動は、それが分かった上でのことのような気がします。

それとも、前川氏は、「申請されたら、法律上許可されてしまうから、私の一存で申請を停めた」と言いたいのでしょうか。役人がそのようなことを考えたなれば、それこそ大問題です。

前川氏は公務員として、とても偉かった方です。私のような労働の現場しかしらない者からすれば雲の上の人です。でも、木っ端役人でも許認可権はあります。もし、労働基準監督署の職員が、労災申請について、自分の判断で「申請するな」と事業場や労働者から、どれだけ非難を受けるでしょうか。

前川氏は、現場で苦労している文科省職員のためにも、よく考えて発言すべきだと思ういます。